マイクロソフトは、Snapdragon Xプロセッサを搭載した新型「Surface Pro 11」を発表した。本モデルは、従来のIntel・AMDアーキテクチャからArmベースのSnapdragon Xシリーズへ移行することで、処理性能と電力効率の向上を目指す。またWindows 10の改変が進行し、「Mail & Calendar」アプリを廃止した。
Snapdragon X搭載の新型Surface Proが示すArm移行の本格化
マイクロソフトが発表した「Surface Pro 11」は、従来のIntel・AMDプロセッサではなく、QualcommのSnapdragon Xシリーズを採用した。この決定は、PC市場におけるArmアーキテクチャへの移行が加速していることを示している。特に、Snapdragon X Eliteは12コア構成で高い性能を持ち、バッテリー駆動時間の向上も期待されている。AppleのMシリーズチップがArm市場で成功を収める中、マイクロソフトも独自のエコシステムを築く戦略を進めている。
一方で、ArmベースのWindowsデバイスにはソフトウェアの互換性という課題が残る。Windows向けのアプリケーションの多くは、長年にわたりx86/x64アーキテクチャ向けに開発されてきたため、Arm環境での動作に問題が生じる可能性がある。特に、Google DriveやSteamなど一部のアプリが非互換となる懸念がある。マイクロソフトは、これに対応するためのエミュレーション技術を提供しているが、ネイティブアプリと比較してパフォーマンスに差が出ることは避けられない。
しかし、Snapdragon X Eliteの登場により、Arm版Windowsのパフォーマンス向上が現実的なものになりつつある。AppleがMシリーズで市場を席巻したように、マイクロソフトも独自のArm戦略を加速させることで、x86依存からの脱却を目指している。今後、開発者の対応が進めば、Surface Pro 11のようなArmデバイスが主流となる日も遠くないだろう。
Windows 10の改変は利便性向上か、それとも機能削減か
マイクロソフトは、2025年10月のWindows 10サポート終了に向けて、OSの一部機能を変更する動きを見せている。その一環として、「Mail & Calendar」アプリが廃止され、新しい「Outlook」に置き換えられることが決定した。これにより、Windows 10ユーザーは「Outlook」を利用せざるを得なくなるが、既存の「Mail & Calendar」に比べて動作が重いという声も多く上がっている。特に、シンプルなUIを好むユーザーにとっては、改悪と受け取られる可能性がある。
マイクロソフトは、この変更に伴い「リッチカレンダー機能」の導入も予定している。これにより、タスクバーのカレンダーに天気情報が表示されるなどの改良が加えられる。しかし、OSの基本機能としてのメール・カレンダーアプリが削除されることで、業務利用者にとっての影響は小さくない。多くの企業が独自のメールクライアントやクラウドサービスを利用しているため、「Outlook」への一元化が実質的な制約になる可能性もある。
この動きは、Windows 11への移行を促す戦略の一環とも考えられる。マイクロソフトはWindows 10のサポート終了を見据え、Windows 11へのアップグレードを推奨している。しかし、依然としてWindows 10を使用している企業や個人は多く、強制的な変更は反発を招く恐れがある。利便性向上と機能削減の狭間で、マイクロソフトがどのようにユーザーの不満を解消するかが今後の課題となるだろう。