AMDのRadeon RX 7900 XTXが、AI推論ベンチマークでNVIDIAのGeForce RTX 4090を上回る結果を示した。DeepSeek R1の実行において、RDNA 3アーキテクチャを採用したRX 7900 XTXが、高性能なAIワークロード処理能力を発揮している。

この結果は、消費者向けGPUによるローカルAI処理の可能性を示すものであり、プライバシー保護やコスト削減といった利点を提供する。AMDは、DeepSeek R1を自社GPUで実行するための詳細な手順を公開し、より多くのユーザーがローカル環境でAIを活用できる環境を整えている。

今後、NVIDIAおよびAMDの次世代GPUでは、AIワークロード向けの専用エンジンが搭載され、推論性能がさらに向上すると見込まれる。

AMD Radeon RX 7900 XTXがDeepSeek R1の推論性能で優位に立った理由

AMDのRadeon RX 7900 XTXが、AI推論ベンチマークにおいてNVIDIA GeForce RTX 4090を上回った。この結果は、AMDのRDNA 3アーキテクチャとそのハードウェア設計に起因するものと考えられる。

RDNA 3アーキテクチャは、より効率的な演算能力を提供するよう最適化されており、特にAI推論や機械学習ワークロードにおいて強みを発揮する。加えて、Infinity Cacheと呼ばれる大容量キャッシュが、データ転送のボトルネックを軽減し、モデルの推論速度を向上させる役割を担っている。一方、NVIDIAのRTX 4090はCUDAコアを活用する設計であるものの、今回のDeepSeek R1のテストではそのアーキテクチャが最適化されていなかった可能性がある。

また、ドライバの最適化も重要な要因である。AMDは、Adrenalin 25.1.1オプショナルドライバでDeepSeek R1に対応し、ユーザーが容易にAI推論を実行できる環境を整備した。これにより、ハードウェアの性能を引き出すためのソフトウェア面の改善が影響を与えたと考えられる。こうした技術的要因の積み重ねが、Radeon RX 7900 XTXの優位性を生み出したとみられる。


ローカルAI推論の利点とAMDの戦略

DeepSeek R1をローカルで実行することには、大きな利点がある。プライバシー保護の観点から、クラウドベースのAI処理と比較してデータ漏洩のリスクを軽減できる。特に機密情報を含むプロンプトを扱う場合、クラウドへの送信を避けることで情報の安全性が確保される。

加えて、クラウド環境の利用コストを考慮すると、ローカル実行はコストパフォーマンスの向上に寄与する。クラウドAIサービスは一般的に使用量に応じた課金モデルを採用しており、大規模な推論を継続的に行う場合、高額な費用が発生する。対して、AMDのGPUを用いたローカル環境では、一度ハードウェアを購入すれば継続的な使用が可能であり、長期的なコスト削減につながる。

AMDは、こうした需要を見据え、DeepSeek R1を自社GPUで最適に動作させるためのガイドを公開し、ユーザーの導入を後押ししている。これは、単なるハードウェア性能競争ではなく、実際の活用シーンを重視する戦略といえる。今後、ローカル推論環境の整備が進むことで、AMDのGPUがAIワークロード市場でさらに重要な選択肢となる可能性がある。


今後のAI推論市場とGPUの進化

DeepSeek R1の推論ベンチマーク結果は、AIワークロードにおけるGPU市場の動向を示唆している。今後登場する次世代のNVIDIAおよびAMDのGPUでは、AI推論に特化したエンジンの搭載が進み、さらなる性能向上が期待される。

NVIDIAはすでにTensorコアを活用したAI推論向けの最適化を進めているが、今回の結果を受け、推論ワークロードへの対応を強化する可能性がある。一方、AMDも今後のGPUにおいて、AI向けの演算ユニットを拡充することで、より高い推論性能を目指すとみられる。

市場全体としては、クラウドベースのAI処理とローカルAI推論のバランスが重要な課題となる。企業や個人がAIを活用するにあたり、コスト・セキュリティ・性能のバランスを考慮した最適な選択肢が求められる。今回のAMDの結果は、その選択肢の一つとして、ローカル推論環境の有用性を改めて示したものであり、今後のGPU市場の動向に大きな影響を与える可能性がある。

Source:Wccftech