Nvidiaの最新GPUであるGeForce RTX 5090およびRTX 5080の価格が、発売からわずか1週間でAsusとMSIによって最大18%引き上げられた。MSIのRTX 5090 Ventus 3Xは2,000ドルから2,400ドルに、AsusのAstral RTX 5090は2,799ドルから3,079ドルへと上昇し、いずれも即座に在庫切れとなっている。

この価格高騰の背景には、ブラックウェルアーキテクチャの供給制限、転売業者の影響、さらにトランプ政権時代に導入された25%から100%の関税が関与しているとみられる。特にTSMCに対する高関税は、グラフィックスカードの価格だけでなく、VRAMなどの周辺コンポーネントにも波及している。

価格に関わらず即時完売する状況は、供給不足と需要過熱の現状を反映している。これにより転売市場ではさらに高額での取引が進み、多くの消費者は在庫の安定と価格の正常化を待つしかない状況に直面している。

RTX 50シリーズの価格高騰に影響を与える複合要因

今回のGeForce RTX 5090およびRTX 5080の価格上昇には、複数の要因が複雑に絡み合っている。まず、ブラックウェルアーキテクチャを採用したこれらのGPUは、発売直後から供給制約に直面している。Nvidiaの製造パートナーであるTSMCへの依存度が高く、加えてTSMCに課された25%から100%の関税がコスト増加に直結している。

これにより、GPUだけでなく、VRAMやその他の重要コンポーネントの調達コストも押し上げられている。さらに、米国の小売市場では転売業者の存在が価格高騰を助長している。Neweggなどの主要販売チャネルでは、販売開始後20分以内に在庫が完売する事態が発生し、その後eBayなどのプラットフォームで法外な価格で再販売されるケースが目立つ。

この需給バランスの崩壊は、市場価格の安定化を困難にしている。また、政治的要素も見逃せない。トランプ政権下で導入された対中関税は、依然として影響を及ぼしており、これが製造コストの上昇と直結している。こうした背景の中、AsusやMSIといったメーカーはコスト転嫁を余儀なくされており、結果として消費者価格の急騰に繋がっていると言える。

市場動向と消費者行動への影響

この価格上昇は、単なる短期的な現象ではなく、GPU市場全体に波及する可能性がある。RTX 50シリーズは最新技術を搭載しているものの、前世代のRTX 40シリーズと比較して性能向上が大幅でないことも指摘されている。そのため、多くの消費者は価格が安定するまでアップグレードを控える動きが見られる。この状況は、長期的な需要の減退を招く可能性もある。

一方で、仮想通貨マイニングやAI関連の需要が依然として高く、これがGPU市場の供給不足を加速させている。特にAI分野での需要増加は、一般消費者向け製品への供給をさらに圧迫する要因となっている。この結果、初期購入者以外の多くの消費者は、高額な転売市場に依存せざるを得ない状況に追い込まれている。

このような市場の不透明感は、消費者の購買意欲だけでなく、メーカーの販売戦略にも影響を及ぼしている。AsusやMSIが価格を引き上げる中で、他のメーカーがどのような対応を取るのかが今後の焦点となるだろう。

高関税と転売市場の拡大がもたらす長期的リスク

今回の価格上昇は短期的な需要過多だけでなく、関税政策や転売市場の拡大といった構造的な問題も背景にある。特にTSMCに対する関税強化は、GPU製品全体の価格競争力に長期的な影響を及ぼす可能性がある。これにより、メーカーは製造拠点の多様化やサプライチェーンの再構築を迫られることになるだろう。

また、転売市場の拡大は、正規の流通経路を通じた製品入手を困難にし、消費者の信頼を損なうリスクを孕んでいる。特に、高性能GPUを必要とするプロフェッショナルユーザーやクリエイターにとっては、安定した供給と適正価格での入手が重要である。こうした市場の歪みが長期化すれば、結果としてNvidiaのブランドイメージや市場シェアにも悪影響を与えることが懸念される。

さらに、関税と供給制約が解消されない限り、価格の安定化は見込めない。この状況下で消費者が選択するのは、前世代モデルの維持か、もしくは他社製品への乗り換えである。いずれにせよ、今回の事態はGPU市場の競争環境に新たな波紋を投げかけることになりそうだ。

Source:Tom’s Hardware