人工知能(AI)の進化は、データセンター市場にかつてない成長機会をもたらしている。世界のハイパースケーラー企業や大手企業がAI関連インフラへ巨額の投資を行う中、**Digital Realty Trust(DLR)Equinix(EQIX)**は、データセンターREIT(不動産投資信託)としてその中核を担う。高速処理や冷却技術に特化した施設は、AI技術の発展とともに不可欠な存在となっている。

しかし、中国のAI企業DeepSeekが低コストかつ高度なAIモデルを発表したことを受け、市場は混乱。AI関連の支出減少が懸念され、DLRとEQIXの株価は急落した。だが、みずほ証券のアナリストは、この急落は過剰反応であり、両社は安定した契約基盤と強い価格決定力を有すると指摘する。市場の短期的な動揺を超え、長期的視点での成長を見極めることが求められる。

堅実な契約基盤と強力な価格決定力が支える成長戦略

DLRとEQIXは、データセンターの長期リース契約により、安定した収益基盤を構築している。特に、DLRはリース契約更新時の賃料上昇率がキャッシュベースで15.2%に達し、強い価格決定力を維持している。一方、EQIXは世界70都市以上に展開し、多様な企業が利用する相互接続サービスを強みに成長を続けている。

また、2024年第4四半期決算の発表を控える中、DLRの売上高予想は55.5億ドルから56億ドル、調整後EBITDAは29.25億ドルから29.75億ドルに達する見込みである。市場の混乱が続く中でも、AI関連の需要を取り込む強固な事業基盤を持つことが、両社の評価を下支えしている。

さらに、Equinixは、年間配当17.04ドル、配当利回り1.86%と、9年連続で増配を実施し、安定した株主還元を行っている。DLRも年間配当4.88ドル、配当利回り3.02%を誇り、成長と収益のバランスを重視する姿勢が伺える。これらの要素が、短期的な市場の動揺を超えた長期的な投資妙味を提供している。

市場の過剰反応か、AI需要減速への警戒か:株価の動向を分析

DeepSeekが発表した低コストのオープンソースAIモデルは、AI開発のコスト構造を変える可能性がある。このニュースを受け、DLRの株価は9%下落し、EQIXも短期間で値を下げた。投資家は、ハイパースケーラー企業がAI関連支出を削減するのではないかとの懸念を強めたが、市場の反応は過剰であると指摘する声も多い。

みずほ証券のヴィクラム・マルホトラ氏は、DLRとEQIXがすでに事前契約を多数確保していることから、AI需要の変動による短期的な影響は限定的であると述べた。特に、DLRは過去52週間で13%の株価上昇を記録し、EQIXも9.3%の上昇を達成している。これは、AIインフラの必要性が今後も継続するという市場の期待を反映している。

また、ウォール街の評価も強気の姿勢を維持している。DLRは「Moderate Buy(中程度の買い)」の評価を受け、平均目標株価は190.29ドル(現在株価比+17.9%)に設定されている。EQIXは「Strong Buy(強い買い)」の評価を受け、目標株価は1,034.72ドル(同+13.1%)とされており、機関投資家の信頼が厚いことがわかる。

長期投資の視点から見るAIインフラ銘柄の可能性

短期的な市場の混乱にもかかわらず、AI技術の進化が止まることはなく、それを支えるデータセンターの需要も堅調に推移すると考えられる。特に、クラウドプロバイダーや金融機関、ハイパースケーラー企業にとって、DLRとEQIXが提供するインフラは不可欠な存在であり、代替手段が限られている。

さらに、AI処理の高度化に伴い、データセンターの冷却技術や電力供給の最適化が求められている。DLRとEQIXは、環境負荷を低減するための投資も積極的に行っており、持続可能な成長を実現する戦略を打ち出している。特に、DLRはカーボンニュートラルの取り組みを加速させ、EQIXは再生可能エネルギーの活用拡大を推進している。

市場の短期的な波乱に左右されるのではなく、安定した配当と成長を兼ね備えたAIインフラ銘柄に注目することが、長期的なポートフォリオ戦略の鍵となる。

Source: Barchart.com