Appleの空間コンピュータ「Vision Pro」は、市場投入から2年目を迎える。同社は今年、Vision Proの機能向上を目指し、AIプラットフォーム「Apple Intelligence」の導入、ゲームサポートの強化、そして「没入型ビデオ」コンテンツの拡充という3つの主要なアップグレードを計画している。

これらの改良により、Vision Proのユーザー体験は大幅に向上する可能性がある。

Apple Intelligenceの導入がVision Proの操作性を大幅に向上させる

Appleは独自のAIプラットフォーム「Apple Intelligence」を今年中にVision Proへ導入する見込みである。これにより、空間コンピューティングにおける操作性が飛躍的に向上することが期待されている。特に、音声アシスタントのSiriが進化することで、ユーザーはより直感的な方法でデバイスを操作できるようになる。

AppleはすでにiOSやmacOS向けにAI機能を開発しており、その技術をVision Proにも適用する方針とみられる。AIの活用により、Vision Proは音声入力によるナビゲーションを強化し、ユーザーが手や視線を使わずにスムーズな操作を行えるようになる可能性がある。

さらに、AIによる文脈理解が向上すれば、ユーザーの意図をより正確に把握し、適切なアクションを提案することも考えられる。例えば、作業中のコンテンツに応じて最適なアプリを提示したり、スケジュールに基づいてタスクを整理したりする機能が加わるかもしれない。

また、Appleが独自の生成AI技術をSiriに統合すれば、Vision Proはよりパーソナライズされた体験を提供できる。たとえば、ユーザーの発話パターンを学習し、より的確な返答を行うことが可能になる。これにより、仕事や創作活動においても生産性が向上するだろう。

一方で、AIがどの程度の計算処理をVision Pro本体で行うのか、それともクラウドを活用するのかは今後の発表を待つ必要がある。

Vision Proのゲーム対応強化が市場競争力を左右する

Vision Proのリリース当初、Appleはゲームに関する大きな発表を行わなかった。しかし、今後はゲーム対応の強化がこのデバイスの競争力を左右する要素となる可能性が高い。現在、Apple Arcadeには一部のスペーシャルゲームが提供されているものの、VR向けの専用コントローラーがサポートされていないため、ゲーム体験は限定的だった。

しかし、PlayStation VR2のコントローラーが対応するとの情報があり、ゲーム分野での拡充が進む兆しが見えている。Vision Proが本格的なゲームプラットフォームとなるには、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアの拡充も不可欠である。

Appleは開発者向けに新たなAPIや開発環境を提供する可能性があり、これによってより多くのタイトルがVision Pro向けに最適化されることが期待される。特に、AAAタイトルの移植が進めば、Vision Proのゲーム市場での存在感は大きく変わるだろう。

さらに、Appleはクラウドゲーミングとの連携を進める可能性もある。すでにiPhoneやiPadではクラウドゲーミングの利用が拡大しており、Vision Proにおいても同様の戦略を採用すれば、高性能なPCやコンソールを必要とせずにリッチなゲーム体験が可能になる。

競合であるMetaのQuestシリーズやPlayStation VR2と比較した場合、Appleがどのようなゲームエコシステムを構築するかが、Vision Proの市場での地位を決定づける要因となるだろう。

没入型ビデオの拡充がエンターテインメント体験を進化させる

AppleはVision Pro向けに「没入型ビデオ(Immersive Video)」の拡充を進めている。これは、180度または360度の高精細映像を活用し、ユーザーを映像の世界に引き込む体験を提供する技術である。しかし、現在の課題はコンテンツの量が不足している点にある。Appleはこの分野の拡充に注力しており、今年は新たな映像作品の投入が加速すると予想される。

没入型ビデオの成長には、制作環境の強化も必要である。Appleはすでに高品質な映像を撮影するための専用カメラ技術を開発しており、今後はコンテンツ制作のためのパートナーシップを拡大する可能性がある。例えば、大手映画スタジオやスポーツリーグと協力し、ライブイベントやドキュメンタリー映像をVision Pro向けに最適化する試みが進められるかもしれない。

また、教育やビジネス分野への応用も視野に入れられている。没入型ビデオを活用すれば、遠隔地の研修やバーチャル会議がよりリアルなものとなり、従来のビデオ会議を超える体験が可能になる。特に、医療、建築、デザインなどの分野では、没入型ビデオによるシミュレーション技術が新たな価値を生み出すだろう。

Appleがどのようにこの分野を成長させるかが、Vision Proのエンターテインメントデバイスとしての地位を確立する鍵となる。

Source:9to5Mac