米大手金融機関Citiは、Nvidiaの目標株価を従来の175ドルから163ドルへと引き下げた。2月26日に予定される決算発表を前に、AI市場の成長鈍化やインフラ投資の弱含みが懸念される中、株価は変動の兆しを見せている。Citiは「買い」評価を維持しつつも、短期的な不透明感を考慮し、今後の業績動向と市場の反応を慎重に見極める姿勢を示した。

AI分野のリーディングカンパニーであるNvidiaは、次世代GPU「Blackwell」の本格展開を控えており、投資家の関心は同社の最新技術動向に集まっている。Citiは、1月期および4月期の売上高が市場予想通りの推移となると予測する一方、中国市場リスクの影響を考慮し、2025年および2026年の1株当たり利益(EPS)見通しを引き下げた。Nvidia株のバリュエーションは依然として競合他社と比較して割安であり、長期的な成長見込みは堅調とされるが、短期的な調整局面が続く可能性がある。

AI市場の成長減速とインフラ投資の鈍化が株価を圧迫

Nvidiaの目標株価引き下げの背景には、AI市場の成長ペースの変化とインフラ投資の鈍化がある。Citiは、短期的な市場の制約が株価の上昇を抑えていると分析しており、特にAI関連の中期的な普及速度に対する懸念を示している。AI技術の進化に伴い、データセンターやクラウド事業者の投資ペースが一時的に鈍化する可能性があることが、市場の不透明感を生んでいる。

加えて、企業のコスト管理意識の高まりも影響を及ぼしている。AIシステムの導入コストが高額であるため、一部の企業は設備投資を慎重に進める傾向にある。これにより、短期的にはNvidiaのGPU需要に対する過度な楽観視が修正される局面に入っている。Citiは、これらの要素が足元の株価調整につながっていると指摘している。

一方で、長期的にはAI市場の拡大が依然として主要な成長ドライバーであることに変わりはない。特に、Nvidiaが開発する次世代GPUアーキテクチャ「Blackwell」の市場投入時期が今年半ばに予定されており、その普及が進めば、再びAI関連のインフラ投資が加速する可能性がある。市場では、Nvidiaの技術優位性が維持されるかどうかに注目が集まっており、今後の決算発表やカンファレンスでの発表が重要な判断材料となる。

決算発表がもたらす株価への影響と投資家の関心

2月26日に予定されているNvidiaの決算発表は、市場の期待と警戒が交錯する重要なイベントとなる。Citiの予測によれば、1月期の売上高は約380億ドル、4月期の売上高は約425億ドルと見込まれているが、市場のコンセンサスと一致するかどうかが注目される。特に、売上成長の鈍化や粗利益率の変動が投資家心理に大きく影響を与える可能性がある。

加えて、Nvidiaは3月に開催される年次GTCカンファレンスで新たな技術や製品計画を発表する見通しであり、ここでの内容次第で市場の評価が変わる可能性がある。特に、Blackwellアーキテクチャの詳細や、AI分野における戦略がどのように示されるかが焦点となる。これまでの市場の動きを見ると、技術革新の発表が株価を押し上げる材料となることが多く、今回も同様の展開が期待されている。

しかし、短期的な業績に対する警戒感も根強い。Citiは、中国市場のリスクを考慮し、2025年および2026年の1株当たり利益(EPS)予測を7%引き下げた。これは、米中関係の影響や規制強化の可能性が、Nvidiaの事業に及ぼす影響を考慮したものである。こうした外部要因を受け、投資家の間では慎重な姿勢が広がっており、決算発表後の市場の反応には細心の注意が必要となる。

Nvidiaの長期的な成長性とバリュエーションの現状

短期的な調整局面にある一方で、Nvidiaの長期的な成長性に対する市場の見方は依然として前向きである。Citiの分析によれば、Nvidiaの株価収益率(P/E)は20倍台半ばに位置しており、ASIC競合企業と比較すると約25%のディスカウントが生じている。これは、株価が一定の割安水準にあることを示しており、中長期的な成長を見込む投資家にとっては魅力的な局面といえる。

また、AI技術の進化が続く中で、NvidiaのGPUが依然として業界標準である点は大きな強みだ。特に、クラウドプロバイダーや大手テクノロジー企業が引き続きNvidiaの製品を活用していることが、同社の成長を下支えしている。次世代GPUの投入が進めば、データセンター市場でのシェア拡大が期待され、競争環境が激化する中でも優位性を維持できる可能性が高い。

もっとも、市場全体のボラティリティが高まる中で、株価の上昇には一定の時間を要する可能性がある。AI分野の発展は不可避であるものの、競争の激化や規制の影響を受ける可能性も否定できない。今後の決算発表や技術発表が、株価の方向性を左右する重要な要素となることは間違いなく、市場の注視が続くことになりそうだ。

Source: Investing.com