ビットコインのネットワークが記録的なハッシュレートを達成した。計算能力は833エクサハッシュ毎秒(EH/s)に達し、わずか数日で9%増加。これは2024年4月の半減期に備えたマイニング企業の大規模なインフラ投資が主因とされる。
一方で取引手数料は歴史的な低水準に落ち込み、マイニング企業の収益を圧迫している。現在の優先取引コストはわずか0.69ドルと、ネットワークの混雑緩和により低迷。マイニング難易度は今後6%上昇する見込みであり、運用コストの増加が業界の持続可能性に影響を及ぼす可能性がある。
この状況が続けば低効率な企業は撤退を余儀なくされ、市場の寡占化が進む恐れもある。ハッシュレートの急上昇が示すのは、競争激化の現実と、収益確保の難しさが浮き彫りになったマイニング業界の転換点である。
ビットコインマイニングの競争激化とハッシュレートの上昇要因

ビットコインのハッシュレートが833エクサハッシュ毎秒(EH/s)という過去最高水準に達した。これは単なる技術的進化ではなく、マイニング企業の競争環境の変化を示す重要な指標である。特に、2024年4月に予定されている半減期を見据えた大規模なインフラ投資が、この急増の背景にある。
半減期後、ブロック報酬は半減するため、マイニング企業は利益確保のために効率的な機器への更新を進めてきた。最新のASIC(特定用途向け集積回路)を導入することで、より高い計算能力を持つ施設が増え、ネットワーク全体のハッシュレートが加速的に成長した。また、米国やカナダの大手マイニング企業が事業拡大に乗り出し、より安価な電力を求めて地域ごとの最適化が進んでいることも影響している。
一方で、ハッシュレートの急激な上昇は、ネットワークの安全性を強化する要素であるものの、収益性の低いマイナーにとっては生存競争が厳しくなる要因でもある。特に、電気代や設備投資のコストが高騰している現状では、収益性の低い事業者は撤退を余儀なくされる可能性がある。現在の状況が継続すれば、マイニング業界全体の構造が大きく変化することは避けられないだろう。
取引手数料の低迷がもたらすマイニング業界の危機
ハッシュレートが上昇する一方で、ビットコインの取引手数料は著しく低迷している。現在、優先取引のコストは0.69ドル(5 sat/vB)と、近年ではほとんど見られない水準まで低下した。これは、ブロック内に含まれる取引の競争が緩和されたことに加え、メモリプールの混雑が少なくなったことが要因とされる。
取引手数料の低下は、マイニング企業の収益構造に直接影響を与える。マイニング企業は通常、ブロック報酬と取引手数料の両方を収益源としている。しかし、半減期を経るたびにブロック報酬が減少するため、取引手数料の占める割合は重要性を増している。現状のように手数料が低迷したままでは、報酬の減少を補うことが難しくなり、経営の持続可能性が問われる状況に陥る可能性がある。
特に、小規模なマイニング企業にとっては、コスト削減と設備投資のバランスが極めて重要になる。電気代が安価な地域への移転や、エネルギー効率の高いマシンへの更新が生き残りの鍵となるが、それができない企業は市場から淘汰されるだろう。結果として、大手企業による寡占化が進み、ビットコインのマイニング業界における競争環境が大きく変化する可能性がある。
ハッシュレートの集中化がもたらすビットコインの将来への影響
ハッシュレートの急上昇と市場の寡占化は、ビットコインの分散性にも影響を及ぼす可能性がある。マイニング事業のコストが上昇し続けると、大規模な資本を持つ企業のみが生き残ることになり、小規模な事業者が撤退を余儀なくされる。結果として、計算能力が一部の企業に集中し、ネットワークの非中央集権性が損なわれる懸念がある。
特に、エネルギーコストや設備投資の増加に耐えられなくなった企業が撤退すれば、ハッシュレートは一定の水準を超えた後に低下する可能性がある。こうした変化は、ビットコインの安全性にとっても大きな影響を与える。ハッシュレートの低下はネットワークのセキュリティを脆弱にし、潜在的な攻撃リスクを高める要因になり得る。
また、大規模マイニング企業による市場支配が進めば、ネットワークの意思決定に影響を与える可能性もある。現在のビットコインのプロトコルは分散型の意思決定を前提としているが、ハッシュパワーが一部の企業に集中すれば、変更の方向性を特定のプレイヤーが左右する状況が生まれることも考えられる。このような動きが加速すれば、ビットコインの本来の理念である「分散性」との整合性が問われることになるだろう。
Source:Cointribune