Nvidia(NVDA)の株価が最高値から20%下落し、6カ月ぶりの安値圏にある。この下落の背景には、国際貿易の緊張や競争環境の変化がある。特に、米中関係の悪化による新たな関税措置や、中国のAI企業DeepSeekの台頭が市場の懸念材料となっている。一方で、Nvidiaの業績は依然として好調であり、データセンター事業を中心に急成長を続けている。株価の下落を受け、現在の水準での投資判断が注目される。

過去2年間でNvidiaの売上高は急増し、直近12カ月間では前年比152.4%の成長を記録。データセンター向けGPUの需要が拡大し、2024年10月までの四半期で同事業の売上は前年比100%以上増の308億ドルに達した。さらに、粗利益率も向上し、2025年度第3四半期には74.8%を記録。財務基盤の強化も進み、10月末時点で385億ドルの現金を保有し、フリーキャッシュフローは168億ドルに達している。

アナリストの予測では、2025年度の売上は1,293億ドル、2026年度には1,963億ドルに成長すると見込まれており、利益も拡大するとされる。現在の株価は予想利益の26.7倍で取引されており、中長期的に成長が続くならば、割安と捉える見方もある。アナリストの多くは「強い買い」と評価しており、目標株価は現行水準より約50%高い178ドルが設定されている。

ただし、AI分野での競争激化や貿易摩擦のリスクは依然として残る。特に、中国市場への依存度や競争相手DeepSeekの動向が今後の収益に影響を与える可能性がある。投資家にとっては、短期的な市場の変動を注視しつつ、長期的な成長性を見極めることが重要となる。

Nvidiaの成長を支えるデータセンター事業の躍進とその背景

Nvidiaの業績を支える主要事業のひとつが、データセンター向けGPUの販売である。同社のデータセンター事業は急拡大を続けており、2024年10月までの四半期で売上は前年比100%以上増の308億ドルに達した。この成長の背景には、生成AIの爆発的な需要がある。特に、クラウドコンピューティングを支えるAIサーバー向けのGPUは、ハイパースケーラーと呼ばれる大手クラウドプロバイダーによる大量調達が続いている。

NvidiaのH100チップは、ChatGPTなどの生成AIモデルの訓練に必要不可欠な計算処理を担っており、競争優位性を維持している。市場ではAMDやIntelもAI向けチップの開発を進めているが、現時点ではNvidiaの技術力が一歩先を行っている。加えて、Nvidiaはソフトウェア領域でも優位に立ち、独自のCUDAプラットフォームによる開発環境を提供することで、エコシステムの強固な構築を進めている。

このような環境のなかで、Nvidiaの成長は短期的な株価の変動に左右されにくいと考えられる。しかし、一部の市場関係者は、競争の激化やハードウェアの価格下落が利益率の低下につながる可能性を指摘している。Nvidiaの強みは依然として明確だが、今後の成長を確実なものとするためには、技術革新を継続し、競争相手との差別化を図ることが不可欠となる。

DeepSeekの台頭がNvidiaに与える影響とAI市場の競争環境の変化

AI市場における競争は激化しており、特に中国のDeepSeekの急成長が注目されている。同社はわずか600万ドルの予算で高性能な大規模言語モデルを開発したと発表しており、コストパフォーマンスの高さが話題となっている。Nvidiaは長年にわたりAI関連チップ市場を独占してきたが、新興企業の台頭により市場環境が変化しつつある。

DeepSeekの開発したモデルは、従来のAIモデルよりも効率的な処理が可能であり、AIトレーニングのコストを大幅に削減できるとされる。もしこの技術が広く採用されれば、NvidiaのGPUに対する需要が一部減少する可能性もある。ただし、現在のところNvidiaのAIチップは依然として業界標準となっており、すぐにその地位が脅かされる状況ではない。

また、中国市場における規制や貿易摩擦の影響も考慮すべき要素である。米国政府が中国への先端半導体の輸出を制限する政策を進める中、Nvidiaの中国向け売上が今後どのように推移するかは不透明な部分もある。中国市場での販売が制限される場合、Nvidiaは他の市場での成長を加速させる必要がある。こうした状況を踏まえると、DeepSeekの台頭は短期的には影響が限定的であるものの、長期的な市場構造の変化を示唆する可能性がある。

Nvidia株の評価と今後の投資戦略の考察

現在、Nvidiaの株価は最高値から約20%下落しているものの、長期的な成長余地を考慮すると依然として魅力的な銘柄と見なされている。現在の株価は予想利益の26.7倍で取引されており、業績の拡大が続けば割安と考えられる。アナリスト43人のうち37人が「強い買い」と評価しており、目標株価の平均は178ドルと現在の取引価格より約50%高い水準に設定されている。

投資判断のポイントとして、まずデータセンター事業の成長が今後も続くかどうかが重要となる。生成AIの需要は引き続き高水準であり、NvidiaのGPUに対する需要も堅調であることが予想される。一方で、新たな競争相手の台頭や規制の影響を慎重に見極める必要がある。特に、中国市場への依存度が高い点はリスク要因であり、政治的要因による変動も考慮すべきである。

加えて、半導体市場全体のサイクルにも注目が必要だ。過去の例を見ると、半導体業界は周期的な波があり、急成長の後に調整局面が訪れることが多い。今回の株価調整が一時的なものか、それともより大きなトレンドの変化を示唆しているのかを慎重に分析する必要がある。短期的なボラティリティに動じず、長期的な成長を見据えた投資戦略が求められる局面といえる。

Source:Barchart.com