半導体大手のAMD(Advanced Micro Devices)の株価が第1四半期の業績見通しを受けて急落した。市場予想を上回る第4四半期決算を発表したものの、2025年の通年ガイダンスが期待を下回ったことが投資家心理を冷やし、10%以上の下落を招いた。この結果、過去1年間でAMD株は約38%下落し、同業のNvidiaが70%以上の上昇を遂げる中で大きな対照をなしている。

最大の要因はAI市場における競争力の差であり、Nvidiaがこの分野を独占する中、AMDは市場シェアの拡大に苦戦している。しかし、データセンター向けのAI事業は急成長しており、2024年には売上50億ドル超えを達成。さらに、新たなGPUアクセラレータ「MI350シリーズ」の投入が2025年中頃に前倒しされるなど、技術革新のスピードも加速している。

サーバー向けCPU市場では競争が続くが、AMDの製品ラインナップは堅調であり、売上および市場シェアの拡大が見込まれる。ウォール街のアナリストの評価は依然として「強い買い」を維持しており、データセンター市場の成長を背景に今の株価下落が長期投資の好機となる可能性がある。

AI市場での競争がAMD株価に与える影響

AMDの株価低迷の背景には、AI市場における競争の激化がある。特にNvidiaが市場をほぼ独占している状況が、AMDの成長を抑制する要因となっている。AIチップ市場では、NvidiaのH100や次世代のB100が圧倒的なシェアを誇り、多くのデータセンターがNvidia製品を採用している。対照的に、AMDのMI300シリーズは一定の評価を得ているものの、導入事例はまだ限定的だ。

この市場構造は、ハードウェアだけでなく、NvidiaのCUDAエコシステムによる影響も大きい。CUDAは開発者がAIモデルを最適化するための主要なプラットフォームとなっており、AMDのROCmは依然としてその代替としての地位を確立できていない。このため、ハードウェア性能だけでなく、ソフトウェア環境の整備がAMDの課題となっている。

一方で、AMDのAI戦略は今後の成長の鍵を握る可能性がある。MI300シリーズの次世代モデルであるMI350は、当初の計画よりも早く市場投入される見込みであり、推論(Inference)と学習(Training)の両方に対応する強力なアーキテクチャを備えている。加えて、MI400シリーズの開発も進行中で、データセンターのニーズに応える製品ラインナップの拡充が期待される。これにより、Nvidiaとの競争環境が変化する可能性がある。

現在の市場において、AMDのAIチップはまだNvidiaの牙城を崩せていないが、技術革新のスピードが加速すれば、その構図が変わる可能性もある。市場は依然としてNvidiaを優位と見ているが、AMDの製品ラインの進化が評価されれば、投資家の見方も変わることになるだろう。

データセンター市場の成長とAMDの戦略

データセンター市場は、AIの進化とともに拡大を続けている。AMDはこの分野での成長を重要な戦略の一つとしており、すでに2024年にはデータセンター向けAI売上が50億ドルを超える規模に達している。今後数年間でこの市場が数百億ドル規模に拡大するとの見通しもあり、AMDは積極的にシェアを拡大しようとしている。

特に、データセンター向けGPUアクセラレータであるMI300シリーズは、AIワークロードの需要増に対応する形で供給が進められている。さらに、次世代モデルであるMI350シリーズが2025年中頃に前倒しで投入される予定であり、AI処理能力の向上に寄与する見込みだ。これにより、AMDはNvidiaに対抗する重要な武器を手にすることになる。

また、データセンター向けのCPU市場においても、AMDは一定のシェアを確保している。EPYCシリーズは継続的な進化を遂げており、特に電力効率やマルチスレッド性能に強みを持つ。データセンター事業者にとっては、コスト効率の高い選択肢となり得るため、サーバー向けCPU市場での競争力は維持されている。

AMDは、データセンター市場の拡大に伴い、ハードウェアだけでなくソフトウェアとの統合も進める方針を示している。特にオープンソースプラットフォームの活用や、エコシステムの拡充が課題となる。これが成功すれば、Nvidiaが独占する市場に対してAMDが本格的な競争相手として台頭する可能性もある。

AMDのデータセンター戦略が成功すれば、今後の業績に大きなプラスとなることは明白である。しかし、競争環境の厳しさを考えると、短期間でのシェア拡大には課題も多く、市場の評価は慎重なものとなっている。今後の成長が実現すれば、株価の回復につながる可能性がある。

AMD株価下落は長期投資の好機となるか

AMDの株価は、2025年第1四半期の業績見通しが市場の期待を下回ったことで急落した。だが、この下落が一時的なものであり、長期投資の好機となる可能性も指摘されている。AI市場の成長とともに、AMDがデータセンター向け製品を拡充することで、将来的な収益の増加が期待されるためだ。

特に、AMDの経営陣は2025年に2桁成長を見込んでおり、売上および1株当たり利益の増加を予測している。データセンター向けAI事業の成長が加速すれば、今後の決算で市場の評価が変わる可能性がある。また、CPU市場においても、サーバー向け製品の需要が堅調であり、AMDは平均販売価格(ASP)の上昇によって利益率の改善を狙っている。

ウォール街のアナリストの多くは、AMDの成長ポテンシャルを評価しており、投資判断を「強い買い」に維持している。短期的な株価の変動があるものの、データセンター市場の拡大とAI需要の高まりを背景に、中長期的にはAMDが恩恵を受けるとの見方が強い。

もちろん、市場環境の変化や競争の激化はリスク要因となる。特に、Nvidiaのシェアが今後も拡大すれば、AMDの成長シナリオが後退する可能性も否定できない。しかし、AMDの技術開発が順調に進めば、AIチップ市場での競争力が高まり、長期投資に適した銘柄となる可能性は十分にある。

Source:Barchart.com