NVIDIAの最新グラフィックカード、GeForce RTX 5090が1月30日に発売されたが、深刻な供給不足と技術的問題が相次いでいる。米国では発売直後に在庫が尽き、主要な小売店での再入荷は数週間から数ヶ月先と予想されている。

さらに、購入者からはWindowsがGPUを認識しない、PCIe 5.0との互換性問題、さらにはGPUの故障(ブリック)といった報告が相次いでいる。 特に、中国市場向けのRTX 5090Dモデルでは、ドライバの更新後にカードが認識されなくなる事例が多発している。

これらの問題により、NVIDIAの新製品投入は大きな課題に直面している。

供給不足が招く転売市場の過熱と価格高騰

RTX 5090の発売直後、世界的な供給不足が確認され、多くの小売店で即座に完売した。特に欧米市場では予約受付すら停止され、再入荷まで数週間から数ヶ月の遅れが見込まれている。Nvidiaの公式発表では、生産能力の問題を認める発言はないが、一部の販売店は供給量の不足を指摘している。

この状況は、RTX 5090の需要が供給をはるかに上回っていることを示しており、転売市場の過熱につながった。発売から数日で、米国のオークションサイトやフリーマーケットアプリではRTX 5090の価格が大幅に高騰した。標準価格を大きく上回る$2,500以上で取引されるケースもあり、欧州市場ではさらに価格が吊り上げられている。

この背景には、転売目的の購入者が多く存在することが影響しているとみられる。特に、Nvidiaの直販や正規代理店での在庫がすぐに枯渇したため、正規ルートで入手できなかった消費者が高額な転売品に頼らざるを得ない状況が生まれた。

この供給不足の要因には、Nvidiaの生産体制だけでなく、半導体供給の制約や物流の問題が関与している可能性もある。過去のモデルでも初期の供給不足はあったが、今回のRTX 5090ではそれがより顕著に表れている。今後の在庫回復がどの程度早まるかによって、市場の動向は大きく左右されるだろう。

PCIe 5.0との互換性問題が引き起こす新たな課題

RTX 5090を搭載した一部のシステムで、PCIe 5.0との互換性に関する問題が報告されている。著名なオーバークロッカーであるder8auer ENのテストでは、WindowsがGPUを正常に認識しないケースが発生し、ディスプレイがブラックスクリーンになるなどの不具合が確認された。

この問題はBIOSの設定でPCIe 5.0からPCIe 4.0へ変更することで改善するが、本来の仕様であるPCIe 5.0を活用できない点が懸念されている。PCIe 5.0は次世代の高速データ転送技術であり、理論上はRTX 5090の性能を最大限に引き出せる仕様となっている。

しかし、現時点で報告されている不具合を見る限り、安定した動作のためには意図的に下位互換モードで運用する必要がある可能性がある。この問題は特定のマザーボードメーカーやBIOSバージョンに依存する可能性が指摘されているが、Nvidia側のドライバーやファームウェアの対応が待たれる状況だ。

また、PCIe 5.0の問題とは別に、中国市場向けのRTX 5090Dでは、ドライバー更新後にGPUが認識されなくなる不具合が多発しているという報告もある。この問題は単なる互換性の問題ではなく、ファームウェアやハードウェアレベルのバグの可能性も考えられる。

RTX 50シリーズの導入にあたり、ユーザーは購入前に対応マザーボードの情報や互換性に関する最新の情報を十分に確認することが求められる。

技術革新と信頼性のバランスが問われるNvidiaの戦略

NvidiaはRTX 50シリーズの発表において、性能向上と新技術の導入を前面に打ち出した。しかし、発売後に発生した問題を考慮すると、技術革新のスピードと製品の安定性のバランスが問われる局面にある。特に、供給不足や技術的な不具合が続けば、ユーザーの信頼を損なう可能性が高い。

過去の世代では、初期不良やドライバーの問題があっても、時間とともに解決されるケースが多かった。だが、今回のRTX 5090では、ハードウェアレベルの問題が報告されており、ソフトウェアアップデートだけでは解決が難しい可能性がある。特にPCIe 5.0の互換性問題やWindows側の対応遅れは、ハイエンドユーザー層にとっては大きな懸念材料となる。

また、転売市場の高騰は、正規価格で購入したいユーザーにとって大きな障壁となる。Nvidiaは今後の供給計画について明確な情報を発信しなければ、市場の混乱が続く可能性がある。技術革新と信頼性のバランスをどのように取るかが、今後のNvidiaの戦略の成否を左右するだろう。

Source:Neowin