米国電気自動車(EV)大手テスラが2025年に崩壊する可能性があるとの警鐘が、ウォール街から鳴らされている。GLJリサーチのCEO、ゴードン・ジョンソン氏は、テスラの販売不振、過剰な評価額、そして政治的影響が複合的に作用し、同社の事業基盤を揺るがすと指摘する。特に欧州や中国、米国内での販売低迷は顕著で、政治環境の変化も逆風となる可能性がある。

一方で、テスラは完全自動運転(FSD)や人工知能(AI)への投資を成長戦略の中核に据えているが、安全性への懸念が投資家心理を冷やす要因となっている。ロボタクシーやOptimusロボットなどの新事業が奏功するか、あるいは過剰な期待が裏目に出るかが、今後の命運を左右する。

テスラの販売低迷と市場動向:欧州、中国、米国の最新データが示す現実

テスラの販売低迷は、特定の地域で顕著に現れている。欧州市場では、2025年1月の販売台数が前年同月比で50%減少し、特にドイツでは新規登録台数が59.5%落ち込んだ。これは、同国にテスラのギガファクトリーが存在するにもかかわらず起きた現象であり、消費者の購買行動の変化を示唆している。中国市場もまた同様で、8%の販売減少が報告されており、競争の激化と地場メーカーの躍進が影響していると考えられる。

一方、米国市場では、最大のEV市場であるカリフォルニア州において、5四半期連続で前年同期比の販売減少が続いている。この動向は、米国内のEV需要の鈍化、さらにはテスラのブランドロイヤルティの低下とも関連している。特に、イーロン・マスク氏の政治的発言が、これまでテスラを支持してきた消費者層に影響を与えているとの指摘もある。

これらのデータは、テスラが一部市場において成長の限界に直面している可能性を示している。ただし、全体の市場環境を考慮すると、EV業界の成長が停滞したわけではない。中国のBYDなどの競合メーカーはシェアを拡大しており、今後のEV市場の構図が変化する可能性もある。テスラがこの状況を打開するためには、価格戦略の見直し、新技術の投入、市場ごとの需要に即した戦略展開が必要となるだろう。

テスラの株価評価は持続可能か:非GAAPベースの利益倍率181倍の現実

テスラの株価は、非GAAPベースの予想1株当たり利益の181倍で取引されており、この評価額が妥当かどうかが議論の対象となっている。GLJリサーチのゴードン・ジョンソン氏は、テスラの現在の評価額が非現実的であり、長期的には崩壊する可能性があると警告している。この倍率が意味するところは、同社が利益の100%を配当として181年間支払い続けなければ、現在の株価水準が維持できないという点にある。

一方、Wedbush証券のダン・アイブズ氏のように、テスラの市場競争力を評価し、依然として成長余地があるとする意見もある。テスラは、完全自動運転(FSD)技術や人工知能(AI)を活用した自動運転タクシー(ロボタクシー)、さらにはヒューマノイドロボットのOptimusなどの新事業を推進しており、これらの分野が成長のカギを握るとされる。

しかしながら、これらの技術がすぐに収益化される保証はなく、安全性への懸念も依然として存在する。自動運転機能に関連した死亡事故の増加や、消費者の信頼性の低下は、短期的な成長を阻害する要因になり得る。したがって、テスラの株価は今後、投資家の期待と実際の業績とのバランスが取れるかどうかが試される局面にある。

EV市場の競争激化とテスラの今後:ロボタクシーとAI戦略の行方

テスラはEV市場での競争が激化する中、新たな成長戦略としてロボタクシーやAI技術を掲げている。特に、自動運転技術の進化は、テスラの今後の事業モデルを大きく左右するとみられる。しかし、完全自動運転(FSD)の導入は、技術面や規制面での課題が多く、実用化には慎重な対応が求められる。

現在、テスラはFSD技術を既存の車両に組み込む形で提供しているが、実際の走行データからは依然として事故リスクが高いとの指摘もある。Finboldの報告によると、自動運転機能に関連する死亡事故は少なくとも52件報告されており、2024年だけで7件の事故が発生したとされる。このような状況では、各国の規制当局が慎重な対応を取る可能性が高く、事業拡大のハードルとなることが考えられる。

さらに、AI技術を活用したロボタクシーやOptimusロボットの商業化は、テスラの成長にとって大きな意味を持つ。しかし、これらの技術が実際に市場で受け入れられ、収益を生み出すまでには時間を要する可能性がある。現在の株価にはこうした事業の成功が織り込まれているとも指摘されており、実際の成果が期待に応えられなければ、テスラの評価額は見直しを迫られることになる。

このように、テスラの将来は、EV市場の競争環境、技術革新の進展、そして投資家の期待とのバランスに大きく左右される。ロボタクシーやAI技術が市場で確固たる地位を築けば、新たな成長フェーズに入る可能性があるが、規制や消費者の受け入れ次第では厳しい局面を迎えることも考えられる。今後のテスラの戦略と市場の反応が、同社の命運を決定づける要因となるだろう。

Source:Finbold