Sonyのブロックチェーンプラットフォーム「Soneium」が、新たな音楽NFTの流通を開始した。Web3音楽レーベル「Coop Records」と提携し、プロデューサーNUU$HIの未発表トラックをNFT化。Soneiumのマーケットプレイス「Sonova」で販売され、価格は0.000777 ETH(約2.11ドル)に設定されている。

このコレクションは、Sonyのブロックチェーン技術を活用した新たな試みとして注目されるが、音楽NFT市場は未だ成長の途上にある。NFT市場全体の低迷や収益化の難しさが指摘される中、Soneiumの取り組みが音楽業界にどのような影響を与えるのか、今後の展開が注視されている。

Soneiumの技術基盤とEthereumレイヤー2の利点

Soneiumは、Sonyの子会社であるSony Block Solutions Labsによって開発されたEthereumのレイヤー2ブロックチェーンを基盤としている。Ethereumのメインネットを直接利用するのではなく、レイヤー2技術を採用することで、取引手数料の削減と処理速度の向上を実現している。ブロックチェーン上でのデジタルコンテンツの流通を目的としたこのプラットフォームは、特に音楽NFTなどのマイクロトランザクションに適している。

レイヤー2を活用することで、Soneiumはガス代(手数料)の問題を軽減し、より低コストでの取引を可能にしている。これにより、従来のNFT市場で課題とされていた高額な取引手数料の影響を受けることなく、手頃な価格でNFTを販売できる点が強みとなる。今回のNUU$HIのNFTが0.000777 ETH(約2.11ドル)と低価格に設定されているのも、この技術による恩恵が大きい。

しかし、Ethereumのレイヤー2はまだ発展途上であり、広範なユーザーにとっての認知度や利便性の向上が求められる。Soneiumが一般の音楽ファンやクリエイターにとって使いやすいプラットフォームとなるかは、今後のユーザー体験の改善やインフラの発展にかかっている。

音楽NFTと従来の音楽配信サービスの違い

音楽NFTは、従来のストリーミングサービスやデジタルダウンロードとは異なる形で音楽の価値を提供する。SpotifyやApple Musicのようなストリーミングサービスでは、ユーザーは月額料金を支払うことで楽曲を聴く権利を得るが、音楽NFTはデジタル所有権を確立する新しい手段として機能する。今回のSoneiumの試みも、音楽コンテンツの価値を再定義しようとする動きの一環といえる。

音楽NFTのメリットは、アーティストが直接リスナーに楽曲を提供し、レーベルやプラットフォームの手数料を削減できる点にある。また、NFTの二次流通市場では、転売時にアーティストに収益が還元される仕組みが構築できるため、持続可能な収益モデルの可能性もある。今回のNUU$HIのNFTが低価格に設定されているのは、広く普及させる狙いがあると考えられる。

ただし、音楽NFTはまだ一般ユーザーには馴染みが薄く、従来のストリーミングサービスと比べて市場規模が小さい。また、NFT購入のためには仮想通貨ウォレットの設定やETHの購入が必要となるため、ユーザー側のハードルも高い。今後、音楽NFTが普及するためには、より簡単な購入プロセスや、一般的な音楽配信サービスとの連携が鍵となるだろう。

SonyのWeb3戦略とSoneiumの今後の展望

Sonyは、Web3技術を活用したエンターテインメント事業の拡大を模索しており、Soneiumはその実験的プロジェクトの一つと位置づけられる。今回のNUU$HIのNFT販売は、その一環として実施されているが、Sonyがブロックチェーンを活用した音楽事業に本格的に進出するかどうかはまだ明確になっていない。

Soneiumのメインネットは2025年1月14日に正式ローンチされており、それに先立つテスト期間には1400万以上のユーザーアカウントが作成され、4700万件以上の取引が記録された。この数値からも、一定の関心を集めていることが分かるが、実際にどれほどのユーザーが継続的に利用するかは未知数である。

Sonyはすでに音楽業界で強い影響力を持つ企業であり、Web3技術を活用した新たなビジネスモデルを模索する余地は大きい。今後、Soneiumが音楽NFTだけでなく、映画やゲーム、その他のエンターテインメントコンテンツと連携する可能性も考えられる。ただし、Web3市場全体がまだ発展途上であることを考慮すると、Soneiumがどの程度成功するかは今後の市場環境や技術の進展次第といえる。

Source:Decrypt