マイクロソフトは、Intel Core Ultra Series 2プロセッサを搭載した「Surface Pro 11 for Business」を発表した。本モデルは、Windows on ARM環境への移行に慎重な企業ユーザーに向けた選択肢として提供される。

Copilot+ PCに分類される本機は、NPUを活用したAI機能を搭載し、高性能と長時間のバッテリー駆動を実現する。特に「Surface Pro 9」と比較して、Teams通話時のバッテリー持続時間が2倍に向上した点が特徴だ。

ディスプレイはLCDとOLEDの2種類から選択可能で、セキュリティ機能としてWindows Hello対応カメラやNFCリーダーも搭載。2025年2月18日より販売開始され、最小構成の価格は1,499.99ドルからとなる。

Intel Core Ultra Series 2搭載の狙いとCopilot+ PCの役割

マイクロソフトが「Surface Pro 11 for Business」にIntel Core Ultra Series 2を採用した背景には、企業向け市場における互換性と信頼性の確保がある。Windows on ARM移行が進む中、既存のx86アーキテクチャに依存する企業が多いことを考慮し、Intelプロセッサを搭載したモデルを併売する戦略を取ったと考えられる。

特に、Core Ultra 7(266V、268V)モデルでは48 TOPSのNPU性能を持ち、Snapdragon搭載モデルと比較してもAI処理において遜色のないスペックを確保している。これにより、「Windows Studio Effects」や「Recall」といったCopilot+ PC機能が快適に動作する環境が提供される。AIを活用した業務効率化が求められる中、この機能は大きな差別化要因となる可能性がある。

一方で、MicrosoftはARM版の「Surface Pro 11」との差別化を明確にしておらず、同じシリーズ名で異なるアーキテクチャのモデルを展開することで、混乱を招く可能性もある。企業のIT部門にとっては、どのモデルが最適か慎重な判断が求められるだろう。

ディスプレイとバッテリー性能の向上がもたらす実用性

「Surface Pro 11 for Business」は、LCDとOLEDの2種類のディスプレイオプションを提供する。OLEDモデルはコントラスト比の向上、HDR対応、反射防止コーティングの強化といった点で、特に高精細な表示を求めるユーザーに適している。一方で、LCDモデルはバッテリー持続時間の面で優位性があり、長時間の業務利用を前提とする場合に有利だ。

バッテリー性能についても、前世代モデル「Surface Pro 9」と比較して大きく向上している。特に、Teams通話時の駆動時間が2倍になった点は、リモートワークや会議が日常化した現代において重要な改良点といえる。公式発表では、ローカルビデオ再生で14時間、Web使用で10時間の駆動時間を実現しており、実用性の向上が期待される。

しかし、5G通信に非対応である点は懸念材料となる。2024年に登場した「Surface Pro 10 for Business」では5Gオプションが存在したが、今回は廃止され、「Surface Laptop 7 for Business」のみがセルラー通信に対応する形となった。リモートワークやモバイル業務の需要が高まる中で、この仕様変更が市場にどのような影響を与えるかは注視する必要がある。

セキュリティ強化と周辺機器対応がもたらす拡張性

企業向け市場では、性能だけでなくセキュリティや周辺機器の互換性も重要視される。「Surface Pro 11 for Business」は、1440pのWindows Hello対応カメラを搭載し、顔認証による迅速なログインが可能となっている。さらに、YubiKey 5C NFCやNFCバッジに対応したNFCリーダーを内蔵しており、多要素認証を活用したセキュリティ強化が実現できる。

また、従来のSurfaceアクセサリーとの互換性も確保されている。Surface Pro FlexキーボードやSurface Slim Pen 2がそのまま使用できるため、既存の環境を活かしながら新モデルへ移行しやすい点は、企業導入において大きなメリットとなる。

ただし、5G対応が見送られたことで、モバイルワーク向けの利便性はやや制限される可能性がある。クラウドベースの業務が主流となる中、常時接続環境の重要性が増している。企業がこの点をどのように補完するかが、新モデルの採用を左右する要素の一つとなるだろう。

Source: Neowin