中国のDeepSeekが低コストで高性能なAIモデルを開発したと発表し、Nvidia株は一時急落した。しかし、ウォール街のアナリストは、この技術革新がむしろAI市場の成長を加速させ、Nvidiaにとっても追い風となると指摘する。加えて、トランプ大統領の法人税引き下げ政策やAIインフラ投資拡大の構想がNvidiaに与える影響も無視できない。新たな政策や「スターゲート・プロジェクト」への関与が、同社の収益をさらに押し上げる可能性がある。

DeepSeekの技術革新とNvidiaの影響

先週、中国のDeepSeekが発表した研究論文が市場を揺るがせた。同社は、従来の米国企業が開発した大規模言語モデル(LLM)と同等の性能を、はるかに低コストで実現できる訓練手法を開発したと主張している。このニュースにより、Nvidia株は一時的に急落した。

しかし、ウォール街のアナリストたちは異なる見解を示している。DeepSeekの技術が低コストでのAI開発を可能にすることで、多くの企業がAI導入を加速させると考えられている。AIアプリケーションの拡大は、依然として強力なチップを必要とし、結果的にNvidiaのGPU需要を押し上げる可能性が高いという。

この見方を裏付けるように、ウォール街の複数のアナリストがNvidiaの目標株価を引き上げた。D.A. DavidsonのGil Luria氏は135ドル(現在より5%上昇)、Morgan StanleyのJoseph Moore氏は152ドル(18%上昇)、CitigroupのAtif Malik氏とBernsteinのStacy Rasgon氏は175ドル(36%上昇)、Cantor FitzgeraldのC.J. Muse氏は200ドル(56%上昇)と予測している。さらに、Wedbush SecuritiesのDan Ives氏は、この急落は「絶好の買い場」と指摘した。

トランプ大統領の減税政策がもたらす恩恵

トランプ大統領は法人税のさらなる引き下げを掲げ、特に国内製造業向けには15%への減税を提案している。この減税が実現すれば、企業の利益率は大幅に向上し、Nvidiaを含む大手テクノロジー企業の自社株買いが活発化する可能性がある。

実際、Nvidiaは2024年第3四半期に約130億ドルの自社株買いを実施。S&P 500企業の中ではApple(250億ドル)とAlphabet(150億ドル)に次ぐ規模だ。さらに、同社の取締役会は追加で460億ドルの自社株買いを承認しており、法人税減税が実施されれば、これがさらに加速する可能性がある。

アナリストによれば、これによりNvidiaの1株当たり利益(EPS)の成長率が想定を上回る可能性がある。一般的に、EPSの成長は株価上昇を後押しするため、今後の市場動向に大きな影響を与えるだろう。

「スターゲート・プロジェクト」による新たな成長機会

トランプ大統領が発表した「スターゲート・プロジェクト」は、AI分野における米国の優位性を確保するための計画であり、今後4年間で最大5000億ドルの民間投資をAIインフラに誘致することを目的としている。

このプロジェクトは、OpenAIとソフトバンクの共同事業として進められ、米国内に20か所の大規模データセンターを建設する計画だ。すでにテキサス州で最初のデータセンターが建設中であり、NvidiaのGPUはこのプロジェクトの中核を担うことになる。

実際、OpenAIのプレスリリースには「Oracle、Nvidia、OpenAIが密接に連携し、このコンピューティングシステムの構築と運営を行う」と明記されている。Melius ResearchのBen Reitzes氏によれば、Nvidiaはこのプロジェクトを通じて1000億ドル以上の収益を得る可能性があると試算されており、ウォール街の予測を超える成長が期待される。

Source:The Motley Fool