半導体大手クアルコムの株価が下落した。第1四半期の決算発表を受け、アナリストはライセンス事業の先行きに懸念を示している。特にアップルはiPhone向けの一部技術を社内開発へ移行するとされ、これがクアルコムの収益減少要因となる可能性が高い。

さらに、中国のファーウェイとの契約満了も影響を及ぼしており、市場は慎重な姿勢を崩していない。一方で、自動車用モデムやノートPC向けチップ事業の拡大が成長の鍵と見られ、シティやバンク・オブ・アメリカはこの多様化戦略を評価している。

短期的にはスマートフォン市場の低迷と主要顧客の動向が重しとなるが、クアルコムはサムスンとの関係強化などでシェアを拡大。長期的な成長の可能性は依然として残されていると専門家は指摘している。

アップルの内製化戦略がクアルコムに与える影響

アップルはiPhone向けの一部チップを自社開発に切り替える方針を進めており、この動きがクアルコムのライセンス収益に大きな影響を及ぼすと見られている。JPMorganのアナリストは、アップルのこの決定がクアルコムの短期的な成長見通しを不透明にしていると指摘した。

アップルはこれまでクアルコムの主要顧客の一つであり、特許技術のライセンス供与に依存していたが、内製化によりライセンス収入が減少する可能性が高い。この状況は、他のスマートフォンメーカーにも波及効果をもたらす可能性がある。

アップルの動向は業界のトレンドを左右することが多く、同様の内製化を検討する企業が増えれば、クアルコムのビジネスモデル全体に見直しが迫られることになるだろう。これにより、クアルコムはスマートフォン市場での依存度を下げ、新たな収益源を模索する必要に迫られている。

ファーウェイとの契約満了と中国市場の不確実性

クアルコムにとって、中国のファーウェイとの契約満了もまた大きな課題となっている。JPMorganの分析では、この契約終了がクアルコムの成長余地を制限していると指摘されている。中国市場は世界最大のスマートフォン市場であり、ファーウェイとのパートナーシップはクアルコムにとって重要な収益源であった。

しかし、米中関係の緊張や技術規制の強化により、クアルコムは中国市場でのビジネス展開に不確実性を抱えている。ファーウェイ以外の中国メーカーとの新たな契約が求められる一方で、規制の壁や競合他社の台頭が障害となる可能性がある。

このため、クアルコムはアジア市場全体での戦略的パートナーシップの再構築を迫られている。中国市場での収益減少を補うためには、新興市場への進出や製品ラインの多様化が不可欠となるだろう。

自動車とPC市場への多角化戦略がもたらす成長の可能性

スマートフォン市場での課題に直面する中、クアルコムは自動車用モデムやノートPC用チップといった新たな分野への進出を進めている。バンク・オブ・アメリカは、クアルコムの技術リーダーシップとポートフォリオの多様化能力を評価し、強気の目標株価を245ドルに設定した。この多角化戦略は、スマートフォン市場の成長鈍化に対する有効な対応策とされている。

特に、自動車業界におけるコネクテッドカー技術の需要増加は、クアルコムにとって新たな成長機会を提供している。また、ノートPC市場でも高性能チップの需要が拡大しており、これらの分野でのシェア拡大が期待される。さらに、サムスンとの関係強化によりGalaxy S25への採用が進んでおり、これはクアルコムのスマートフォン市場でのポジションを補完する要素となっている。

クアルコムの長期的な成長は、この多様化戦略の成否に大きく依存している。技術革新と新市場開拓が成功すれば、短期的な課題を克服し、持続的な成長軌道に乗る可能性が高まるだろう。

Source:Investopedia