Nvidiaの株価が急落した。中国AI企業DeepSeekの新技術発表により、市場では同社の競争力低下が懸念され、大幅な売りが発生。結果、Nvidiaの時価総額は1日で約6,000億ドル減少した。
この下落を受け、一部投資家は押し目買いの好機とみる一方、みずほ証券のアナリスト、ジョーダン・クライン氏は慎重な見解を示す。同氏は「買いではないが、売るべきでもない」と述べ、市場の過熱感とDeepSeekの影響を慎重に見極める必要があると指摘。
ただし、Nvidiaの業績は依然として好調で、データセンター事業が牽引し、売上・利益ともに市場予想を上回る成長を維持。アナリストの評価も強気のままであり、今後の株価動向が注目される。
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Nvidia株急落の背景と市場の反応

Nvidiaの株価は1月27日、中国のAI企業DeepSeekの新技術発表を受けて急落した。DeepSeekは「DeepSeek-V3」および「DeepSeek-R1」という2つのオープンソースAIモデルを発表し、特に低コストで高い性能を発揮する点が市場の注目を集めた。この発表により、AI市場での競争が激化するとの見方が広がり、Nvidiaを含む半導体関連銘柄が売り込まれる結果となった。
この影響でNvidiaの株価は急落し、時価総額は1日で約6,000億ドル減少。特にAI分野における市場シェアの低下が懸念され、投資家心理が悪化した。ただし、この暴落はNvidiaだけでなく、他のビッグテック企業にも波及し、AI関連銘柄全体が大きな調整局面を迎えた。
しかし、こうした市場の反応は過剰だった可能性がある。みずほ証券のアナリスト、ジョーダン・クライン氏は、DeepSeekの技術が短期的にNvidiaの事業を脅かすものではないと指摘。特に、AIモデルの「推論(インファレンス)」における技術的課題が残るため、Nvidiaの優位性は揺るがないとの見方を示した。市場が急落を受けて動揺する一方で、実際の競争環境を慎重に分析する必要がある。
Nvidiaの業績動向と今後の成長性
株価が下落したとはいえ、Nvidiaの業績は堅調である。2024年11月に発表された2025年度第3四半期の決算では、売上高が前年同期比94%増の350億8000万ドルに達し、ウォール街の予想を大きく上回った。特にデータセンター事業の売上は記録的な308億ドルとなり、AI需要の高まりを背景に112%の成長を遂げた。
一方、粗利益率は前四半期の75.1%から74.6%へとわずかに低下。営業費用は前年同期の29億ドルから42億ドルへと増加したが、これは研究開発費やAIインフラへの投資拡大によるもので、長期的な競争力強化のための施策とみられる。また、同社の現金残高は259億8000万ドルから384億9000万ドルに増加し、財務的な安定性も維持されている。
この成長を背景に、Nvidiaの経営陣は第4四半期の売上予想を375億ドルと発表。粗利益率は73%とやや低下する見込みだが、市場の需要に支えられた強い業績が続くと予想される。AI分野での競争は激化するものの、Nvidiaの技術的優位性とデータセンター事業の拡大が中長期的な成長を下支えする要因となるだろう。
投資判断の分岐点とNvidiaの展望
現在のNvidia株に対する市場の評価は二極化している。AI競争の激化や株価の高騰を警戒し、さらなる下落を懸念する声がある一方で、Nvidiaの技術力や業績を考慮し、強気な見方をするアナリストも多い。事実、43名のアナリストのうち「強い買い」が37名、「中程度の買い」が2名という評価となっており、平均目標株価は178.09ドルと現在の水準から約52%の上昇余地があるとされる。
しかし、短期的な市場の変動に左右されず、長期的な視点での投資判断が求められる。DeepSeekの技術発表による影響が限定的であるならば、Nvidiaの成長は持続する可能性が高い。一方で、AI市場の変化や競争環境のさらなる激化が、同社の市場シェアに影響を与えるリスクも否定できない。
NvidiaはこれまでAI分野での圧倒的な優位性を築いてきたが、競争が一層激化する今後の展開が鍵となる。AIの進化が急速に進む中、技術革新と戦略的な投資が株価の行方を左右することになるだろう。
Source:Barchart.com、MarketWatch、Yahoo