ウォルト・ディズニー(DIS)が2025年第1四半期の決算を発表し、劇場事業およびストリーミング事業の成長が収益の押し上げに寄与したことが明らかになった。映画部門では『モアナ2』が興行的成功を収め、コンテンツ販売・ライセンス収益は前年比34%増の22億ドルに達し、同部門の営業利益は前年の赤字から黒字へと転換した。
また、Disney+とHuluの価格改定により、ダイレクト・トゥ・コンシューマー(DTC)事業の収益性も向上し、営業利益は前年比4億3100万ドル増加した。Disney+の加入者数は約70万人減少したものの、市場予測を上回る結果となった。一方で、通期の1株当たり利益(EPS)成長予測を「高い1桁台」に据え置いたことで、株価は横ばいのままとなった。
テーマパーク事業も安定した成長を維持し、売上高は3%増の94億ドルを記録した。さらに、ディズニーは今秋、Disney+上でESPNの新たなストリーミングサービスを開始する予定であり、ストリーミング戦略の強化を進める方針を示した。
映画部門の業績回復 『モアナ2』が牽引するディズニーの新たな興行戦略

ディズニーの映画部門は、『モアナ2』の成功により、前年同期の低迷から大きく回復を遂げた。コンテンツ販売・ライセンス部門の売上高は22億ドルに達し、前年の赤字2億2400万ドルから3億1200万ドルの黒字へと転じた。これは『インサイド・ヘッド2』や『デッドプール&ウルヴァリン』といった話題作の波に乗った結果であり、ディズニーの映画興行戦略が功を奏したといえる。
また、ディズニーは近年、リブートや続編の制作を強化しており、『モアナ2』の成功はその方向性が正しかったことを示している。実写版『リトル・マーメイド』などの過去作の成績は期待を下回ったが、ファミリー向けのアニメーション続編は依然として強い市場競争力を持つことが証明された。こうした傾向は、他のハリウッドスタジオにも影響を与え、既存IPの活用を加速させる可能性がある。
一方で、劇場市場全体は依然としてコロナ禍以前の水準には回復しておらず、特に中国市場の興行収入は不安定な状況が続いている。ディズニーは、世界的な興行収入の回復と並行しながら、Disney+などの配信戦略とも連携した新たなビジネスモデルを模索する必要がある。『モアナ2』の成功は、映画部門の回復を後押しするが、それだけで長期的な安定を保証するものではない。
ストリーミング事業の収益改善 Disney+とHuluの価格改定がもたらした効果
ディズニーのダイレクト・トゥ・コンシューマー(DTC)事業は、長らく赤字が続いていたが、価格改定の効果が顕在化し、業績の改善が進んでいる。Disney+の平均収益単価(ARPU)は5%上昇し、Hulu(ライブTV+SVOD)のARPUも4%増加した。これにより、DTC部門の営業利益は前年比4億3100万ドル増加し、2億9300万ドルに達した。
この成長の背景には、消費者のコンテンツ需要の変化と価格受容度の向上があると考えられる。競合他社であるNetflixも段階的な値上げを実施しつつ契約者数を維持しており、ディズニーも同様の戦略を採用したことで収益改善を達成した。ただし、価格引き上げによる短期的な利益増加が、長期的な契約者数の減少につながるリスクも否定できない。
実際、Disney+の加入者数は前四半期から約70万人減少しており、第2四半期もさらなる減少が見込まれている。この傾向が続けば、ストリーミング事業の収益モデル自体を見直す必要が生じる可能性がある。ディズニーは現在、Disney+とESPNの統合を進めるなど、付加価値の高いサービス提供を模索しており、これが契約者維持の鍵となるだろう。
株価が伸び悩む理由 市場の期待とEPS成長予測の据え置き
ディズニーの業績は力強い回復を示しているものの、株価は横ばいにとどまっている。これは、通期のEPS成長率予測が「高い1桁台」に据え置かれたことが一因と考えられる。投資家の間では、業績改善を踏まえてより強気な成長見通しが示されることが期待されていたが、慎重な見通しが市場の期待を下回った形となった。
また、ストリーミング事業の収益改善や映画部門の好調が明確になったものの、Disney+の加入者減少やテーマパーク事業の成長鈍化といった課題も残る。特に、テーマパーク事業はハリケーンの影響を受け、1億2000万ドルの損失を計上した。こうした不確実要因が、投資家の慎重姿勢につながっている可能性がある。
ディズニーは、ESPNのストリーミング統合や新作映画の投入を通じて成長の継続を図っているが、競争が激化するエンターテインメント業界においては、柔軟かつ積極的な戦略転換が求められる。今後の業績発表では、株主に対してより明確な成長戦略を提示することが、市場の評価を左右する重要なポイントとなるだろう。
Source:GuruFocus