米半導体大手Qualcommが2025年度第1四半期の決算を発表し、市場予想を上回る売上高117億ドル、GAAPベースの1株当たり利益(EPS)2.83ドルを記録した。売上は前年同期比17%増加し、スマートフォンや自動車向けチップを含むQCT部門の成長が原動力となった。特に、自動車向けチップの売上は61%増と急伸し、6四半期連続で過去最高を更新した。
Qualcommの技術革新と市場での強固な地位が、好調な業績を後押しした。Non-GAAP EPSは3.41ドルと過去最高を記録し、純利益も前年比15%増の31.8億ドルに達した。これに伴い、同社は株主に対し27億ドルを還元し、株式市場でも注目を集めた。
ただし、主要顧客への依存や米中関係の緊張といったリスクも依然として存在する。今後の成長は、スマートフォン市場の動向や自動車向け半導体のさらなる拡大にかかっている。Qualcommの戦略的多角化と技術革新が、業界の競争環境の中でどのように機能するのかが問われる局面にある。
QCT部門の飛躍と半導体市場の拡大

Qualcommの第1四半期決算では、同社の主力であるQualcomm CDMA Technologies(QCT)部門の売上が100億ドルを超え、四半期ベースでの過去最高を記録した。特にスマートフォンおよび自動車向けチップの成長が顕著であり、5G対応端末の普及と自動車業界の半導体需要増加が追い風となった。スマートフォン向けの先端プロセッサは主要メーカーへの供給を強化し、自動車向け半導体は前年比で61%の成長を見せた。
この成長の背景には、Qualcommの5G技術とシステムオンチップ(SoC)の強みがある。自動車業界では、電動化・自動運転技術の進展により、車載半導体の需要が拡大しており、QualcommのSnapdragon Digital Chassisが多くのメーカーに採用されている。さらに、IoT分野でも同社の技術が広がりを見せており、多角化戦略が奏功している。
一方で、QCT部門の成長は、スマートフォン市場の変動や地政学的リスクに左右される可能性もある。特に中国市場の動向は慎重に注視する必要があり、今後の成長が持続的なものとなるかは不透明である。Qualcommの競争力は依然として高いが、グローバル市場の変化に対応する柔軟性が問われる局面にある。
株主還元と財務の安定性が示す経営の強さ
Qualcommは今期、27億ドルを株主に還元し、そのうち9.42億ドルを配当、18億ドルを自社株買いに充てた。この積極的な株主還元策は、同社の財務基盤の強さを示すものであり、安定したキャッシュフローを確保していることの証左である。株式市場においても、安定的な配当と自己資本の充実は投資家の信頼を得る要素となっている。
さらに、GAAPベースの純利益は31.8億ドルで前年比15%増、税引前利益(EBT)は36.35億ドルと23%の成長を記録している。これにより、Non-GAAPベースのEPSは過去最高の3.41ドルに達し、市場予想を上回った。財務指標の堅調な推移は、Qualcommが高収益体質を維持していることを示している。
しかし、業界全体で設備投資の増加や原材料コストの変動が見られる中、今後の利益率の維持には慎重な財務運営が求められる。特に、地政学的リスクや規制強化が企業活動に影響を及ぼす可能性もあり、今後の決算動向には引き続き注目が集まる。Qualcommの持続的な株主還元策がどこまで維持されるのかは、同社の戦略的な舵取りにかかっている。
技術革新と市場環境がもたらす今後の展望
Qualcommは5G通信技術の分野で先行する立場にあり、スマートフォン市場だけでなく、自動車、IoT、データセンターといった領域への展開を進めている。特に、同社のSnapdragonシリーズは、モバイル端末のみならず、車載インフォテインメントシステムやエッジコンピューティングにも応用されるなど、用途が広がっている。
市場環境を見渡すと、AIの進化が半導体業界に与える影響は大きい。特に、エッジAIの活用が進む中で、Qualcommのチップはその性能と消費電力効率の高さから多くの企業に採用される可能性がある。また、データセンター向けの半導体市場では、競争が激化する一方で、低消費電力かつ高性能なソリューションが求められており、Qualcommがどのように市場シェアを拡大するかが注目される。
ただし、競争環境は厳しさを増している。NVIDIAやAMDといったライバル企業がAI向け半導体市場を積極的に開拓しており、Qualcommの優位性がどこまで維持されるかは未知数である。特に、スマートフォン市場の成長鈍化が懸念される中で、自動車やIoTといった新たな成長分野でのポジション確立が不可欠となる。Qualcommの次なる戦略が、業界全体の潮流を左右する可能性がある。
Source:GuruFocus