Nvidiaは、最新のGeForce Game Readyドライバー(バージョン572.16)において、新たなAIフレーム生成技術「Smooth Motion」を発表した。この技術は、DLSS未対応のゲームにおいても、AIが2つのレンダリング済みフレーム間に補間フレームを生成することで、より滑らかなゲームプレイを実現するものである。

当初はRTX 5000シリーズ向けに提供されているが、将来的にはRTX 4000シリーズへの対応も予定されている。

Nvidiaの「Smooth Motion」がもたらすゲーム体験の変革

「Smooth Motion」は、DLSS非対応のゲームにおいてもAIがフレームを補間することで、滑らかな映像表現を可能にする新技術である。Nvidiaはこの技術をRTX 5000シリーズ向けに提供し、後にRTX 4000シリーズにも展開する計画を明らかにした。これにより、これまでハードウェアや開発者による最適化が求められたフレーム生成技術が、より幅広いユーザー層に利用可能となる。

この技術の最大の利点は、開発者側での対応が不要である点にある。従来のDLSSやフレーム生成機能は、ゲームエンジンのアップデートや開発者の実装が不可欠だったが、「Smooth Motion」はドライバーベースで機能するため、対応ゲームを増やす負担が格段に減少する。

また、これにより最新のゲームのみならず、過去のDX11やDX12のタイトルにおいてもフレームレートの向上が期待できる。さらに、ゲーム体験の向上は単なるフレームレートの増加だけではない。フレーム補間技術により、画面のブレやカクつきが抑えられ、より快適なプレイが可能となる。

特に、eスポーツなどの競技性の高いゲームでは、映像の滑らかさがプレイヤーのパフォーマンスに直結するため、「Smooth Motion」の効果は計り知れない。今後、この技術がどの程度の効果を発揮するのか、実際のゲームプレイを通じた検証が求められる。

AMDのFluid Motion Framesとの比較と競争の激化

Nvidiaの「Smooth Motion」は、AMDの「Fluid Motion Frames(FMF)」と類似した技術であり、両社の競争はGPU市場全体に影響を及ぼすことになる。AMDはすでにFMFをRadeon RX 6000シリーズやRX 7000シリーズに提供しており、ノートPC向けの一部GPUやAPUにも対応を広げている。

一方、NvidiaはRTX 5000シリーズを皮切りに「Smooth Motion」を導入し、RTX 4000シリーズにも展開する意向を示している。両者の違いの一つは、技術的なアプローチにある。FMFはDirectX 11およびDirectX 12のゲームに適用可能であり、Nvidiaの「Smooth Motion」も同様の対応範囲を持つ。

しかし、FMFはオープンソース化されており、コミュニティによる改良やアップデートが可能な点が特徴だ。一方で、Nvidiaは独自技術として提供するため、最適化が進む一方で、競合他社のハードウェアとの互換性には制限があると考えられる。

また、フレーム補間技術は、画像品質や入力遅延の面で慎重な調整が必要である。AMDのFMFは、特に低フレームレートのタイトルにおいて顕著な効果を発揮するとされるが、一部ではゴーストイングや画像の歪みが報告されている。Nvidiaの「Smooth Motion」が同様の課題を克服できるのか、またFMFに対してどのような優位性を示せるのかが注目される。

この競争は、単なる技術の優劣にとどまらず、ユーザーの選択肢の拡大にも寄与する。AMDがFMFを広範な製品ラインに展開しているのに対し、Nvidiaも「Smooth Motion」をより多くのGPUに提供することで競争力を維持する必要がある。今後、両社がどのような差別化を図るのかが市場の動向を左右することになるだろう。

旧世代GPUへの対応とNvidiaの今後の展望

Nvidiaの「Smooth Motion」は、現時点ではRTX 5000シリーズ専用とされているが、RTX 4000シリーズにも展開されることが確定している。では、それ以前の世代、特にRTX 3000シリーズやRTX 2000シリーズには適用されるのか。この点に関しては、Nvidiaから正式な発表はないものの、一部の開発者や関係者の発言から可能性が示唆されている。

特に、NvidiaのApplied Deep Learning Research部門の副社長であるBryan Catanzaroは、RTX 3000シリーズ向けのフレーム生成技術の展開について以前言及しており、「Smooth Motion」の対応範囲がさらに拡大する可能性がある。過去にもNvidiaは、一部の機能を後から旧世代GPUに提供した実績があるため、RTX 3000シリーズやRTX 2000シリーズのユーザーにも期待が高まっている。

もし旧世代GPUにも適用されれば、Nvidiaの既存ユーザーにとって大きな恩恵となる。特にRTX 3000シリーズは、現在でも市場に多く流通しており、多くのゲーマーが使用しているモデルである。そのため、フレーム生成技術の適用範囲が広がれば、新世代GPUへの移行を急がずとも、最新の技術を体験できる環境が整うことになる。

Nvidiaは、これまで新技術を最新世代に独占させる戦略を採ってきたが、「Smooth Motion」のように旧世代にも展開される技術が増えれば、ユーザー層の満足度が向上することは間違いない。今後、Nvidiaがどのような方針を打ち出すのか、また、旧世代GPUユーザーがどの程度新技術を享受できるのかが、今後のGPU市場の動向を左右する要因の一つとなるだろう。

Source:TechRadar