Appleは2025年度第1四半期に過去最高の売上を記録したものの、中国市場での販売低迷が業績の足かせとなっている。同社の「大中華圏」の売上は前年比11%以上減少し、Huaweiなどの現地メーカーとの競争が激化する中、iPhoneの販売は伸び悩んでいる。また、Apple Intelligenceを中国市場で提供していないことも影響しており、シェア低下が続く可能性がある。
加えて、トランプ前大統領が掲げる対中関税政策はAppleの供給網に大きな影響を及ぼす。Appleはインドなど他国への生産分散を進めるが、中国は依然として重要な拠点であり、関税の影響は無視できない。こうした状況下で、Appleのサービス事業は堅調に推移しているが、株価の見通しには慎重な判断が求められる。
アナリストの評価は分かれており、Apple株は「マグニフィセント・セブン」の中でも評価が低い部類に入る。予想PERは31倍を超えており、市場の逆風を考慮するとリスクが先行する可能性が高い。Apple株が今後上昇基調を維持できるかは、中国市場の回復と関税政策の行方次第となる。
Appleの中国市場における苦戦 競争環境の変化がもたらす影響

Appleにとって中国市場は長年、成長を支える重要な柱であった。しかし、直近の四半期決算では「大中華圏」の売上が前年比11%以上の減少を記録し、同社の業績に重くのしかかっている。特に、iPhoneの販売不振が目立ち、Huaweiなどの現地メーカーとの競争が激化していることがその要因の一つだ。
中国政府の「国家補助金制度」により、一部のスマートフォンメーカーは政府からの支援を受け、価格競争力を高めている。これに対し、Apple製品は価格競争に巻き込まれる形となり、消費者の選択肢としての優位性が揺らいでいる。加えて、Apple Intelligenceを中国向けに提供していないことが、消費者の購買意欲を低下させる一因となっている。
一方で、中国市場の回復に向けた動きも見られる。Appleは在庫調整が進めば、次の四半期には販売が持ち直す可能性を示唆しており、加えて政府の補助金制度の適用が追い風となる可能性もある。しかし、現地メーカーとの技術革新競争は熾烈を極めており、Appleが中国市場でのシェアを維持できるかは、今後の戦略次第といえる。
トランプの関税政策とAppleの供給網 インドへのシフトは十分か
トランプ前大統領が再び関税政策を推進する姿勢を示す中、Appleにとって中国依存のサプライチェーンは大きなリスクとなっている。すでに同社はインドなどへの生産移転を進めているが、依然として主要な組立工程は中国に依存しており、短期間での完全な脱却は困難とされる。
中国の製造業は長年にわたり高い技術力と効率性を誇り、Appleの精密な設計を実現するうえで欠かせない存在である。しかし、関税が強化されればコスト上昇は避けられず、Appleは価格転嫁の難しい環境に直面することになる。特に、米国市場でのiPhoneの価格引き上げは消費者の購買意欲を低下させ、競争環境の悪化につながる可能性がある。
インドでは生産能力の拡充が進んでいるものの、品質管理や供給ネットワークの整備には時間を要するとみられる。さらに、インド政府が外国企業に対して厳しい規制を設けていることも課題となる。Appleが今後の供給網のリスクをどこまで抑制できるかが、長期的な業績に大きく影響することは間違いない。
サービス事業の好調が支えるAppleの収益基盤 ハードウェア依存からの脱却なるか
Appleの2025年度第1四半期決算では、iPhoneの売上が市場予想を下回ったものの、サービス事業が前年同期比14%の成長を記録し、全体の業績を支えた。同事業の粗利益率は75%に達し、ハードウェア事業と比較して高い収益性を誇ることが明らかとなった。
Appleは、iCloud、Apple Music、Apple Payなどのサービスを軸に、サブスクリプションモデルを強化している。特に、Apple Intelligenceの普及が進めば、ソフトウェアサービスの付加価値が高まり、さらなる収益の柱となる可能性がある。また、ハードウェア事業が厳しい競争環境にあるなかで、サービス部門の成長は企業価値の安定に貢献している。
しかし、Appleが依然としてハードウェア販売に大きく依存しているのも事実であり、特にiPhoneの販売動向は株価に直結する要素である。今後、サービス事業をいかに拡大し、安定した収益源として確立できるかが、Appleの長期的な成長の鍵を握るだろう。
Source:Barchart