AMDは、最新のRyzen AI Maxシリーズを発表し、ノートパソコン向けプロセッサ市場での競争を激化させている。CES 2025で披露されたRyzen AI Max+ 395は、16コア32スレッドのCPUと40コアのRDNA 3.5統合GPUを搭載し、AI性能では最大50 TOPSを達成する。
AMDは、この新モデルがApple M4 Proに対してレンダリングタスクで最大84%の性能向上を示し、IntelのLunar Lake Core Ultra 9 288Vに比べてゲームパフォーマンスで1.4倍の優位性を持つと主張。さらに、AIワークロードではNVIDIA GeForce RTX 4090を2.2倍上回る効率性も示している。
加えて、消費電力は最大87%削減され、薄型ノートパソコンからワークステーションまで幅広い用途に対応する柔軟性も兼ね備える。
AMDが追求する革新的メモリアーキテクチャの実力

Ryzen AI Maxシリーズの中核となるのは、新たに採用された統合メモリアーキテクチャである。AMDはこの設計により、GPU専用メモリとして最大96GBを割り当てることが可能となり、CPU、GPU、AIエンジンが最大128GBのメモリを共有する。この統合メモリプールの導入により、従来必要だったメモリコピーのプロセスを省略し、メモリ帯域幅の効率を飛躍的に向上させた。
これにより、AIワークロードや3Dレンダリング、ゲームパフォーマンスの全領域での応答速度が大幅に強化されている。特に注目すべきは、AIトークン処理能力の向上である。AMDは、自社のRyzen AI Max+ 395がNVIDIAのGeForce RTX 4090に対して2.2倍のAIパフォーマンスを達成したと発表した。
消費電力においても、RyzenのTDPがわずか55Wに抑えられており、RTX 4090の450Wと比較しても極めて効率的な設計であることが示されている。この結果は、単なる高性能化ではなく、エネルギーコストの削減やノートパソコンの冷却負荷軽減にも直結する。
これらの技術革新は、単なるスペック競争を超えたAMDの戦略的な方向性を示している。特に、薄型ノートパソコン市場における高性能化と省エネの両立は、今後のPC業界の標準を塗り替える可能性を秘めている。
AI性能で先行するRyzen AI Maxの戦略的優位性
AMDのRyzen AI Max+ 395は、AIパフォーマンスにおいてAppleのM4 ProやIntelの最新プロセッサを凌駕する結果を示している。特にAIワークロードにおいては、NVIDIA GeForce RTX 4090をも上回る性能を発揮しながら、消費電力を大幅に削減している点が際立つ。この結果、AMDは単なるCPUメーカーから、AI処理に特化した新たな市場リーダーとしての地位を確立しつつある。
AMDのプレゼンテーションによれば、Ryzen AI Max+ 395はレンダリングタスクでApple M4 Proに対して最大84%の優位性を示し、IntelのCore Ultra 200Vに対しても3Dレンダリングで平均2.6倍の性能を発揮している。
ただし、Cinebench 2024のマルチスレッドテストでは、M4 Proの12コアモデルには2%の差で勝利したものの、14コアモデルには3%劣る結果となった。この結果は、AMDのプロセッサがAIやグラフィック処理では圧倒的な強みを持つ一方で、特定のマルチスレッドタスクにおいてはAppleのチップ設計も依然として高い競争力を維持していることを示唆している。
しかし、AMDの強みは性能だけではない。消費電力の効率性と柔軟なTDP設定により、Ryzen AI Maxシリーズは超薄型ノートパソコンから高性能ワークステーションまで多様なデバイスに適応可能である。この柔軟性こそが、AMDがPC市場全体での存在感をさらに強化する鍵となるだろう。
市場投入を控えたRyzen AI Maxシリーズの今後の展望
AMDのRyzen AI Maxシリーズは、2025年上半期から各種ノートパソコンおよびワークステーションに搭載される予定である。HPのZBook Ultra G1やASUSのROG Flow Z13といったモデルは、薄型設計ながらもゲーミング性能とAI機能の両立を実現している。
これらの製品は、モバイルコンピューティングにおける新たな性能基準を確立し、業界全体に波及効果をもたらすことが期待される。特に、コンテンツ制作やAI開発を行うプロフェッショナル層にとって、Ryzen AI Maxシリーズは強力な選択肢となる。
統合メモリアーキテクチャによる効率化と、XDNA 2 NPU AIエンジンの高性能化により、これまでデスクトップでしか実現できなかった処理がモバイル環境でも可能になる。これにより、クリエイターや開発者は場所を選ばず高負荷なタスクを実行できる柔軟性を手にすることになる。
一方で、これらの性能が実際の使用環境でどのように発揮されるかは、今後の実地テスト結果に依存する部分も大きい。合成ベンチマークでは優れた数値を示しているが、リアルワールドのアプリケーションで同様の成果が得られるかは慎重に見守る必要がある。とはいえ、AMDの今回の発表は、ノートパソコン市場における勢力図に大きな影響を与える可能性を強く示唆している。
Source:HardwareZone