バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットが長年保有するアメリカン・エキスプレス、コカ・コーラ、クラフト・ハインツは、安定した収益と成長性を兼ね備えた銘柄として注目されている。アメリカン・エキスプレスは高所得層への特化と金利変動に強いビジネスモデルにより、今後も堅調な成長が予測される。

コカ・コーラは飲料ラインナップの多様化と堅実な配当実績で安定した収益を維持しており、クラフト・ハインツは再編とコスト管理による利益成長が期待されている。これらの企業はいずれも市場の不確実性の中で信頼できる投資先として、長期的なポートフォリオに堅実な価値を提供している。

アメリカン・エキスプレスの収益成長を支える独自モデルと市場戦略

アメリカン・エキスプレス(AXP)は、他の主要カード会社と異なる独自のビジネスモデルにより安定した成長を実現している。同行は決済処理のみを行うビザやマスターカードとは異なり、自社でカード発行から信用リスクの管理、決済処理までを一貫して担う。

この垂直統合型のモデルにより、アメックスは高金利時には銀行部門の純金利収入を増やし、低金利時にはカード保有者の支出増加を促進することで収益を維持できる。また、アメックスは高所得層の顧客基盤に特化しており、この選別的な戦略が信用リスクの低減とブランド価値の向上に貢献している。

特に、Z世代やミレニアル世代の富裕層への浸透が進んでおり、2024年から2026年にかけての年平均成長率(CAGR)は収益で9%、1株当たり利益(EPS)で12%と予測される。さらに、海外市場への進出も成長ドライバーとして機能し、特に新興市場でのプレゼンス拡大が見込まれる。

現在の予想PERは21倍と適正水準にあり、配当利回りも0.9%と控えめながら安定した配当政策を維持している。これにより、アメックスは短期的な市場変動に左右されにくく、長期的な資産形成において重要な役割を果たす銘柄といえる。

コカ・コーラのブランド多様化と配当戦略が示す安定性の源泉

コカ・コーラ(KO)は、伝統的な炭酸飲料市場の縮小という課題に直面しながらも、多様な製品ラインナップの拡充と堅実な配当戦略により、安定的な成長を遂げている。1988年にバークシャー・ハサウェイが投資を開始して以来、同社の株式は約250億ドルに達し、バークシャーのポートフォリオの8.3%を占める。

コカ・コーラは、炭酸飲料に依存しない収益構造を確立するため、ボトルウォーター、紅茶、コーヒー、果汁飲料、スポーツドリンクなどのカテゴリーを積極的に開発・買収してきた。近年ではアルコール飲料市場にも参入し、製品ポートフォリオの多様化が進んでいる。この結果、同社はインフレや高金利環境、為替の変動といった外部要因にも柔軟に対応できる体制を整えている。

収益とEPSの成長率はそれぞれ3%、8%と緩やかではあるが、62年連続での配当増加という実績が示す通り、配当利回りは3.1%と投資家にとって魅力的な水準にある。現在の予想PERは22倍と過熱感はなく、長期的な安定収入を求める投資家にとっては依然として信頼できる銘柄である。市場の不確実性が増す中でも、コカ・コーラのブランド力と配当戦略は堅固な防波堤となっている。

クラフト・ハインツの再編と成長戦略 立て直しの軌跡と今後の展望

クラフト・ハインツ(KHC)は、2015年のクラフト・フーズとH.J.ハインツの合併以来、厳しい経営環境と内部課題に直面してきた。しかし、近年の事業再編と成長戦略の見直しにより、同社は安定的な収益基盤を構築しつつある。バークシャー・ハサウェイは現在、93億ドル相当のクラフト・ハインツ株を保有しており、これは同社の26.9%の株式に相当する。

合併直後の過度なコスト削減とブランド投資の不足により、2019年には主要ブランドの評価損や配当削減、SECの調査という大きな挫折を経験した。しかし、これを契機にクラフト・ハインツは事業ポートフォリオの見直しを進め、低成長ブランドの売却と高成長ブランドの買収を行った。さらに、クラシックブランドの製品刷新やマーケティング戦略の強化により、ブランド価値の再構築を図った。

これらの施策により、収益成長は横ばいながらもEPSは12%の年平均成長が見込まれている。予想PERは9倍と割安水準にあり、配当利回りも5.4%と高い。インフレに対応した価格改定も奏功し、コスト管理とブランド強化の両立によって安定した収益構造が確立されつつある。今後は、新製品の展開とグローバル市場での成長戦略が鍵となるだろう。

Source:The Motley Fool