2025年1月、ドナルド・トランプ氏のアメリカ大統領就任がビットコイン市場に大きな影響を与えた。大口投資家、いわゆる「クジラ」による保有量は、1月17日時点で月間成長率+2%を記録し、昨年12月以降で最大の伸びを示した。この動きは仮想通貨支持の政策への期待から始まり、機関投資家の市場参入を後押しする可能性が高まっている。
2024年末に10万ドルに迫ったビットコイン価格は、売り圧力の軽減により安定化の兆しを見せているが、CryptoQuantのデータでは、小口投資家の現物需要は減少傾向にある。今後の価格動向には、需要のさらなる拡大が鍵となるだろう。
ビットコイン市場を支える「クジラ」の動向とその背景

大口投資家、通称「クジラ」は、仮想通貨市場における価格形成の重要な役割を担う存在である。CryptoQuantのデータによれば、2025年1月初旬、利益確定により一時的に保有量を減少させていたクジラたちは、その後のドナルド・トランプ大統領の就任を機に再び積極的に購入を進めている。このような動きは、トランプ政権が仮想通貨に対する積極的な政策を打ち出すとの期待感によるものと考えられる。
特に注目すべきは、1月17日における月間成長率が+2%に達した点であり、これは昨年12月中旬以降で最も高い成長率となった。この成長が市場全体の需要回復を示唆している可能性がある一方で、背景にはクジラたちが価格上昇を見越し、早期のポジション形成を図ったと考えられる。さらに、MicroStrategyやKULRなどの企業による大規模な購入も市場の上昇圧力を強めている。
しかし、クジラの行動は単なる価格上昇の要因にとどまらない。これらの動きが他の投資家心理や市場全体の安定性に与える影響についても注視する必要がある。大口投資家の戦略が今後の仮想通貨市場の方向性を決定づける可能性を秘めているためだ。
「見かけ上の需要」の減速とその影響
CryptoQuantの報告によると、ビットコインの見かけ上の需要は2024年12月初旬の279Kビットコインから75Kビットコインへと大幅に減少している。この「見かけ上の需要」とは、ビットコインの生産(マイニングによる新規発行)と長期間移動のない保有量の変化を組み合わせた指標であり、市場の需要動向を測る重要な要素である。
需要の減速は、短期的には価格の停滞をもたらす可能性がある。特に、小口投資家による現物需要が減少傾向にあることは、個人投資家の信頼がやや弱まっていることを示唆している。しかし、長期的には市場の再調整が進む過程と捉えることもできる。これは売り圧力の軽減や長期保有者による「スマートマネー」の流入が価格の下支えとなる可能性があるためだ。
また、見かけ上の需要の低下は、単にマイニング収益の減少や新規供給量の減少に留まらず、長期保有者の動向が市場のボラティリティに与える影響についての分析が必要である。今後の需要回復が価格上昇の条件となるとCryptoQuantも指摘しており、これがどのようなタイミングで実現するかが注目される。
仮想通貨政策の変化が市場にもたらす新たな局面
2025年1月20日に就任したドナルド・トランプ大統領の政権下では、仮想通貨に対する政策が大きく転換する可能性が示唆されている。一部の専門家は、トランプ政権が戦略的なビットコイン備蓄を進めることで市場を活性化し、機関投資家からのさらなる資本流入を後押しする可能性があると見ている。
これまで仮想通貨は規制や法整備の不透明性が課題とされてきたが、トランプ政権が新たな政策を打ち出すことでこれらの問題が解消されれば、投資家心理に大きな変化をもたらす可能性がある。特に、エネルギー企業やテクノロジー企業による新たなビットコイン活用の枠組みが構築されれば、市場の信頼性はさらに高まるだろう。
ただし、政策の具体化には時間を要するため、短期的な価格変動は慎重に見守る必要がある。一方で、この政策変化がビットコイン以外の仮想通貨にも波及する可能性があり、投資家は広範な視野で市場の動向を捉える必要がある。
Source:CoinDesk