トランプ大統領が署名した最新の大統領令が暗号資産コミュニティに波紋を広げている。この命令は国家デジタル資産備蓄の創設を検討する作業部会の設立を指示するものだが、ビットコインへの具体的な言及が欠如しており、議論の火種となった。特にRipple Labsはビットコイン備蓄に反対する立場として批判され、そのロビー活動がビットコインの戦略的重要性を阻害しているとの見方がある。
一方、Ripple側はビットコインを含む包括的な政策を主張し、暗号資産全体への利益を強調している。賛否が交錯する中、今回の政策がデジタル資産市場や国家政策にどのような影響を与えるのか、今後の展開が注目される。
ビットコイン備蓄へのRippleの影響力とその戦略的意図

Ripple Labsは、国家デジタル資産備蓄における主要な論争の中心となっている。その背景には、Rippleがビットコインを含むデジタル資産全体の政策に影響を与えようとしているという見方がある。特に、Rippleが中央銀行デジタル通貨(CBDC)の推進を強調し、自社技術をデジタル資産政策の中核に据える動きは、ビットコインの地位を揺るがす可能性が指摘されている。
リサーチ部門副社長であるピエール・ロシャール氏は、Rippleがビットコインの戦略的備蓄を妨害していると非難したが、これは単なる推測ではなく、Rippleの過去のロビー活動からもその意図が見て取れる。こうした行動は、Rippleが自社のプラットフォームを優位に立たせ、ビットコインの市場支配力を削ごうとする戦略であるとの見解を裏付けている。
一方で、このような見解が必ずしも全面的に受け入れられているわけではない。RippleのCEO、ブラッド・ガーリングハウス氏は、同社の取り組みが包括的なデジタル資産政策を目指したものであり、結果としてビットコインにも利益をもたらす可能性があると反論している。この主張の妥当性を判断するには、Rippleの行動と政策への具体的な影響をさらに観察する必要がある。
戦略的ビットコイン備蓄の可能性とアメリカの政策的ジレンマ
トランプ政権が設立を指示した「デジタル資産備蓄」において、ビットコインへの具体的な言及がない点は政策の方向性に大きな疑問を投げかけている。ビットコインコミュニティからの期待は、トランプ氏がかつて公約した「戦略的ビットコイン備蓄」の具体化にあったが、この期待は新たな大統領令によって揺らいでいる。
Rippleを含む幅広いデジタル資産を対象にした包括的な政策アプローチは、一部の専門家からは技術的中立性を維持するための戦略として評価されている。サトシ・アクション・ファンドのデニス・ポーター氏は、「デジタル資産」という用語の使用が、州レベルで政治的摩擦を減らしながらもビットコインの重要性を強調する効果的な手段であると述べている。しかし、このアプローチは、ビットコインのみを支持する一部のコミュニティメンバーからの強い反発を招いている。
この政策的ジレンマは、アメリカがデジタル資産の先導的地位を確立する上でどのような方向性を取るべきかという根本的な問題を浮き彫りにしている。ビットコインの市場での支配的地位を考慮すれば、焦点をより明確にする必要があるという主張も説得力があるが、一方でRippleのような新興技術の推進もまた重要な視点となり得る。
デジタル資産備蓄の議論が示す暗号資産政策の未来
新たな大統領令は、暗号資産が国家政策にどのように組み込まれるかについての前例を作る可能性がある。そのため、暗号資産コミュニティの関心は極めて高く、この議論が持つ長期的影響が注視されている。
特に、連邦法執行機関によって押収された資産を備蓄に含める可能性が示された点は、デジタル資産の解釈を広げる契機となり得る。これは、単にビットコインやRippleに留まらず、その他の暗号資産の市場地位や規制枠組みにも影響を及ぼすだろう。加えて、備蓄政策の枠組みが、アメリカ国内のみならず、他国の暗号資産政策の方向性にも波及する可能性がある。
こうした中で重要なのは、暗号資産市場における技術革新を奨励しつつ、規制が市場の成長を阻害しないようにすることである。このバランスを取ることができるかどうかが、アメリカがデジタル資産分野でリーダーシップを維持できるか否かの分水嶺となるであろう。現在進行中の議論が、暗号資産の未来を左右する鍵となることは間違いない。
Source:Wall Street Pit