米国のソフトウェア企業MicroStrategyは、ビットコインの追加購入資金を調達するため、新たな優先株「STRK」を発行し、約5億6300万ドルを調達した。当初、1株あたり100ドル、配当利回り8%での発行を予定していたが、需要の状況を踏まえ、価格を80ドルに引き下げ、配当利回りを10%に引き上げた。

この優先株は、特定の条件下でクラスA普通株式に転換可能であり、投資家にとって新たな投資機会となる可能性がある。しかし、同社の財務状況やビットコイン価格の変動リスクを考慮すると、慎重な投資判断が求められる。

MicroStrategyの新優先株STRKがもたらす投資機会とリスク

MicroStrategyは、ビットコインの追加購入資金を確保するため、10%の配当利回りを持つ優先株「STRK」を発行した。この株式は、ビットコイン価格と連動する同社の成長戦略を支えるものであり、新たな投資機会を提供する可能性がある。しかし、同社の財務状況や市場の変動リスクを考慮すると、慎重な判断が求められる。ここでは、STRK株の特徴とその影響について詳しく掘り下げる。

STRK株の特徴と投資家にとってのメリット

STRK株は、MicroStrategyの資金調達戦略の一環として発行された永久優先株である。最大の特徴は、10%という高い配当利回りにある。この利回りは、米国の大手企業が発行する優先株やETFの配当率を大きく上回り、iShares Preferred & Income Securities(PFF)の6.2%と比較しても明確な差がある。

さらに、各STRK株はクラスA普通株式の10分の1に転換可能であり、転換価格は1,000ドルに設定されている。この設計により、投資家は比較的安定した配当収入を得ながら、MicroStrategyの株価上昇による利益を狙うことができる。

また、STRK株はコールオプション(発行体による買い戻し権)がなく、投資家が無期限で保有できる点も特徴的である。一般的な優先株は発行企業の判断で買い戻されることが多いが、STRKはそのリスクを排除し、長期的な投資を可能にしている。

このように、STRK株はMicroStrategyの成長性に賭けながら、比較的安定したインカムゲインを得られる商品として位置付けられる。ただし、転換価格が1,000ドルと高く設定されているため、株価がこの水準を超えなければ転換のメリットは薄れる。また、同社の財務状況やビットコイン市場の変動によっては、配当の持続可能性にも懸念が生じる可能性がある。

MicroStrategyの財務状況と潜在的リスク

STRK株の高配当は投資家にとって魅力的に映るが、MicroStrategyの財務基盤を考慮するとリスクも無視できない。同社は近年、ビットコインを主軸とした財務戦略を進めており、現時点で471,107 BTC(時価総額500億ドル超)を保有している。一方で、売上高は前年同期比10.3%減の1億1610万ドルとなっており、本業の収益力は低下している。

特に注目すべきは、営業費用が300%増の5億1430万ドルに膨れ上がった点である。この増加は主にデジタル資産の評価損によるものであり、ビットコイン価格の下落によってさらなる損失が発生する可能性もある。また、同社の現金準備は4,630万ドルしかなく、短期債務(4,620万ドル)とほぼ同額である。

この状況では、ビットコイン市場の急変が直撃すれば、流動性リスクが一気に高まる恐れがある。さらに、MicroStrategyは株式発行と負債による資金調達を積極的に行っている。直近ではクラスA普通株式800万株を売却し、約11億ドルを調達したが、これにより長期ネット負債は1年前の22億ドルから42億ドルへと倍増している。

負債の増加は財務リスクを高める要因となるため、長期的な持続可能性が問われる。こうした状況を踏まえると、STRK株の配当が維持されるかどうかは、同社の資金繰りとビットコイン市場の動向に大きく依存すると言える。投資家は、MicroStrategyの財務指標を慎重に分析し、リスク許容度を見極める必要がある。

STRK株の将来性と投資判断のポイント

STRK株は、MicroStrategyのビットコイン投資戦略を支える重要な資金調達手段であり、10%の配当利回りというインカムゲインの魅力を備えている。しかし、その将来性はビットコイン価格の動向と同社の財務安定性に大きく左右される。

仮にビットコイン価格が上昇し、MicroStrategyの資産価値が増加すれば、STRK株の転換価値も向上し、株価の上昇が見込める。一方で、ビットコイン市場が下落すれば、同社の財務負担は増し、配当維持が困難になる可能性がある。

また、MicroStrategyはナスダック100指数($IUXX)に採用されるなど、市場から一定の評価を受けている。しかし、その事業モデルが本業のソフトウェア開発よりもビットコイン投資に依存していることを考慮すると、純粋な企業価値の評価が難しい側面もある。

投資判断を下す際には、ビットコイン市場の長期的な成長性をどう見るかが重要な要素となる。STRK株の投資魅力は明確に存在するが、それが持続可能なものなのか、リスクを慎重に見極める必要があるだろう。

Source:Barchart.com