エクソンモービル(XOM)は、依然として強力なキャッシュフローを生み出しているが、その水準は前年より低下している。直近の株価は高値から約12%下落し、割安感が漂う中、バリュー投資家の注目を集めている。特に、過去の配当利回りを基にした理論価格やアナリストの目標株価と比較すると、株価上昇の余地があると考えられる。
エクソンモービルは第4四半期の営業キャッシュフロー(CFFO)122億ドル、フリーキャッシュフロー(FCF)80億ドルを確保したが、前年同期比で大幅に減少している。市場ではキャッシュフロー減少が今後も続けば、配当や自社株買いに悪影響を及ぼす可能性を懸念する声もある。しかし、エクソンモービルは過去5年間でCFFOを年平均15%成長させており、2030年までにさらに300億ドル増やす計画を掲げる。これを踏まえると、短期的な減少を過度に悲観する必要はないとの見方もある。
株価評価に関しては、過去3年間の平均配当利回り(3.49%)を基に算出した理論株価は約114ドルとなり、現在の株価(106.62ドル)から6.4%の上昇余地を示唆している。さらに、アナリストの目標株価は127~129ドルの範囲にあり、これが実現すれば19%以上の上昇が期待できる。短期的な投資戦略としては、プット売りを活用し、収益を確保しつつ安値で株を取得する方法も有効と考えられる。
エクソンモービルのキャッシュフロー減少の背景:要因と市場の視点

エクソンモービルのキャッシュフローは依然として高水準を維持しているものの、第4四半期の営業キャッシュフローは122億ドル、フリーキャッシュフローは80億ドルにとどまり、前期比で約30%の減少となった。この主な要因として、原油価格の変動や生産コストの上昇が挙げられる。特に、原油市場の供給動向や地政学リスクの影響を受け、エネルギー価格が2022年と比べて落ち着きを見せたことが、収益減少に直結したと考えられる。
また、エクソンモービルは積極的な投資戦略を展開しており、新規プロジェクトへの資本支出が増加している。これは長期的な成長を見据えた動きであるが、短期的にはキャッシュフローの減少要因となる。市場はこの状況を慎重に見極めており、一時的な要因による業績悪化と捉えるか、より構造的な問題と見るかによって、評価が分かれている。
一方で、エクソンモービルの長期的な財務戦略は堅実であり、年間ベースではキャッシュフロー減少率は4.66%にとどまる。これは短期的な変動を考慮すれば、企業の基盤が揺らいでいるわけではないことを示唆している。さらに、同社は2030年までにキャッシュフローを300億ドル増加させる計画を掲げており、長期的な安定性を維持するための取り組みを強化している。
配当と自社株買い:株主還元策の持続可能性
エクソンモービルの配当政策は投資家にとって重要な関心事であり、同社は安定的な配当を維持し続けている。現在の年間配当は3.96ドルであり、発行済み株式総数4.3530億株に基づくと、総額172億ドルを要する。この金額は、2024年の予想フリーキャッシュフロー(FCF)343億ドルの約50%に相当し、十分な支払い能力を確保していることを示している。
加えて、エクソンモービルは自社株買いにも積極的であり、昨年は196億ドルを投じた。これは、同社のFCF(運転資本除外後362億ドル)でほぼ賄うことができる水準である。配当と自社株買いを合わせると総額368億ドルとなるが、これでも年間FCFと大きく乖離していない。したがって、同社の株主還元策は持続可能であると考えられる。
一方、市場はエネルギー業界全体の不透明感を考慮し、今後のキャッシュフローの動向に注目している。原油価格の下落や需要の減退が続けば、配当や自社株買いの水準が見直される可能性もある。ただし、エクソンモービルの財務基盤の強さと過去の配当維持実績を踏まえれば、同社が急激な還元政策の変更を行う可能性は低いと考えられる。
XOM株の投資妙味:割安な水準と今後の可能性
エクソンモービルの現在の株価(106.62ドル)は、昨年11月の高値(121.79ドル)から約12%下落している。この水準が適正かどうかを判断するために、過去の配当利回りと比較すると、3年間の平均配当利回り(3.49%)を基にした理論株価は約114ドルとなる。これは現在の株価より6.4%高く、一定の上昇余地があることを示している。
さらに、アナリストの予想では、XOMの目標株価は127~129ドルの範囲にあり、現在の水準から19%以上の上昇が見込める。これを考慮すると、長期的な視点での投資魅力は十分にあると言える。短期的なアプローチとしては、プット売り戦略を活用し、プレミアム収益を得ながら割安な水準で株を取得する選択肢もある。
ただし、エネルギー市場は価格変動が激しく、外部環境の影響を受けやすい。原油価格がさらに下落すれば、株価の下押し圧力となる可能性がある。したがって、投資判断を行う際には、エクソンモービルの長期的な成長戦略とともに、エネルギー市場の動向を慎重に見極めることが重要である。
Source:Barchart