テスラの欧州事業が急速に揺らいでいる。CEOイーロン・マスクがドナルド・トランプ前大統領の主要な同盟者として政府効率化省の指導的役割を担うことで、米国内では株価が急騰したが、その政治的立場が欧州市場では逆風となっている。特にスウェーデンとノルウェーでの新車登録台数は前年同月比で大幅に減少し、ブランドイメージも悪化している。

欧州の消費者はマスクの政治姿勢に懐疑的であり、これは国際市場でのテスラの競争力に深刻な影響を与えている。2024年第4四半期の業績も投資家の期待を下回り、株価は短期的な不安定さを見せているが、長期的には自動運転技術の進展と規制面での優遇が成長の可能性を支える要素となり得る。

欧州市場での販売不振とブランドイメージの変化

テスラは欧州市場での販売において厳しい状況に直面している。スウェーデンでは新車登録台数が前年同月比44%減、ノルウェーでは38%減と、北欧地域全体で大幅な落ち込みを見せた。これは欧州全体の自動車販売が増加傾向にある中での減少であり、テスラの市場シェアが縮小していることを示している。2024年にはモデルYが北欧地域で最も売れた車であったにもかかわらず、その勢いを維持できていない。

この販売不振の背景には、ブランドイメージの低下がある。スウェーデンの市場調査会社Novus Groupの調査によると、テスラに対する消費者の印象は悪化傾向にあり、特にイーロン・マスクの政治的発言や立場が影響を与えている可能性が指摘されている。マスクは米国内でドナルド・トランプ前大統領の支持を強め、政府効率化省の指導的役割を担っているが、この動きが欧州の消費者には必ずしも好意的に受け取られていない。

加えて、スウェーデンではテスラの労働環境を巡る問題も取り沙汰されている。労働組合との対立が表面化し、一部の消費者は倫理的な観点からテスラの購入を避ける傾向を見せている。これらの要因が重なり、テスラの欧州でのブランド価値は揺らぎつつある。

政治的要因が消費者心理と市場に及ぼす影響

イーロン・マスクの政治的関与は、テスラの欧州市場において逆風となっている。特にノルウェーとドイツの首相はマスクの政治的発言やトランプ氏への支持を公然と批判しており、欧州の政府関係者の間で懸念が高まっている。欧州は環境規制の厳格化と持続可能なエネルギー政策の推進に注力しており、マスクの政治的スタンスがこれらの方向性と相容れないと受け取られている。

また、欧州の消費者は政治的・社会的な価値観に敏感であり、企業経営者の政治的立場がブランド選好に影響を与える傾向が強い。特にノルウェーでは、政府の電気自動車優遇策が進んでおり、テスラは長らくその恩恵を受けてきた。しかし、マスクの言動が欧州の消費者からの反発を招き、忠誠心を維持することが難しくなっている。

一方、米国内ではマスクの政治的影響力が市場にポジティブな影響を与え、テスラ株の上昇を支えている。ビジネスフレンドリーな規制環境が形成されることへの期待感が、投資家の強気姿勢を維持させている。ただし、この動きが欧州での販売不振を補えるかは不透明であり、今後の市場動向に注視が必要となる。

テスラ株の評価と今後の見通し

テスラの株価は2024年第4四半期の決算発表後に急落し、2月3日には5.2%の下落を記録した。2023年12月の高値からは約22.6%下落しているものの、過去1年間では102%の上昇を維持しており、依然としてS&P 500の平均成長率を大きく上回るパフォーマンスを見せている。株価は現在、前方予想利益の154.19倍、売上高の12.63倍と高い評価を維持しており、成長期待が依然として織り込まれている。

2024年第4四半期の売上高は257億ドルで前年同期比2%増となったが、アナリスト予想の271億ドルを下回った。また、調整後EPS（1株当たり利益）は0.73ドルと、前年同期比で3%増加したものの、市場予想を4.8%下回る結果となった。特に自動車部門の売上が8%減の198億ドルにとどまり、成長鈍化が懸念される状況にある。一方で、エネルギー部門は113%、サービス部門は31%の成長を記録しており、事業の多角化が進んでいることが確認できる。

ウォール街のアナリストは「ホールド（中立）」評価を維持しており、38人のうち12人が「強い買い」、14人が「ホールド」、10人が「強い売り」を推奨している。目標株価の平均は338.52ドルとされ、最高では550ドルと見積もられているが、短期的には政治リスクや欧州での販売不振が株価の上値を抑える可能性がある。

長期的な視点では、自動運転技術の進展やエネルギー事業の成長がテスラの業績を押し上げる要因となることが期待される。また、米国の規制環境の変化がテスラにとって追い風となる可能性がある。しかし、欧州市場でのブランド価値の低下や政治的リスクを無視することはできず、投資家は慎重な判断を求められる局面にある。

Source： Barchart