ノーベル経済学賞受賞者であり「現代金融の父」と称されるユージン・ファーマ氏は、ビットコインが本質的価値を欠き、価格の変動が激しいことから、10年以内に無価値になる可能性があると指摘している。彼は、ビットコインが安定した決済手段として機能せず、中央機関の支えもないため、需要が消滅すれば価格はゼロに陥ると述べている。

一方で、ビットコインを「デジタルゴールド」として捉え、価値保存手段としての可能性を主張する意見も存在する。ビットコインの将来については、規制動向や市場の受容度など多様な要因が影響を及ぼすと考えられる。

ノーベル経済学賞受賞者ユージン・ファーマが指摘するビットコインの「本質的価値の欠如」

ユージン・ファーマは、ビットコインには本質的価値が存在しないと主張する。彼の理論によれば、資産の価値は将来のキャッシュフローによって決まる。しかし、ビットコインは企業の株式のように配当を生むわけではなく、国債や不動産のように利息や賃料を生み出すわけでもない。このため、純粋に市場の投機と需要のみに依存し、価格が上昇している間は価値が維持されるが、一度需要が衰えれば無価値になる可能性があると考えている。

また、ビットコインの価格は極端に変動しやすく、通貨としての安定性を欠いている点も問題視されている。通貨の価値は物やサービスと交換できる信頼性に基づいているが、ビットコインのように1日で10%以上の変動がある資産は、企業や消費者にとって安定した決済手段とはなりにくい。このため、ファーマはビットコインが「交換の手段」としての機能を果たしていないと指摘する。

一方で、ビットコインの支持者は、法定通貨も政府や中央銀行の信頼に依存しているため、価値の本質的な担保があるとは言えないと反論する。特に、政府の信用が低下した場合、法定通貨自体の価値が大きく変動することもあり得る。ファーマの理論に従えば、国家の信用が揺らげば法定通貨の価値も保証されないことになるが、この点については慎重に議論されるべきだろう。

ビットコインの価格変動と市場の投機性:持続可能な資産か、投機的バブルか

ビットコインは発行上限が2,100万枚に固定されているが、その希少性が価格安定には直結しない。過去の市場動向を見ても、ビットコインは何度も急騰と急落を繰り返しており、一部の専門家はこれを投機的バブルと捉えている。特に、2017年の急騰とその後の暴落、さらには近年の大幅な価格変動は、持続可能な資産というよりも投機対象としての側面が強いことを示唆している。

ファーマが懸念するのは、ビットコインの価格が市場の心理に大きく左右される点である。例えば、大手企業の決済導入や規制緩和の発表によって価格が急騰する一方、規制強化や取引所のハッキング事件が発生すると暴落する傾向が見られる。これは、ビットコインが安定した価値を持つ資産ではなく、市場の投機的な動きによって価格が形成されていることを示している。

しかし、ビットコインを支持する層は、このボラティリティこそがビットコインの成長の証であり、市場が成熟すれば価格変動も落ち着くと考えている。金や株式市場もかつては激しい変動を伴いながら成長してきた歴史があるため、ビットコインも同様の過程を経て安定する可能性があるという見方も根強い。ただし、こうした見解が実証されるにはさらなる時間とデータが必要だ。

ビットコインは消滅するのか?今後の展望と考えうるシナリオ

ファーマの予測が現実となるためには、いくつかの条件がそろう必要がある。まず、各国政府がビットコインの使用を全面的に禁止し、取引所の閉鎖や厳格な規制を行えば、流動性が極端に低下し、市場が縮小する可能性がある。これまでにも中国をはじめとする国々がビットコイン取引を制限してきたが、完全な禁止には至っていないため、実現には慎重な法整備が求められる。

また、技術的な問題も崩壊の要因となる可能性がある。例えば、ビットコインのブロックチェーンがハッキングされたり、セキュリティ上の脆弱性が発見された場合、信頼が一気に失われることになる。ただし、ビットコインの技術はこれまで多くの課題を乗り越えてきており、セキュリティ面での改善も進められているため、このシナリオが現実化する可能性は低いと考えられている。

さらに、ビットコインよりも優れたデジタル資産が登場し、市場がそちらに移行する可能性も指摘されている。現在でも、イーサリアムやその他のブロックチェーン技術を活用した資産が台頭しており、ビットコインが競争に敗れる可能性は否定できない。しかし、ビットコインは依然として最大の市場規模を持ち、ブランド力も確立されているため、短期間で無価値になるとは考えにくい。

結局のところ、ビットコインの未来は市場の需要と技術革新、そして規制動向に大きく左右される。ファーマの見解は一定の理論的根拠に基づいているものの、過去のビットコインに対する「終焉予測」がことごとく外れてきたことを考慮すると、今後もその行方は慎重に見極める必要があるだろう。

Source: Bitcoinist.com