米マイクロソフトが1月29日に発表した2025会計年度第2四半期決算は、売上高696億ドル、1株当たり利益3.23ドルといずれも市場予想を上回る好調な結果となった。だが、成長を牽引するAzureを含むインテリジェントクラウド部門の売上成長が市場予想を下回り、投資家の懸念が広がったことから株価は時間外取引で4.63%下落した。
特にクラウド市場の競争激化やAI需要拡大に伴う容量不足がAzure成長鈍化の要因と指摘されるが、一方でAI関連事業の売上が前年同期比157%増となるなど、長期的な成長要因は揺るがない。Microsoft 365 Copilotの導入が進むほか、データセンター拡張への投資が続いており、事業基盤の強化が進んでいる。
ウォール街のアナリストは同社の収益構造の安定性を評価し、「強い買い(Strong Buy)」の推奨を維持している。短期的な調整はあり得るものの、AIとクラウドを軸とした戦略により、長期的な成長シナリオに変化はないと見られる。
インテリジェントクラウド部門の成長鈍化が示す市場の変化
マイクロソフトの2025会計年度第2四半期決算では、クラウド部門「インテリジェントクラウド」の売上高が255.4億ドルに達し、前年同期比19%増となった。これは依然として堅調な伸びであるものの、市場予想の257.6億ドルを下回る結果となった。特にAzureの売上成長率は31%にとどまり、市場が期待していた32~33%の水準には届かなかった。
この成長鈍化の背景には、クラウド市場の競争激化と、急増するAI需要への対応力が試されていることがある。Google CloudやAmazon Web Services(AWS)といった競合企業もAIを活用したクラウドサービスの強化を進めており、市場のシェア争いが熾烈さを増している。加えて、Azureの成長鈍化にはAIサービス向けのデータセンター容量不足も影響を与えているとされ、企業が求める計算リソースを迅速に提供できるかが今後の鍵を握る。
しかし、長期的に見ると、マイクロソフトはデータセンターの拡張を進めることで、これらの課題を克服しようとしている。過去3年間でデータセンター容量は2倍以上に増強され、さらなる投資も進行中である。AI需要の高まりに応じたインフラ整備が進めば、Azureの成長率も再加速する可能性がある。クラウド市場における競争が続く中で、マイクロソフトがどのような成長戦略を描くのか注目される。
AI事業の急成長がもたらすマイクロソフトの新たな収益源
Azureの成長鈍化が懸念される一方で、AI事業の急成長はマイクロソフトの新たな強みとなっている。特に、AI関連サービスの売上が前年同期比157%増を記録し、Azureの成長を支える大きな要素となっている。AI事業の年間売上は130億ドルを超え、前年から175%の成長を遂げた。これは、OpenAIとの提携を含むAI技術の活用が加速していることを示している。
Microsoft 365 Copilotの導入が順調に進んでいることも、AI分野の成長を後押ししている。企業の業務効率化ニーズに応じたAIアシスタント機能は、導入から18カ月でユーザー数が10倍以上に増加しており、クラウド事業の新たな収益源となりつつある。特に大企業を中心に、生成AIを活用した業務改善への関心が高まっており、今後もこの分野の需要は拡大すると考えられる。
今後、AI技術の発展に伴い、クラウドサービスの利用形態も変化していく可能性が高い。AzureがAIインフラとしての役割を強化することで、単なるクラウドサービス提供企業から、AIを基盤とする総合的なデジタルプラットフォーム企業へと進化する道筋が見えてきた。マイクロソフトがAIをどのように活用し、競争優位性を確立するのかが、今後の成長戦略を占う鍵となる。
株価調整の背景とウォール街の評価は依然強気
マイクロソフトの決算発表後、株価は時間外取引で4.63%下落した。これはAzureの成長鈍化に対する市場の失望感が影響したとみられるが、一方でウォール街のアナリストは同社の長期的成長に対して強気な見方を崩していない。実際、アナリストの平均目標株価は510.32ドルとされ、現在の株価から約15.4%の上昇余地があると見られている。
市場の一時的な反応と異なり、アナリストの評価が高い理由の一つに、マイクロソフトの収益構造の安定性がある。クラウド、AI、ソフトウェアの3本柱が相互に補完し合うビジネスモデルは、短期的な変動を受けにくい強みを持つ。特に、Microsoft 365やLinkedInといった定期課金型の収益モデルが堅調であり、これが全体の売上成長を下支えしている。
短期的には株価の変動が続く可能性はあるが、マイクロソフトが積極的な投資を継続し、AI・クラウド事業の成長を加速させる限り、長期的な成長シナリオに大きな変化はないと考えられる。今後、AIの商用化がさらに進めば、企業のデジタル化需要と相まって、マイクロソフトの成長を後押しする要因となるだろう。
Soource: Barchart.com