中国の人工知能研究所「DeepSeek」が、最新のAIモデル「R1」を支えるために約5万台のNVIDIA製H100 GPUを保有していると語られている。これはAI企業Scale AIの創設者兼CEO、アレクサンダー・ワン氏がCNBCのインタビューで語った内容である。R1は、OpenAIの「o1」やMetaの「Llama」と並ぶ先端AIモデルとして注目を集め、特に数学や物理学などの難解なテストでアメリカのトップモデルと同等以上のパフォーマンスを発揮したという。
NVIDIAの現行「Hopper」シリーズGPUは、世界中で広く利用されており、次世代「Blackwell」チップの登場も控えているが、アメリカ政府はその先端技術の中国への輸出を規制している状況だ。しかし、ワン氏は「DeepSeekが想定以上に多くのH100 GPUを保有している」と述べ、約5万台ものGPUが利用されていることを示唆した。
中国のAI競争力が高まる中、特にクリスマスの日に発表されたDeepSeekの最新モデルは、象徴的な意味を持つとされる。一方で、アメリカの輸出規制が今後も続く見通しであり、中国のさらなるGPU調達が難航する可能性が示唆されている。
NVIDIA H100 GPUが支える中国のAI技術力と規模感
DeepSeekが約5万台のNVIDIA H100 GPUを使用しているという事実は、中国のAI研究が他国と肩を並べる、またはそれを凌駕する可能性を示している。H100は、NVIDIAの現行「Hopper」アーキテクチャに基づくGPUであり、大規模AIモデルのトレーニングに必要な高い計算能力を提供する。この規模のGPU使用は、DeepSeekがAI技術における投資力を持つことを物語っている。
一方で、アメリカの輸出規制によって、先端GPUの調達が難しくなっている状況は否定できない。それにもかかわらず、DeepSeekがH100をこれほどの規模で確保できた背景には、中国のテクノロジー産業の広範なネットワークや、規制を回避するための巧妙な調達方法があるのではないかと考えられる。専門家の見解によれば、中国のAI競争力は今後も伸び続ける可能性が高いが、その持続性には規制や国際情勢の影響が及ぶことは明らかである。
また、DeepSeekのR1がアメリカのトップモデルと並ぶ性能を誇ることは、単に技術力の高さだけではなく、研究者とリソースの結集が成功を生んでいることを示唆している。この成果は、AI分野における次世代技術の先駆けとも言えるだろう。
強化学習によりOpenAIを凌駕し、コストを大幅に削減
DeepSeek R1は、AI開発における従来の常識を覆し、OpenAIに匹敵する性能をわずか3~5%のコストで達成したモデルとされている。このモデルは、従来一般的であった監督型微調整(SFT)をほぼ排除し、純粋な強化学習(RL)を中心に据えた革新的なアプローチを採用している。この結果、モデルは自律的な推論能力を獲得し、従来のトレーニングプロセスに伴う制約を回避することに成功したという。
このモデルの登場により、AI技術の民主化が進み、特に小規模な企業において高性能なAIモデルの活用が現実的な選択肢となり得る。DeepSeek R1はオープンソースで提供されており、開発コストを抑えながらも、高度な性能を発揮する点で注目を集めている。
モデル開発において、同社はSFTを完全に排除するのではなく、限られた範囲で「冷スタート」データによる微調整を導入した。その後、強化学習を改めて実施することで、最終的なモデルの完成に至った。このアプローチにより、モデルは自律的な推論能力を最大限に発揮する一方で、可読性や言語の一貫性といった課題も克服している。
DeepSeek R1が示す中国AIの新たな可能性
DeepSeekの最新AIモデル「R1」は、性能面でOpenAIやMetaのモデルと肩を並べる水準にあるとされている。このモデルがアメリカの最先端テスト「Humanity’s Last Exam」で高い評価を受けたことは、DeepSeekがグローバルAI競争において存在感を示していることを裏付ける。特に数学や科学分野の難解な問題を解く能力は、AIの限界を押し広げる成果として評価されている。
一方で、この成功は単に技術面の進化だけではなく、中国のAI研究環境全体の成熟を意味している。多くのGPUを活用し、研究者やデータセットを効率的に統合することで、DeepSeekは短期間で成果を上げている。しかし、このような進展が長期的に持続可能かどうかは、国際的な規制や技術の独自性に依存している部分が大きい。
R1が示すもう一つの重要な点は、中国がAI技術を軍事や経済的な目的だけでなく、学術的分野や基礎研究にも応用しようとしている可能性である。これにより、AI技術が単なる競争手段にとどまらず、広範な社会的価値を持つことが期待される。中国の技術戦略がどの方向に進むのか、今後の展開が注目される。
Source:CNBC、Wccftech、VentureBeat