サムスンが新たに公開した特許「WO2025023564」により、同社のスマートリングが健康管理機能に留まらず、PCディスプレイや他のデバイスを制御可能な多機能デバイスへ進化する計画が明らかとなった。特許図には複数のコンピュータディスプレイを操作する具体的な機能が示されており、これはアップルのデバイス連携機能「Continuity」に対抗する動きと捉えられる。

昨年発表された初代モデルは健康機能に特化していたが、今回の特許公開は、アップルのスマートリング特許を上回る多機能化の可能性を示唆している。サムスンの新たなスマートリングは、単なる健康管理デバイスの枠を超え、ユーザーのデジタル環境全体におけるインターフェースとしての役割を担うことが期待される。

サムスンの新特許「WO2025023564」に見るスマートリングの技術的進化

サムスンが2025年1月30日に公開した特許「WO2025023564」は、同社のスマートリングが健康管理デバイスから多機能化する道筋を示している。この特許には、リングがPCディスプレイなど複数のデバイスを制御するための具体的な技術が記載されている。

特に「FIG. 7」「FIG. 9」「FIG. 10」では、リングのジェスチャー操作によりコンピュータディスプレイ間でデータを移動させる機能が描かれており、これは既存のマウスやタッチパッドに代わる新しい操作インターフェースとなる可能性がある。

また、特許図「FIG. 5」には、従来の健康センサー機能に加え、近接センサーやモーションセンサーを組み合わせた構造が示されており、ユーザーの動きを直感的に認識する設計が見て取れる。これにより、単なるデバイス制御にとどまらず、ジェスチャー操作を用いたスマートホームの一元管理も視野に入っていることが伺える。

この技術的進化は、サムスンがアップルの「Continuity」機能に対抗するだけでなく、独自のエコシステム拡大を意図していることを示唆している。スマートフォン、PC、家電を一貫して制御できるインターフェースとしてのスマートリングは、デジタルライフスタイルの中核的存在となる可能性が高い。

アップルのスマートリング特許との比較と競争の行方

アップルも数年前からスマートリングの特許を取得しており、特許図面にはテレビやApple TVボックス、さらにはホームランプの操作機能が描かれている。この特許は、同社の「スマートホーム:究極のアップルエコシステムロックイン」という戦略に沿ったものであり、デバイス間のシームレスな連携を強化する目的があると考えられる。

サムスンの新特許は、このアップルのアプローチに対抗する形で発表されたものと見られ、両社の競争はスマートリングを巡って新たな局面を迎えている。ただし、両社のアプローチには明確な違いもある。

アップルは既存のエコシステム内でのデバイス連携に重点を置くのに対し、サムスンはPCディスプレイの制御という新たな用途を提案し、オフィス環境やビジネスシーンでの活用も視野に入れている。これは、単なる家庭内のデバイス連携を超えた広範な応用可能性を示唆しており、企業利用を意識した戦略と捉えることができる。

この競争の行方は、どちらの企業がユーザーにとってより直感的で利便性の高いインターフェースを提供できるかにかかっている。特に、ビジネスシーンでの採用が進めば、スマートリングは単なるガジェットではなく、業務効率化ツールとしての地位を確立する可能性がある。

スマートリングの多機能化がもたらす市場への影響と展望

サムスンとアップルのスマートリング開発競争は、ウェアラブルデバイス市場全体に新たな刺激を与えることが予想される。これまでスマートウォッチが担ってきた健康管理や通知機能に加え、スマートリングはよりコンパクトで直感的なデバイス操作を実現する可能性がある。この進化は、特にデバイス間のシームレスな連携を求めるユーザー層にとって魅力的に映るだろう。

さらに、PCディスプレイやスマートホームデバイスの制御という新たな用途は、個人だけでなく企業にとっても大きな利点を提供する。オフィス環境でのデバイス操作がスマートリング一つで完結すれば、作業効率の向上だけでなく、新しい働き方のスタイルを提案することができる。

また、この多機能化により、スマートリングは単なる健康管理デバイスではなく、日常生活全体を支えるデジタルインターフェースとしての役割を担うことになる。今後の展望として、サムスンとアップルの競争がさらに加熱することで、他のテクノロジー企業もこの市場に参入する可能性が高い。

これにより、スマートリングの機能はさらに多様化し、ウェアラブルデバイス市場の新たな成長エンジンとなることが期待される。

Source:Patently Apple