Appleは長年にわたり、iPhoneのストレージアップグレードを主要な収益源としてきた。しかし、最近のデータによると、この需要が減少していることが明らかになった。
Consumer Intelligence Research Partners(CIRP)の調査によると、2024年のホリデーシーズンにおいて、iPhone 16 ProおよびPro Maxの購入者のうちストレージを増量したのは44%で、前年の48%から4ポイント低下した。標準モデルのiPhone 16および16 Plusでも同様に、ストレージアップグレード率が前年の48%から42%に減少している。
この背景には、基本ストレージの増加やクラウドストレージの普及がある。iPhoneの多くのモデルで128GB以上の容量が標準となり、さらにiCloudなどのクラウドサービスを活用することで、ローカルストレージの必要性が低下している。Appleはストレージ販売の減少を補うため、iCloud+のようなクラウドサービスを強化し、収益源の転換を図る可能性がある。
ストレージアップグレード市場の変化と消費者行動の変遷

Appleのストレージアップグレード戦略は、近年の消費者行動の変化によって影響を受けている。特に、ストリーミングサービスの普及とデバイスの基本ストレージ拡充が、ユーザーのストレージ選択に大きな変化をもたらしている。
動画や音楽のストリーミングサービスが定着し、ローカルに保存する必要性が低下したことが背景にある。NetflixやSpotify、Apple Musicなどの利用が広がり、大容量ストレージの需要が以前よりも減少している。また、クラウドストレージの普及により、写真や動画をiCloudやGoogle Driveに保存するケースが増加している。これにより、ストレージを追加購入する必要性が相対的に下がっている。
さらに、基本ストレージの増加も影響している。以前は64GBや128GBの選択肢しかなかったが、現在ではProモデルの標準ストレージが256GBに引き上げられた。これにより、通常の使用範囲でストレージ不足を感じるケースが減り、高容量モデルへのアップグレードが敬遠される傾向が強まっている。
Appleの収益戦略とクラウドサービスへのシフト
Appleはハードウェア販売による利益の最大化を図ってきたが、ストレージアップグレードによる収益が減少する中、新たな収益源としてクラウドサービスへ注力している。
iCloud+はその代表例であり、月額制のストレージプランを通じて継続的な収益を生み出すビジネスモデルを展開している。特に、写真や動画の保存をiCloudへ依存させることで、長期的なAppleエコシステムへの囲い込みを強化する狙いがある。ストレージアップグレードは一度限りの収益であるのに対し、クラウドサービスはサブスクリプション形式で継続的な収益を確保できる。
また、Appleはクラウドサービスの利便性を向上させることで、ユーザーのデバイス乗り換え時のストレスを軽減し、Apple製品へのロイヤリティを維持することを狙っている。たとえば、MacやiPadとの連携を強化し、異なるAppleデバイス間でシームレスなデータ管理が可能な環境を整えている。
これにより、ストレージアップグレードの売上が減少したとしても、クラウドサービスでその損失を補う戦略が進行中である。
今後の展望とAppleの戦略転換の可能性
Appleは今後、ストレージアップグレードの販売戦略を見直し、よりクラウドサービスを軸にしたビジネスモデルへ移行する可能性が高い。
その一環として、iCloudの無料ストレージ容量を拡大し、より多くのユーザーを有料プランへ誘導する施策が考えられる。現在の無料ストレージは5GBと限定的だが、これを拡充することで、ユーザーのクラウド依存度を高める狙いがある。また、Apple Oneのようなバンドルサービスの強化により、Apple MusicやApple TV+と組み合わせた総合的なサービス戦略を推進する可能性もある。
さらに、ハードウェア戦略としては、将来的にエントリーモデルでもより大容量ストレージを標準装備することで、ユーザーの満足度を向上させつつ、クラウドサービスとの併用を前提としたエコシステムを確立することが考えられる。Appleがどのようにストレージ戦略を再編し、新たな収益モデルを確立するかが、今後の業界の注目点となる。
Source:AppleInsider