現実資産(RWA)のトークン化を目的とした新たなブロックチェーン「Ondo Chain」が発表された。ウォール街の大手金融機関の支援を受けるOndo Financeによるこのレイヤー1チェーンは、オンチェーン上で機関投資家向けの金融市場を加速させることを目的としている。Ethereum Virtual Machine(EVM)互換のこのチェーンには、フランクリン・テンプルトンやGoogle Cloudといった名だたる企業が設計アドバイザーとして関与している。

この発表を受け、トランプ前大統領が支援する「World Liberty Financial」に関連するウォレットが、約47万ドル(約7000万円)相当のONDOトークンを購入したことが確認された。また、ドナルド・トランプ・ジュニアがOndo Financeのイベント「Ondo Summit」のクロージング・スピーカーとして登壇することも発表され、注目が集まっている。

暗号資産市場では、Ethereum基盤のONDOトークンが時価総額43億ドル(約6450億円)を記録し、暗号資産市場全体で33位にランクイン。伝統的な金融機関もRWAのトークン化に強い関心を示しており、BlackRockやフランクリン・テンプルトンのCEOがその可能性を高く評価している。

Ondo Chainの設計と目的 大手金融機関の関与が示す方向性

Ondo Financeが発表した「Ondo Chain」は、現実資産(RWA)のトークン化に特化したレイヤー1ブロックチェーンである。Ethereum Virtual Machine(EVM)互換の設計を採用し、機関投資家向けの金融市場をオンチェーンで展開することを目的としている。このチェーンの設計には、フランクリン・テンプルトン、ウェリントン・マネジメント、ウィズダムツリー、Google Cloud、ABNアムロ、Aonといった名だたる企業が関与しており、従来の金融機関がブロックチェーン技術を本格的に活用し始めたことを示している。

RWAのトークン化は、伝統的な金融資産をデジタル化し、取引の透明性と効率性を向上させる狙いがある。特に不動産や債券、コモディティなどの資産をブロックチェーン上で取引できる仕組みは、新たな流動性を生み出す可能性がある。Ondo Financeは「資産運用会社が透明性を向上させ、顧客の利回り向上に貢献する」としており、従来の中央集権的な金融市場に対する新たなアプローチとして注目されている。

一方で、こうした機関投資家向けのブロックチェーンがどの程度広く利用されるかは未知数である。ブロックチェーンの利便性と規制のバランス、既存の金融市場との統合など、多くの課題が残されている。Ondo Chainがどのようにこれらの問題を克服し、実用化されるかが今後の鍵となるだろう。

トランプ関連プロジェクトのONDOトークン購入 その意図とは

Ondo Chainの発表直後、トランプ前大統領が支援する「World Liberty Financial」プロジェクトに関連するウォレットが、ONDOトークンを約47万ドル(約7000万円)分購入したことが確認された。Arkham Intelligenceのデータによれば、この取引は発表とほぼ同時に行われており、政治的なつながりとブロックチェーン業界への関心が交差する興味深い動きといえる。

World Liberty Financialは、暗号資産を活用した借入・貸付サービスを提供するプロジェクトであり、トランプブランドの影響力を強く受けている。2024年8月にトランプ前大統領の息子であるドナルド・トランプ・ジュニアがこのプロジェクトを発表して以来、トランプ氏自身も積極的にプロモーションを行ってきた。今回のONDOトークン購入が、同プロジェクトの戦略的投資であるのか、それともブロックチェーン市場への単なる関心を示すものなのかは明確ではないが、仮想通貨業界と政治の結びつきが再び強まっていることは確かである。

また、このトークン購入の直後、ドナルド・トランプ・ジュニアが「Ondo Summit」のクロージング・スピーカーとして登壇することが発表された。Ondo Financeの公式声明では「米国が仮想通貨のグローバルセンターとなる可能性がある」としており、政治的な視点を交えた議論が行われることが予想される。RWAのトークン化は、政府の規制や政策とも密接に関わるため、今後の動向が注目されるところだ。

RWAのトークン化は金融市場をどう変えるのか

RWAのトークン化は、伝統的な金融市場に新たな波をもたらしている。BlackRockのCEOラリー・フィンク氏は、「Ethereumが金融市場のトークン化を牽引するだろう」と述べており、またフランクリン・テンプルトンのCEOジェニー・ジョンソン氏は「ブロックチェーン技術が証券のあり方を根本的に変える」と評価している。こうした発言からも分かるように、大手金融機関はこの技術を将来的な市場の基盤として捉えている。

RWAのトークン化による最大のメリットは、透明性の向上と市場の効率化だ。ブロックチェーン技術を活用することで、資産の取引履歴が改ざん不可能な形で記録され、仲介業者を介さずに取引が完結することが可能となる。これにより、従来の金融市場における不正リスクを軽減し、より低コストでの取引が実現できる。また、資産の分割が容易になることで、小口投資が可能となり、個人投資家にとっても新たな投資機会が生まれる。

しかし、課題も多い。RWAのトークン化を推進するためには、各国の規制と整合性を取る必要がある。特に、証券規制の厳しい米国市場では、SEC(米国証券取引委員会)との調整が欠かせない。また、トークン化された資産の評価基準や、スマートコントラクトのセキュリティ確保といった技術的な課題も残る。Ondo Chainのようなプロジェクトがこれらの問題をどう克服し、実用化へと進むのかが今後の焦点となるだろう。

Source:Decrypt