次世代GPU「RTX 5000シリーズ」の供給不足が深刻化する可能性が浮上している。NVIDIAは、RTX 5080(999ドル)とRTX 5090(1999ドル)の市場投入に対し「大きな需要」が見込まれるとし、発売直後の在庫切れを認めた。加えて、MSIやZotac Koreaなどのパートナー企業、小売業者からも出荷遅延や限定的な在庫状況が報告されている。
この状況は、2020年のRTX 3000シリーズ発売時と類似している。当時はパンデミックによるチップ不足や仮想通貨マイニング需要が影響し、長期的な供給危機を引き起こした。しかし、今回はマイニング需要の影響がなく、純粋な市場需要の高まりが要因とみられる。
供給不足が数カ月間続けば、高額転売の再来も避けられないだろう。特に廉価モデルのRTX 5070やRTX 5070 Tiにも影響が及ぶ可能性があり、PCユーザーにとってGPUの確保は再び困難な局面を迎えつつある。
RTX 5000シリーズの供給不安が高まる要因
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NVIDIAのRTX 5000シリーズが深刻な供給不足に陥る可能性が指摘されている。特にRTX 5090は1999ドルという高価格ながらも需要が殺到すると見られ、MSIは発売日の延期を発表した。PowerGPUは「過去最悪の在庫状況」との見通しを示しており、少なくとも発売後3カ月は入手困難な状況が続くとされている。
供給が不安定な要因として、まず製造ラインの問題がある。RTX 5000シリーズは最新の製造プロセスを採用する可能性が高く、安定した生産が確立するまで時間を要すると考えられる。さらに、高性能GPUは新たなAI・クリエイティブ用途の需要が急増しており、従来のゲーミング市場に加え、新たな市場からの需要が供給を圧迫している。
また、Zotac KoreaやイギリスのOverclockersも在庫の厳しさを報告しており、この問題は特定の地域に限らずグローバルなものと考えられる。過去にGPU供給を巡る混乱があったことを踏まえれば、今回も品薄による価格高騰や転売業者の活動が加速する可能性が高まる。RTX 5000シリーズの市場動向は今後も注視する必要がある。
RTX 3000シリーズの供給不足との違いと市場の変化
過去のRTX 3000シリーズでも深刻な供給不足が発生したが、その背景は現在とは異なる。当時はパンデミックの影響による半導体不足が最大の要因であり、加えて仮想通貨マイニング需要の急増が在庫を逼迫させた。特にEthereumがプルーフ・オブ・ワークを採用していたことから、高性能GPUがマイニング業者によって大量に買い占められる状況が生じた。
しかし、今回はマイニング需要の影響は限定的である。Ethereumは既にプルーフ・オブ・ステークへ移行し、GPUのマイニング用途は激減した。そのため、RTX 5000シリーズの供給不足は主に純粋な市場需要の拡大が要因とされている。特にAI分野や映像制作など、ゲーミング以外の用途における需要が高まり、これが在庫圧迫の一因になっている。
また、小売業者の対応にも変化が見られる。RTX 3000シリーズの際にはNeweggなどの企業が抽選販売制度を導入し、転売対策を講じた経緯がある。今回も類似の対応が取られる可能性はあるが、供給不足が長期化すれば転売市場が活発化することは避けられない。市場の混乱を最小限に抑えるため、メーカー側の迅速な供給体制の確立が求められる。
RTX 5070シリーズへの影響と価格動向
RTX 5000シリーズの中でも特にハイエンドモデルのRTX 5080やRTX 5090が供給不足の中心とされているが、廉価モデルであるRTX 5070やRTX 5070 Tiにも影響が及ぶ可能性がある。一般的にエントリーモデルやミドルレンジモデルは販売数が多くなるため、需要が集中すれば供給が追いつかなくなるリスクがある。
特に、価格設定が魅力的なRTX 5070シリーズはゲーマーやPCユーザーの主力選択肢となると考えられる。高価格帯のRTX 5090が品薄となれば、その代替としてRTX 5070シリーズへの需要が集中する可能性が高い。ただし、生産ラインが十分に確保されていれば、供給の安定性は比較的高くなるかもしれない。
価格動向については、供給不足が続けば当然ながら市場価格の高騰が避けられない。過去のRTX 3000シリーズではプレミアム価格が長期にわたり続き、転売市場で定価を大幅に上回る価格で取引された。今回の状況次第では、RTX 5070シリーズが同様の価格上昇に直面する可能性もある。メーカー側の供給戦略と市場動向が、最終的な価格に大きく影響を及ぼすことになるだろう。
Source:How-To Geek