ウォール街ではAppleが2025年までに時価総額4兆ドルに達すると予測されている。しかし、その達成には約19%の成長が必要であり、達成可能性は慎重に検討すべきである。ウェドブッシュ証券のダン・アイブズは、未更新のiPhoneを持つ消費者の買い替え需要による「スーパサイクル」に期待しているが、中国市場でのiPhone出荷台数の大幅減少や、AI機能への消費者の低い関心が課題となっている。

AppleはAI搭載の新型iPhone16や自社株買いプログラムにより業績向上を図っているが、収益の横ばい傾向や製品依存が同社の成長を制約する可能性が高い。ウォーレン・バフェットがApple株を徐々に売却していることも、これらの懸念を裏付けているといえる。AI分野での競争激化の中で、Appleが市場の期待に応える成長を実現できるかどうかが問われている。

Appleの成長戦略と時価総額4兆ドルの背景

AppleはiPhoneを中核とするハードウェア事業で収益を確保しているが、同社が成長の鍵として期待するのはAI技術の活用である。新型iPhone16に搭載される「Apple Intelligence」は、消費者体験を大幅に向上させる可能性があり、これを追い風とした「スーパサイクル」の到来を予測する専門家も多い。ウェドブッシュ証券のダン・アイブズ氏は、今年中に2億4,000万台のiPhone販売を見込むが、その中心には未更新ユーザーの需要があると指摘する。

しかし、iPhone依存の収益構造は長期的なリスクとなりうる。Appleはウェアラブルやサービス事業の強化にも注力しているものの、収益全体に占める割合は依然として限定的である。株価を支えている要素には、株主への還元を目的とした大規模な自社株買いも含まれるが、これが実際の収益拡大を伴わない「見かけ上の成長」に留まる可能性も否定できない。これらの点から、Appleの時価総額が4兆ドルに到達するかどうかは慎重な検証が必要である。

中国市場の逆風とグローバル需要の不確実性

中国市場におけるiPhone出荷台数の47%減少は、Appleの収益構造に深刻な影響を及ぼす可能性がある。中国は同社にとってアメリカ、ヨーロッパに次ぐ3番目の市場であり、同地域での販売減少は全体収益の足かせとなり得る。この要因には、中国国内での競争激化や、経済情勢の不安定さが影響していると考えられる。

さらに、CNETの調査では、消費者の約45%がAI機能に追加料金を払う意欲がないと回答しており、こうしたデータはAppleの「Apple Intelligence」を搭載した最新モデルへの移行が予測ほど順調ではない可能性を示唆する。グローバル市場全体においても、消費者はより手頃な価格の製品を求める傾向が強まっており、プレミアム価格帯での製品展開を続けるAppleにとって、収益の安定性に対するリスクが潜在している。これらの状況を踏まえれば、中国市場における問題がグローバルな成長戦略に波及する可能性を注視する必要がある。

バフェットの投資判断が示す戦略的洞察

ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイは、Apple株の大規模保有で知られているが、同時に近年は保有比率を徐々に削減している。この動きは、バフェットの投資哲学に基づく冷静なリスク管理と見ることができる。バフェットは歴史的に安定したキャッシュフローを持つ企業への投資を重視しており、AIのようなボラティリティが高い分野への直接的な投資には慎重である。

Appleの自社株買いや成長見通しに依存する収益構造は、短期的な株価上昇をもたらす可能性があるが、長期的な安定性に対しては疑問符が残る。バフェットがApple株を削減する一方で、新たな投資先を模索していることは、成長余地の限られた企業からの戦略的なシフトと考えられる。投資家はこの判断を参考に、Apple以外のAI関連銘柄や、より成長の見込める分野への投資機会を検討することが求められる。

Source: The Motley Fool