インテルは、AIデータセンター向けのGPUアーキテクチャ「Falcon Shores」の開発を中止し、社内テスト用チップとしてのみ活用する方針を明らかにした。これにより、NVIDIAやAMDとのAIアクセラレータ市場での競争力が一層低下する懸念が高まっている。

同社のGaudi3アクセラレータは、BF16精度でNVIDIAのH100やH200を上回る性能を謳うものの、実際の市場投入の遅れから、既に登場しているNVIDIAの「Blackwell」やAMDの「MI325X」との競争が激化している。さらに、データセンター向けCPU市場でも、AMDのEPYCプロセッサがシェアを拡大し、インテルの地位が揺らいでいる。

一方、エッジコンピューティングやPC市場では、AI機能を強化した製品展開により、競争力を維持する可能性が指摘されている。インテルが今後、AI市場での地位を回復するためには、新たな戦略と技術革新が求められるだろう。

インテルのGPU戦略の混迷とFalcon Shoresの開発中止が示す課題

インテルは、データセンター向けAIアクセラレータ市場における競争力を強化するため、「Falcon Shores」を投入する計画だった。しかし、その開発は最終的に中止され、市場投入されることなく社内テスト用チップにとどまることとなった。この決定は、過去に同社が発表した「Ponte Vecchio」や「Rialto Bridge」の廃止と同様の結果をたどるものであり、同社のGPU戦略の迷走を象徴している。

Falcon Shoresは当初、CPUとGPUを統合した「XPU」アーキテクチャとして設計されていた。しかし、その後の計画変更で従来型のGPUに移行し、最終的には開発中止に至った。これは、NVIDIAやAMDが明確な技術ロードマップを持ち、AI向けアクセラレータ市場を席巻している中で、インテルが明確な競争戦略を構築できていないことを示唆している。

技術的な側面だけでなく、Falcon Shoresの中止はインテルのデータセンター事業全体の方向性にも影響を与える。競争力のあるGPU製品を欠くことで、NVIDIAの「Blackwell」やAMDの「MI325X」との直接対決が困難になり、AIワークロードに最適化されたシステムの構築に遅れが生じる可能性がある。インテルが今後、どのようなアプローチでデータセンター市場に再挑戦するのかが注目される。

Gaudi3の競争力と市場投入の遅れが示すリスク

インテルは「Gaudi3」アクセラレータを市場に投入し、NVIDIAのH100/H200を超えるBF16精度でのパフォーマンスを強調している。しかし、この製品の市場投入が遅れたことで、最新世代のNVIDIA「Blackwell」やAMDの「MI325X」との比較が避けられず、競争の激化が予想される。

Gaudi3は128GBのHBM2eメモリを搭載し、特に推論(インフェレンス)向けの性能を強化している。しかし、競合製品との比較では、NVIDIAのBlackwellはより高い浮動小数点精度を実現し、AMDのMI325Xは大容量メモリと広帯域幅を武器に、データセンター市場での存在感を増している。こうした状況下で、Gaudi3が実際にどの程度の市場シェアを獲得できるかは不透明なままだ。

また、Gaudi3の後継モデルは、当初Falcon Shoresをベースに開発される予定だったため、今後のアップグレード戦略が不透明になっている。競争力を維持するためには、短期間で新たなアーキテクチャを開発し、次世代製品を投入する必要がある。データセンター市場において、技術革新のスピードは極めて速く、投入が遅れることで市場の主導権を握ることが難しくなる。

データセンター市場でのインテルの立場と今後の展望

インテルは、AIサーバーのホストプロセッサとしてXeonを維持しつつも、データセンター市場での立場が変化しつつある。最新の「Granite Rapids Xeon」は、最大128コア/256スレッドを搭載し、PCIe 5.0や高速メモリ技術を採用しているが、AMDのEPYCプロセッサが急速にシェアを拡大している。

特に、AMDは「Turin」世代のEPYCプロセッサを最適化し、Instinct GPUとの統合を推進することで、オールAMD構成のデータセンターを増やす戦略をとっている。また、NVIDIAはArmベースの「Grace」プロセッサを採用することで、インテルのXeon依存から脱却しつつある。この流れは、データセンター市場におけるインテルの影響力低下を加速させる可能性がある。

一方で、インテルにはエッジコンピューティングやPC市場での強みがある。「AI PC」の普及を見据え、Microsoftの「Copilot+」に対応した新製品を投入することで、市場における存在感を維持しようとしている。

また、ネットワークエッジ向けにはXeonプロセッサの「Advanced Matrix Extensions(AMX)」を活用し、GPUを使用しないAI処理の実現を目指している。今後、インテルがどの市場に重点を置き、どのように競争力を回復するのかが鍵となる。

Source:The Register