ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ(BRK.A、BRK.B)は、保険事業を基盤に膨大な投資ポートフォリオを築き、時価総額1兆ドルに達する巨大コングロマリットである。特に保険会社が持つ「フロート」を活用した独自の投資戦略が特徴だ。

しかし、バフェットの高齢化に伴う後継計画や、株価の割高さが投資判断に影響を与える。バフェット自身が自社株を買い戻していない点や、主要幹部の持ち株売却などの要素を考慮すると、今すぐの投資は慎重に検討すべき状況である。

バークシャー・ハサウェイの投資戦略

バークシャー・ハサウェイは、GEICOやGeneral Reといった保険事業を基盤に、様々な企業を傘下に持つ。バフェットは「フロート」と呼ばれる保険料収入を活用し、割安な優良企業への投資を行うことで、長年にわたりS&P500を上回る成長を実現してきた。この戦略が同社の成功を支えてきた要因の一つである。

バフェットの後継者と経営の未来

現在94歳のバフェットに代わる次期CEOには、グレッグ・エーベルが指名されている。エーベルは非保険事業を統括しており、電力事業の成長を牽引してきた実績を持つ。しかし、バフェットのような投資家ではなく、投資判断はトッド・コームズやテッド・ウェシュラーに委ねられる。

保険事業はアジット・ジャインが引き続き統括するものの、バフェットのカリスマ性が欠けた後の経営体制が懸念される。

現在の株価評価

バークシャーの株価純資産倍率(P/Bレシオ)は1.6倍で、歴史的な水準から見ても割高とされる。バフェットはかつて1.1倍以下でなければ自社株買いを行わない方針を示していたが、その後1.2倍へ引き上げ、現在は基準を撤廃した。しかし、直近6年間で初めて自社株買いを実施していない点は、株価が割安ではないとの判断が読み取れる。

また、アジット・ジャインは2023年9月に自身が保有するA株の過半数を売却しており、これは幹部の売却としては2007年以来初の動きである。この事実は、同社株の今後のリスクを示唆するものと考えられる。

バークシャーの成長を支える保険事業の未来

バークシャー・ハサウェイの成長を支えてきた保険事業は、今後も堅実な収益源となる可能性が高い。GEICOやGeneral Reといった子会社は、市場で確固たる地位を築いており、特にGEICOは直販型のビジネスモデルにより競争力を維持している。

一方で、保険市場は新たなリスクと変化に直面している。自動運転技術の普及により、自動車保険の需要構造が変化しつつあり、再保険市場では異常気象によるリスクが拡大している。これらの変化に対応するため、バークシャーの保険事業がどのような戦略を取るのかが、今後の成長を左右する要因となる。

バークシャーの投資戦略と市場環境の変化

バフェットが築いた投資戦略は、長期的視点に基づく優良企業への投資に特徴がある。しかし、近年の市場環境は変化しており、成長株とテクノロジー企業への投資が中心となる傾向が強まっている。

バークシャーは伝統的な産業への投資を重視しており、テクノロジー分野への参入は限定的だった。しかし、Appleへの大規模投資は例外的な成功を収め、同社のポートフォリオの中核をなしている。このように、バークシャーの投資戦略が市場の変化にどのように適応するのかが、今後の成長の鍵を握る。

バークシャー株の長期的な見通し

現在の株価水準は割高とされるものの、バークシャーのビジネスモデル自体は依然として堅牢である。バフェットの後継体制がどのように機能するか、市場環境の変化にどのように適応するかが、今後の評価を左右する。

投資家にとっては、短期的な株価の動きに振り回されず、バークシャーの基盤事業の強さを長期的視点で評価することが求められる。特に、バフェットの後継者がどのような経営戦略を打ち出すのかに注目が集まる。

Source:The Motley Fool