著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年第3四半期にアップル株を約25%売却し、現金保有額を3252億ドルと過去最高に引き上げた。同社の現金比率は総資産の約30%に達し、1990年以来の高水準である。この動きは、バフェット氏が市場の過熱感を警戒し、割安な投資機会の減少を示唆している可能性がある。

一方で、同氏はインターネットドメイン登録会社ベリサインへの投資を継続しており、慎重ながらも選択的な投資姿勢を維持している。これらの戦略は、投資家に対し市場の過熱に対する警戒と、慎重な投資判断の重要性を示唆していると考えられる。

バフェットが大規模な現金保有を続ける理由と市場の過熱感

ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年第3四半期において現金保有額を3250億ドルまで増加させた。これは同社の総資産の約30%に相当し、過去30年以上で最も高い水準である。バフェットはこれまで、魅力的な投資機会が見つからない時に現金を蓄える戦略を取ってきたが、今回の動きは異例の規模である。

市場の過熱を示唆する指標として注目されるのが、シラーCAPEレシオである。この指標はS&P500の過去10年間の平均利益に基づいて株価の割高・割安を評価するもので、現在の水準は36を超えている。この水準に達したのは1950年代後半以降で3回目に過ぎず、直近では2000年のITバブル期に見られた。歴史的に見ても、これほど高い評価を受けた市場はその後大幅な調整局面に入る傾向がある。

バフェットが大規模な現金保有を続けている背景には、市場の過熱感に対する警戒だけでなく、金利環境の変化も影響していると考えられる。米連邦準備制度理事会(FRB)が金利引き下げに向けた姿勢を示しているものの、実際の景気減速やインフレ動向によっては株式市場の見通しが大きく変わる可能性がある。バフェットがこのタイミングで現金を蓄え、慎重な投資姿勢を貫いていることは、今後の市場動向を見極める上で重要な示唆を与えるだろう。

アップル株売却の狙いと個別銘柄への選択的投資

バークシャー・ハサウェイが保有するアップル株を2024年第3四半期に約25%売却したことは、投資家に大きな衝撃を与えた。同社は長年にわたりアップルを主要投資先としており、過去には保有割合を増やし続けてきた。しかし、今回の売却はバフェットの投資戦略が変化していることを示唆している。

バフェットはかねてより、企業価値が市場評価を大幅に上回る場合には利益確定のために売却を行うと述べてきた。アップルの株価は過去1年間で大きく上昇し、同社の時価総額は3兆ドルを超えている。株価の高騰は企業の成長性を反映するものの、割高と判断すれば売却も選択肢となる。特に、アップルの収益成長が成熟段階に入っていることを考慮すれば、バフェットが一部の利益を確定させたことは合理的な判断といえる。

一方で、バフェットが完全に株式投資をやめたわけではない。最近の報告書によれば、彼はインターネットドメイン登録会社であるベリサインの株を追加購入している。同社の株価は利益の24倍程度で取引されており、数年前の35倍超の評価からは低下している。つまり、バフェットは市場全体の割高感を警戒しつつも、個別の割安銘柄には引き続き投資しているのである。これは、広範な市場環境を見極めながらも、慎重に利益を追求する彼の一貫した投資哲学を反映しているといえる。

現在の市場環境で投資家が取るべき戦略とは

バフェットの最近の行動は、市場の過熱感に対する警戒を投資家に促す一方で、すべての投資を停止すべきという意味ではない。実際、彼自身も完全に市場から撤退しているわけではなく、選択的な投資を続けている。では、個人投資家はこの環境下でどのような戦略を取るべきなのだろうか。

まず、現金比率の調整が重要となる。市場が高値圏にある時には、全資産を株式に投じるのではなく、一定割合の現金を保持することがリスク管理の観点から有効である。バフェットが現在、大量の現金を保持しているのも、将来的な投資機会を待つための準備と考えられる。

次に、個別銘柄の選定に慎重になるべきである。市場全体が割高であっても、すべての企業が過大評価されているわけではない。バフェットがベリサインに追加投資したように、長期的に成長が期待できる企業を選び、適切なタイミングで投資を行うことが鍵となる。

最後に、市場の変動に動じない冷静な姿勢を持つことが求められる。バフェットは「他人が貪欲な時に恐れ、他人が恐れている時に貪欲になれ」という哲学を掲げているが、現在の市場はまさに投資家が楽観に傾きすぎている局面といえる。したがって、感情に流されず、冷静に市場を見極めることが投資成功の鍵となるだろう。

Source:The Motley Fool