外付けGPU(eGPU)は、過去にいくつもの技術的課題と市場需要の乏しさから普及に至らなかった。しかし、Thunderbolt 5の登場により、再び注目を集めつつある。これまでの接続技術が抱える帯域幅の制約を克服し、最大120Gbpsという高速データ転送を実現することで、外付けGPUの性能は大幅な向上が期待されている。

2025年のCESでは、AsusがThunderbolt 5対応の最新eGPU「ROG XG Mobile」を発表した。これにより、モバイルゲーミングデバイスで高性能なデスクトップ向けGPUが活用できる可能性が示された。一方で、ゲーミングノートパソコンやデスクトップPCが進化を続ける中、eGPUが市場全体で主流となるかどうかは依然として不透明である。

本記事では、eGPUがこれまで普及しなかった背景や技術的課題、そしてThunderbolt 5がもたらす新たな展望を詳しく検証する。市場の期待に応える進化を遂げられるかどうか、2025年はeGPUにとって重要な年となるだろう。

外付けGPUが抱える技術的課題とその解決策

外付けGPUがこれまで普及に至らなかった背景には、技術的制約と市場ニーズのミスマッチがあった。最大の課題は、Thunderbolt 3を介したデータ転送速度の限界である。GPU性能が著しく向上した一方、Thunderbolt 3の最大40Gbpsという帯域幅ではデータ転送がボトルネックとなり、ゲームや高負荷処理で期待通りの結果を得ることが難しかった。

また、GPUの接続にPCIe x4スロットを使用する構造もパフォーマンスの低下を引き起こす原因となっていた。こうした課題に対し、Thunderbolt 5は最大120Gbpsの転送速度を実現し、これまでの制約を解消する可能性がある。

Intelの公式発表によれば、この新技術は特に外付けGPUの使用を念頭に置いて設計されており、パフォーマンス面での改善が期待されている。ただし、これらの技術革新が実際の使用環境でどの程度効果を発揮するかは、今後の検証が必要である。

さらに、外付けGPUの価格と利便性も重要な論点である。高性能なデスクトップGPUが手の届きやすい価格で市場に出回る中、消費者が外付けGPUを選択する理由は依然として限られている。技術の進歩だけでなく、消費者ニーズに応じた柔軟な価格設定やユースケースの明確化が普及の鍵となるだろう。

Thunderbolt 5が外付けGPU市場に与える潜在的影響

Thunderbolt 5の登場は、外付けGPU市場における転換点となる可能性を秘めている。その最大の特長は、倍増した帯域幅によるデータ転送効率の向上である。特に、ゲーマーやクリエイターといった高性能デバイスを必要とする層にとって、従来のパフォーマンス不足が解消される可能性は大きい。

Asusが発表したROG XG Mobileは、Nvidia GeForce RTX 5090に対応することで、これまでの外付けGPUとは一線を画す性能を持つと期待されている。一方で、外付けGPUがデスクトップPCに完全に匹敵する性能を発揮できるかは疑問が残る。

PCIeスロットを直接利用するデスクトップPCには依然として優位性があり、外付けGPUは「便利さ」と「性能」のバランスを追求した製品であると言える。この点をどう評価するかが、消費者や業界全体の課題である。

また、Thunderbolt 5を活用する周辺技術やエコシステムの整備も重要だ。周辺機器やソフトウェアが新規技術に適応することで、ユーザー体験がよりスムーズになる。これらが進展すれば、外付けGPUの市場価値は飛躍的に向上する可能性があるが、その実現には時間を要するだろう。

外付けGPUがニッチ市場にとどまる可能性

外付けGPUはThunderbolt 5の登場により注目を集めつつあるが、普及が進むかどうかは不透明である。その理由の一つは、ゲーミングノートパソコンの急速な進化だ。軽量化やバッテリー効率の改善により、これまで外付けGPUが補完していた性能をノートパソコン自体で賄えるケースが増えている。

特に、ゲームや映像編集といった高負荷作業が可能なノートパソコンの選択肢は年々広がっている。さらに、外付けGPUの価格設定も障壁となっている。デスクトップPCと比較した場合、外付けGPUはコストパフォーマンスの面で劣ると言える。

特に、性能を最優先するユーザーにとっては、同等の価格でより高性能なデスクトップPCを構築する方が合理的であると考えられる。結果として、外付けGPUは今後も特定のニッチ市場にとどまる可能性がある。

例えば、スペースに制約のある環境や、外出先での柔軟な活用が求められるシーンでは一定の需要が見込まれる。しかし、これが市場全体の主流となるかどうかは、Thunderbolt 5の進化だけでなく、ユーザーの価値観やライフスタイルの変化にも依存すると言えるだろう。

Source:PCWorld