Nvidiaの最新フラッグシップGPU「RTX 5090」の発売は、深刻な在庫不足によって混乱を引き起こしている。多くの消費者が購入を試みたが、即座に完売となり、小売店では長期間の品薄状態が続くと予測されている。

YouTubeチャンネル「Gamers Nexus」は、Nvidiaの販売戦略を「ペーパー・ローンチ(形だけの発売)」と批判し、実態のない供給体制に疑問を投げかけた。これまでのGPU市場でも入手困難な状況は続いていたが、今回の5090の供給不足は過去最悪ともいわれている。

消費者の怒りが高まる中、Nvidiaは供給体制の改善策を示さず、転売価格の高騰も深刻化している。今後の供給見通しについては不透明な状況が続く。

RTX 5090の在庫不足はなぜ深刻化したのか 市場構造と半導体供給網の影響

NvidiaのRTX 5090の供給不足は、単なる需要過多によるものではなく、半導体業界全体の構造的な問題が背景にある。近年のGPU市場は、AI向けハイエンドチップの需要増加により、一般向け製品の供給が圧迫される状況が続いている。

特に、Nvidiaはデータセンター向けのH100やB100といった高性能AIチップの供給を優先しており、ゲーミング向けのGPUが後回しになっているとの指摘がある。また、半導体製造の委託先であるTSMCの生産能力の限界も大きな要因となっている。

TSMCの最新プロセス技術を使用した製造ラインは、AI向け製品やスマートフォン用SoCの需要に応じる形で埋まっており、NvidiaのゲーミングGPU向けの生産枠が制限されている可能性が高い。これにより、RTX 5090の生産量が抑えられ、結果として供給不足がさらに深刻化している。

さらに、小売店側の動きも在庫不足を加速させている。従来、Nvidiaの新製品は大手販売店に一定数割り当てられるが、今回は販売店の入荷量が極端に少ない状況が続いている。これは、転売市場での価格高騰を見越して、供給元が在庫を意図的に抑えている可能性を示唆する意見もある。こうした背景を踏まえると、RTX 5090の供給問題は短期間では解決しない可能性がある。

Nvidiaの販売戦略と市場の反応 なぜ「ペーパー・ローンチ」と批判されるのか

RTX 5090の発売に対し、消費者や専門家から「ペーパー・ローンチ」との批判が噴出している。その理由の一つが、供給不足にもかかわらず、Nvidiaが積極的なプロモーションを展開し、期待感を煽った点にある。RTX 5090の発表時には、高性能化を強調するマーケティングが行われ、事前予約や購入を希望するユーザーが急増した。

しかし、実際には市場に出回る製品の数が極端に少なく、多くの消費者が購入できない事態に直面している。「ペーパー・ローンチ」は、製品の発表・販売が行われたものの、実際の流通量がごくわずかである場合に用いられる言葉だ。過去にもNvidiaは、RTX 30シリーズや40シリーズの初期販売で同様の供給不足を経験しているが、今回の5090はそれ以上に入手困難となっている。

この状況に対し、YouTubeのGamers Nexusは「ヴェイパーウェア(実態のない製品)に近い」とまで言及しており、批判の声は一層強まっている。また、Nvidiaがこの状況について具体的な説明を避けている点も不満を増幅させている。供給不足に関する公式な声明はなく、次回の再入荷時期も明確に示されていない。

このため、転売市場では価格が急騰し、一部の消費者は通常価格の2倍以上を支払わざるを得ない状況に追い込まれている。こうした市場の混乱を受け、Nvidiaの販売戦略には今後さらに厳しい目が向けられることになるだろう。

今後の見通し RTX 5090の供給は改善されるのか

現在のRTX 5090の供給状況は極めて厳しいが、今後の展開については複数の可能性が考えられる。一つのシナリオとして、Nvidiaが増産体制を強化し、供給量を徐々に拡大する可能性がある。過去の例を見ると、RTX 30シリーズや40シリーズも発売当初は深刻な品薄状態だったが、数カ月後には流通量が増加し、価格が安定したケースがあった。

しかし、半導体業界全体の動向を考慮すると、RTX 5090の供給が急速に改善されるとは言い難い。特に、AI向けチップの需要が継続的に増加しているため、NvidiaがゲーミングGPUの生産を優先するかどうかは不透明である。また、TSMCの製造ラインが逼迫している状況では、すぐに増産に転じることも難しい。

もう一つの懸念点は、転売市場の動向である。現在、RTX 5090は需要が供給を大きく上回っているため、価格が高騰しやすい状況にある。転売市場での価格高騰が続けば、一般の消費者にとって手の届かない製品となり、Nvidiaのブランドイメージにも悪影響を及ぼす可能性がある。

このような状況の中、消費者が取るべき対応としては、RTX 5090の公式な供給情報を慎重に確認し、不確実な転売市場での購入を避けることが重要である。Nvidiaが今後どのような対応策を講じるかが、今後の市場動向を大きく左右することになるだろう。

Source:Dexerto