マイクロソフト(MSFT)の株価は昨年わずか12%の上昇にとどまり、S&P 500や他の主要テクノロジー企業を下回るパフォーマンスとなった。2025年も明確な回復の兆しは見えず、時価総額3兆ドルを維持する中で投資家の不安は拡大している。特にAI分野への巨額投資が収益化に至らず、クラウド部門の成長鈍化も課題である。
第2四半期決算では売上と利益が予想を上回ったものの、AI関連支出による利益圧迫と市場予想を下回るガイダンスが株価の重荷となった。アナリストの評価は依然として強気が多いが、目標株価の引き下げが相次いでいる。投資家は、マイクロソフトがAI投資からどのような利益を生み出すかに注目している。
AI投資の影響とマイクロソフトの戦略的課題

マイクロソフトは、AI分野への大規模な投資を続けているが、その影響は短期的に利益を圧迫している。同社は800億ドルをAI対応データセンターに投じ、OpenAIとの提携を含めた技術基盤の強化を図っている。しかし、これらの投資が直接的な収益につながるには時間を要する見込みである。
特に、AIモデルの開発には莫大な計算資源とエネルギーが必要であり、データセンターの維持費用も増加している。そのため、短期的なキャッシュフローに対する負担が避けられず、利益率の低下を招く要因となっている。OpenAIへの140億ドルの投資も、収益化に至らなければ負担要素となる。
一方で、マイクロソフトはAIを自社製品群に組み込み、AzureやOffice 365といった主力サービスの付加価値向上を狙っている。クラウドとAIの統合を進めることで、エンタープライズ市場での競争力を維持しつつ、収益基盤の強化を図る必要がある。AI投資が実を結ぶかどうかは、今後の技術革新と市場の受容度に左右されるだろう。
株価の下落要因と市場の評価
マイクロソフトの株価は、昨年の上昇率が12%にとどまり、他のビッグテック企業と比較して低調な推移を見せた。特に2024年に入ってからもマイナス圏で推移しており、投資家心理に影響を与えている。その主な要因として、AI関連投資の短期的な収益化の難しさと、クラウド部門の成長鈍化が挙げられる。
2025年度第2四半期の決算では、売上と利益が市場予想を上回ったものの、ガイダンスが期待に届かなかったことが株価に対する圧力となった。また、AI関連支出の増加が利益率を押し下げており、市場ではこれをネガティブな要因と見なす向きが強い。株価は2024年7月の高値を下回り、ピークから10%以上の下落を記録している。
しかし、アナリストの評価は依然として強気の姿勢を維持しており、目標株価は平均で509.90ドルとされている。最高値予測は600ドルに設定されており、上昇余地は依然として存在する。投資家は短期的な株価調整をリスクと捉えつつ、長期的な成長ポテンシャルを見極める姿勢が求められる。
マイクロソフト株は今後上昇するのか
現時点で、マイクロソフト株が買い時であるかどうかは、投資戦略による判断が分かれる。バリュエーションは過去5年間の平均を下回る水準にあり、短期的には割安感があるものの、AI投資のリターンが明確でない以上、慎重な判断が求められる。
アナリストの予測では、2025年度には売上と利益の成長が加速し、設備投資の減少に伴ってキャッシュフローの改善が期待されている。CFOのエイミー・フッド氏も、投資配分を短期的な成長に結びつきやすい分野へとシフトする方針を示しており、戦略の転換が進んでいる。
重要なのは、マイクロソフトがAI投資をどのように収益化し、どの程度の顧客基盤を獲得できるかである。現時点ではリスクとリターンのバランスが取れつつあるものの、明確な成長軌道に乗るためには、AI技術の普及と商業化のスピードが鍵を握ることになるだろう。
Source:Barchart