Appleは、最新のiPhone 16シリーズにおいてAI機能の導入が遅れ、特に中国市場での競争力低下が顕著である。同社の世界スマートフォン市場におけるシェアは、2024年第4四半期に23%へと縮小し、前年同期の25%から減少した。
中国市場では、HuaweiやXiaomiなどの国内メーカーとの競争が激化し、Appleのシェアは17.1%に低下、順位も3位に後退した。さらに、中国政府のAI規制により、iPhone 16へのAI機能搭載が遅れ、消費者の関心を引きつけることが難しくなっている。これらの要因が重なり、Appleの売上成長に陰りが見える可能性が指摘されている。
AppleのAI戦略が直面する技術的課題と市場の期待
Appleはこれまで、ハードウェアとソフトウェアの統合を強みとし、スマートフォン市場で独自のポジションを築いてきた。しかし、AI技術の進化が急速に進む中で、同社のAI戦略は他のテクノロジー企業と比べて遅れを取っていると指摘されている。
特に、Googleが「Gemini」、Samsungが「Galaxy AI」として次世代の生成AIを前面に打ち出す中、AppleのAI機能は未だ本格的に展開されていない。この遅れは、スマートフォンの競争環境において重要な差別化要因となりうる。
Appleは独自のAIエコシステムを構築するため、「Apple Intelligence」というブランド名でAI機能の拡充を試みているが、現時点ではSiriの改善や基本的な機能向上にとどまっている。一方で、競合他社は写真編集やリアルタイム翻訳、高度な検索機能など、ユーザー体験を向上させる高度なAIを実装しており、差が開きつつある。
この背景には、Appleがプライバシー保護を優先する設計を採用していることが影響していると考えられる。同社はユーザーデータのクラウド処理を最小限に抑え、デバイス内での処理を重視する方針を維持しているが、これがAIの進化において制約となる可能性もある。
しかし、AppleがAI市場での影響力を強化する動きも見られる。たとえば、同社はMシリーズチップにAI専用のニューラルエンジンを搭載し、ハードウェアレベルでの処理能力向上を図っている。加えて、AI関連企業の買収も進めており、今後のOSアップデートでAI機能を大幅に強化する可能性もある。
とはいえ、現在の遅れが市場の評価に影響を与えていることは否定できず、Appleが今後どのようにAI分野で巻き返しを図るかが注目される。
中国市場での競争環境とAppleの戦略的対応
Appleの成長を支えてきた中国市場での競争環境が厳しさを増している。かつては同国の高所得層を中心にiPhoneの需要が高まっていたが、近年ではHuaweiやXiaomi、Oppoといった国内メーカーが急速にシェアを拡大している。
特に、Huaweiが独自の「HarmonyOS」や高性能な自社製プロセッサを搭載したスマートフォンを投入し、Appleの地位を脅かしている。2024年第4四半期には、Appleの中国市場でのシェアは17.1%に低下し、Huaweiが首位に返り咲いたことが報じられている。
Appleにとって大きな課題となるのは、中国政府のAI規制と消費促進政策の影響である。中国では生成AIの提供には政府の許可が必要とされ、Appleは自社開発のAI機能を中国向けのiPhoneに搭載することができていない。
これにより、中国市場の消費者に対して他国と同様のAI機能を提供することが難しく、競争力の低下を招いている。また、中国政府が800ドル以下のスマートフォン購入者に補助金を提供していることも、価格帯の高いiPhoneにとって不利な状況を生んでいる。
Appleはこれに対し、現地企業との提携を模索しているとされる。たとえば、中国の大手テクノロジー企業と協力し、ローカルAIサービスの統合を進める可能性が指摘されている。さらに、Appleは中国での販売戦略を見直し、旧モデルの値下げや下取りプログラムの強化を進めることで、消費者の関心を引き戻そうとしている。
今後の展開次第ではあるが、Appleが中国市場での立て直しを図れるかどうかが、今後の成長に大きく影響を及ぼすだろう。
Appleの成長戦略と今後の展望
Appleはここ数年、iPhoneの売上に依存した成長モデルから脱却し、サービス事業の拡大に力を入れてきた。Apple MusicやiCloud、Apple TV+といったサブスクリプション事業は順調に成長しており、2024年の決算においても堅調な収益を記録する見込みである。
しかし、スマートフォン市場の競争激化やAI技術の遅れが続く場合、サービス事業への依存度をさらに高める必要があると考えられる。特に、Appleは今後の成長戦略として、ヘルスケアやウェアラブルデバイスの分野に注力している。
Apple Watchは医療データの取得機能を強化し、ヘルスケア分野での市場拡大を狙っている。また、AR/VR分野においては「Apple Vision Pro」が注目されており、これが新たな収益源となる可能性もある。とはいえ、これらの新規事業がiPhoneに匹敵する収益を生み出すには時間がかかると見られる。
一方で、AppleはM&A(企業買収)を活用した技術獲得を進めており、特にAI関連企業の買収が加速している。これにより、将来的にAI技術を活用した新たなプロダクトやサービスを生み出し、競争力を高めることが期待される。ただし、短期的にはAI機能の遅れや市場シェアの低下が続く可能性があり、Appleがどのようにこれらの課題を克服するかが、今後の成長を左右するポイントとなる。
Source:PYMNTS