米国の長期金利が依然として高水準を維持している。2025年2月時点で30年物米国債先物は114-23、TLT ETFは88.25ドルと低迷しており、長期債市場には引き続き圧力がかかっている。2024年後半にはFRBが利下げペースを抑制し、短期金利は低下したものの、長期金利は市場の動向によって高止まりしている。

政権は金利引き下げを望むが、FRBの独立性が維持される限り、その影響力には限界がある。特に、債務の急増により低金利を維持することが困難となっており、政府の財政負担が長期金利の下方圧力を制限している。加えて、インフレ率が2%を上回る状況では、急速な利下げはインフレの再燃を招くリスクがある。

長期金利の行方を決定づける要因は、政治的思惑と市場のセンチメントのせめぎ合いにある。今後の米国債市場のボラティリティが高まる中、2023年10月の安値を試すのか、それとも反発するのか、慎重に見極める必要がある。

FRBの金融政策と市場のズレ:長期金利の行方を左右する要因

FRBは2024年に100ベーシスポイントの利下げを実施し、2025年にも当初は100ベーシスポイントの利下げが見込まれていた。しかし、2024年末にその見通しは50ベーシスポイントに修正され、2025年最初のFOMC会合では金利が据え置かれた。インフレ率がFRBの目標である2%を依然として上回っているため、大幅な利下げがインフレを再燃させる可能性を考慮した結果とみられる。

しかし、市場はFRBの政策方針とは異なるシグナルを発している。短期金利の引き下げにもかかわらず、長期金利は市場の需給バランスに基づいて形成される。FRBが利下げを進めても、債券市場が低金利を支持しない限り、長期金利の大幅な低下は期待しにくい。特に2025年2月時点では、30年債先物が114-23まで下落し、TLT ETFも88.25ドルと低迷している。

FRBの金融政策と市場の期待の乖離が続けば、投資家は利回りの高い資産へのシフトを加速させる可能性がある。これは債券価格の下落を促し、長期金利をさらに押し上げる要因となるだろう。市場が「FRBの利下げだけでは長期金利は下がらない」と判断すれば、今後も長期債の売り圧力は続く可能性が高い。


政治的思惑とFRBの独立性金利政策を巡る対立が債券市場に与える影響

トランプ大統領は、経済成長を促進するために低金利政策を重視している。新たに任命されたスコット・ベセント財務長官とともに、金融緩和を推進する姿勢を明確にしている。しかし、FRBは独立した機関であり、大統領の意向に従って政策を変更するわけではない。この点が、政権とFRBの間に摩擦を生む要因となっている。

興味深いのは、通常は対立することが多い民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員も、2024年9月に「消費者支援のためにさらなる利下げが必要」と主張していた点である。共和党・民主党の双方が金利引き下げを求める状況は異例であり、2025年の政策決定に影響を与える可能性がある。しかし、FRBはインフレ抑制を最優先課題とし、慎重な金融政策を継続している。

仮に政治的圧力がFRBの決定に影響を及ぼす場合、市場の混乱が予想される。特に、債券市場はFRBの独立性を重視しており、政治主導の利下げが実施されれば、インフレ再燃への懸念から長期金利の乱高下を招く可能性がある。一方で、政権の意向と市場の期待が一致すれば、債券市場が安定する可能性も否定できない。今後のFRBと政権の関係が、金利の方向性を左右する重要なポイントとなる。


米国の巨額債務が長期金利の低下を阻む要因に

米国の長期金利が下がりにくい背景には、同国の債務が過去最高水準に達していることがある。最新のデータによると、米国の債務総額は36兆4,330億ドルを超えており、今後も増加傾向が続くと予想されている。FRBの政策金利(FFレート)が4.33%で維持される場合、年間の利払いコストは1兆5,900億ドル以上に膨らむ見通しである。

市場は、現在の債務水準では低金利政策の維持が困難であると見ている。政府の歳入が増加しない限り、金利を下げることで借入コストは一時的に抑えられるものの、債務自体の拡大が続けば、結局は金利の上昇圧力が高まる。債券市場においては、信用リスクが高まると投資家がリスクプレミアムを要求し、長期金利の引き下げが難しくなる可能性がある。

さらに、トランプ政権の関税政策も影響を及ぼす可能性がある。関税が引き上げられれば、輸入品の価格上昇を通じてインフレ率が上昇し、FRBの利下げ余地が狭まることが考えられる。仮に関税政策が実行されれば、長期金利は高止まりする可能性が高く、債券市場のボラティリティが一層高まるだろう。

最終的に、米国の債務問題が長期金利の決定要因の一つとして強く影響し続けることは避けられない。短期的な金融政策の変更や政権の意向よりも、財政の持続可能性が市場にとっての重要な指標となりそうだ。

Source:Barchart.com