NVIDIAの最新GPU、GeForce RTX 5090およびRTX 5080が、PassMarkのG3D Markベンチマークにおいてトップの座を占めた。しかし、世代間の性能向上率は、前世代のGeForce 40シリーズと比較して控えめである。具体的には、RTX 5090はRTX 4090に対して約2.85%の性能向上を示し、RTX 5080はRTX 4080に対して約8.01%の向上にとどまった。

一方、RTX 4090はRTX 3090に対して約43.9%、RTX 4080はRTX 3080に対して約37.3%の性能向上を達成していた。この結果は、最新のBlackwellアーキテクチャが、純粋な性能向上よりも、最適化と洗練に重点を置いた世代である可能性を示唆している。

RTX 5090とRTX 5080の技術革新 新たなアーキテクチャがもたらす進化

NVIDIAのBlackwellアーキテクチャを採用したGeForce RTX 5090とRTX 5080は、前世代と比較して新たな技術的進化を遂げている。最大の特徴は、第4世代RTコアと第5世代Tensorコアの搭載であり、レイトレーシングとAI演算の性能向上が期待される。

これに加えて、新たに採用されたDLSS 4.0 Multi Frame Generationが、フレーム生成のアルゴリズムを大幅に向上させ、パフォーマンスと画質の両立を可能にした。また、GDDR7メモリの導入により、メモリ帯域幅が大幅に拡張された。RTX 4090は21GbpsのGDDR6Xを採用していたが、RTX 5090ではGDDR7による更なる高速化が図られている。

これにより、大量のデータ転送を必要とする4Kや8K解像度のゲーム環境において、より安定したパフォーマンスが実現される。プロセス技術にも変化が見られる。RTX 40シリーズがTSMCの4Nプロセスを採用していたのに対し、RTX 50シリーズでは4NPプロセスへと移行した。

これは最適化された製造プロセスであり、消費電力の抑制と効率向上が期待される。従来のハイエンドGPUは性能向上に伴い消費電力も増加する傾向にあったが、Blackwell世代では単純な性能の向上だけでなく、エネルギー効率の改善にも注力している。

しかし、これらの技術革新にも関わらず、PassMarkベンチマークにおけるスコアの伸びは前世代と比べて控えめである。この要因として、NVIDIAが今回の世代では「大幅なアーキテクチャ刷新」よりも「最適化と効率改善」に焦点を当てた可能性が考えられる。

消費電力や発熱の最適化を図りながら、継続的な技術革新を進めることで、次世代のGPU市場において持続的な競争力を維持する狙いがあるのかもしれない。

世代間のパフォーマンス向上の鈍化と市場戦略の変化

RTX 5090とRTX 5080のPassMarkベンチマークスコアを見ると、世代間の性能向上率がRTX 4090やRTX 4080に比べて小幅であることが明らかになった。特に、RTX 3090からRTX 4090の性能向上率が約43.9%だったのに対し、RTX 4090からRTX 5090では2.85%の向上にとどまった。この数値だけを見れば、今回の世代交代による進化が抑制されているように感じられる。

この背景には、NVIDIAの市場戦略の変化があると考えられる。従来、NVIDIAは新世代GPUごとに大幅な性能向上を図ってきたが、技術の成熟に伴い、純粋なパフォーマンスの飛躍よりも「効率性と最適化」に重点を置くようになった。特にAI処理やレイトレーシングの普及が進む中で、単純な演算性能の向上よりも、新たな用途への適応が求められている。

また、半導体業界全体の状況も影響している。製造プロセスの微細化が進む中で、コストと消費電力の管理がより重要になっている。TSMCの4NPプロセスを採用したRTX 50シリーズは、従来よりも消費電力効率が向上しており、単位ワットあたりの性能向上に重点を置いた設計となっている。この流れは、今後のGPU市場においても継続する可能性が高い。

加えて、NVIDIAは市場の細分化を進めており、ハイエンドモデルよりもAI向けやデータセンター向けの製品に重点を移している兆候が見られる。企業向けのHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)市場が拡大する中で、コンシューマ向けGPUの大幅な性能向上よりも、持続的な最適化を図ることが戦略的に有利と判断した可能性もある。

このように、RTX 5090とRTX 5080は技術的な進化を遂げつつも、前世代ほどの劇的なパフォーマンス向上は見られない。これはNVIDIAが次のGPU世代に向けて、より長期的な視点で戦略を練っている証左とも言える。

Source:NotebookCheck