MicrosoftがWindows 11 24H2へのアップグレード制限を解除したことで、インプレースアップグレードとクリーンインストールのパフォーマンス差が注目されている。最新のベンチマークテストでは、ゲーム性能や生産性アプリケーションの動作に関して両者の違いが明らかになった。

3DMarkを用いた合成ベンチマークでは、クリーンインストール環境が優位な結果を示した。一方で、生産性アプリケーションのパフォーマンスは必ずしも向上せず、PCMark 10のアプリ起動速度テストではクリーンインストール環境のほうが遅い結果となった。ゲーム性能についてはタイトルによって違いが見られ、特定の設定を調整することで改善が可能なケースも確認された。

メモリ使用量の観点では、クリーンインストール環境の方が最適な管理が行われる傾向があったが、PCの用途によっては必ずしもクリーンインストールが最適解とは言えない。総合的に見て、23H2から24H2へ急いでアップグレードする必要はなく、特定の問題を抱える場合を除き、現状の環境を維持する選択肢も妥当である。

クリーンインストール vs インプレースアップグレードの実態

MicrosoftがWindows 11 24H2へのアップグレード制限を解除したことで、ユーザーの間でインプレースアップグレードとクリーンインストールのパフォーマンス差が注目されている。最新のベンチマークテストでは、特にゲーム性能や生産性アプリケーションの動作に関して、これらのインストール方法による影響が明らかとなった。

合成ベンチマークでの優位性

3DMarkを用いたベンチマークでは、クリーンインストール環境がインプレースアップグレード環境を上回る結果となった。特に、CPUのパフォーマンステストでは、Fire Strike Ultra(DirectX 11)で8.2%、Time Spy Extreme(DirectX 12)で5.87%の向上が見られた。また、16スレッド以上の処理能力においても最大6.78%の高速化が確認されている。

ゲームパフォーマンスの比較

『Black Myth: Wukong』では、クリーンインストールとインプレースアップグレードの差はほぼ見られず、フレーム生成パフォーマンスは同等だった。一方、『Marvel’s Guardians of the Galaxy』では、クリーンインストール環境で大幅なフレームレート低下が発生。しかし、IntelのApplication Optimization(APO)を有効化することで、23H2と同等のパフォーマンスまで改善された。

また、『Shadow of the Tomb Raider』では両環境で差は見られず、『Assassin’s Creed Odyssey』と『Final Fantasy XV』では、クリーンインストール環境のデフォルト設定が異なったものの、CPU負荷の高いシナリオではFPS向上が見られた。

生産性アプリケーションの影響

生産性向上のためのアプリケーションでは、Cinebench 2024においてはクリーンインストールと23H2でほぼ同等の結果が得られたものの、7-Zip圧縮テストではクリーンインストール環境が3.5%遅い結果となった。

PCMark 10のアプリ起動速度テストでは、23H2が最速であり、クリーンインストールは最も遅い結果となり、アプリケーションのパフォーマンスにおいて必ずしもクリーンインストールが有利ではないことが判明した。

メモリ使用状況の違い

メモリ割り当てに関しては、クリーンインストール環境ではシステムRAMの使用量が大幅に減少する傾向が確認された。一方で、インプレースアップグレード環境では、メモリリークの可能性が示唆されている。この点を考慮すると、長期間の使用においてメモリ管理の観点からクリーンインストールが有利となる可能性がある。

Windows 11 24H2の導入は慎重に判断すべき理由 パフォーマンス向上が一貫しない現状

ベンチマークの結果から明らかになったのは、Windows 11 24H2が必ずしも全ての環境でパフォーマンス向上をもたらすわけではないという事実である。特に、PCMark 10の結果では、アプリ起動速度や生産性関連の処理速度がむしろ低下するケースが見られた。

一方で、ゲームにおいては設定次第でパフォーマンスの改善が可能なものの、特定のタイトルでは不安定な動作が見られた。この点を踏まえると、現時点でのアップグレードは慎重に判断するべきであり、安定した動作環境を求めるユーザーには必須ではない。

メモリ管理の改善とその影響

クリーンインストール環境においては、メモリ割り当ての効率が向上し、インプレースアップグレード環境と比較してRAM使用量が最適化されていることが確認された。これは、システムの長期運用において、安定性向上に寄与する可能性がある。

しかし、現時点ではこの改善が日常的な使用感にどの程度影響を与えるのかは定かではなく、他の要因との兼ね合いを考慮する必要がある。特に、企業用途においては、アップグレードによるリスクとベネフィットを慎重に見極めるべきである。

企業環境と個人利用の最適な選択肢

企業環境においては、安定性を最優先とするケースが多いため、Windows 11 24H2への移行は慎重に進めるべきである。一方で、個人利用においては、特定の新機能やメモリ管理の向上が恩恵をもたらす可能性があるため、環境に応じた柔軟な判断が求められる。

Source:Neowin