Nvidiaの株価が過去最高値から20%以上下落する中、AI市場における同社の優位性に疑問を投げかける動きが出ている。その中で特に注目されるのが、中国発のAIプロジェクト「DeepSeek」の登場だ。開発者の主張によれば、従来のGPUを大量に必要とするAIトレーニングとは異なり、わずか560万ドルのコストで強力なモデルを構築できるという。この情報が正しければ、Nvidiaのビジネスモデルが揺らぐ可能性がある。
しかし、これには慎重な検証が求められる。米国の輸出規制やデータの透明性の問題、中国から発信される情報の信頼性など、懸念材料は少なくない。さらに、調査機関の分析では、実際のトレーニングコストは5億ドルに上るとの見方もある。こうした状況から、NvidiaがAI市場での地位を急に失うとは考えにくい。
それでも、投資家が新たなAI関連銘柄を模索する動きは活発化している。その筆頭として浮上するのがPalantir Technologiesだ。同社はAIを活用したデータ分析プラットフォームを提供し、急速に市場での影響力を拡大している。直近の決算では売上高が36%増加し、時価総額は2,410億ドルに達した。過去12か月間で株価は500%以上上昇しており、その勢いは止まらない。
果たして、Nvidiaは今後もAI市場を支配し続けるのか、それともPalantirが新たなリーダーとなるのか。投資家にとって重要な局面を迎えていることは間違いない。
DeepSeekの登場が示すAI開発コストの新たな可能性

DeepSeekは、AI開発の新たな潮流を象徴する存在として注目されている。その理由は、AIモデルのトレーニングに要したコストがわずか560万ドルとされる点にある。従来、AIの大規模トレーニングにはNvidia製GPUを大量に使用し、数億ドル規模の費用が必要とされてきた。しかし、DeepSeekは少ないコンピューティングパワーで成果を上げたと主張しており、これはAI業界にとって大きな意味を持つ。
とはいえ、このコスト削減の実態には疑念も残る。調査会社SemiAnalysisによると、実際のトレーニング費用は5億ドルに上る可能性が指摘されており、開発者の主張と大きな乖離がある。このギャップは、使用されたハードウェアや開発環境の透明性が不足していることに起因すると考えられる。特に米国の輸出規制下でどのGPUが使用されたか不明瞭な点は、投資判断において重要な要素となる。
さらに、中国からの技術発表には、情報操作や誇張の可能性もある。地政学的な背景を考慮すると、AI技術の競争が単なる商業的な枠を超え、戦略的な意味合いを帯びていることは否定できない。DeepSeekの実績は一つの指標であり、AI開発コストの新しい基準となる可能性はあるが、現段階では慎重な評価が求められる。
Nvidiaの強固な投資基盤と成長を支える要因
NvidiaはAI革命の中心的存在として長年にわたり成長を続けてきた。同社のGPUは、高度な並列処理能力とエネルギー効率の高さでAIモデルの学習に不可欠な存在となっている。この技術的優位性は、単なる製品力だけでなく、エコシステム全体の支配力に基づいている。ソフトウェアの最適化、開発者コミュニティの拡大、そしてAI研究機関との強固なパートナーシップが、Nvidiaの競争力を下支えしている。
さらに、AI以外の分野でもNvidiaは成長余地を持つ。自動運転車、データセンター、メタバース関連の需要は今後も拡大が予想され、これらの分野での技術開発が収益の多角化を促進している。特にデータセンター向けの製品群は、AIトレーニングだけでなく、クラウドコンピューティングや科学計算など広範な用途で使用されており、安定した成長ドライバーとなっている。
市場の短期的な動揺は避けられないが、Nvidiaの長期的な成長ストーリーは揺るぎない。AI革命の波に乗り続けるだけでなく、新たな技術革新にも積極的に投資している点が、同社の堅牢な基盤を支えている。投資家はこの多面的な成長要素に着目することで、短期的な株価変動に左右されない視点を持つことが重要である。
Palantir Technologiesが示すAI活用の次なるステージ
Palantir Technologiesは、AI分野で異彩を放つ存在として急成長している。同社はGPUなどのハードウェア依存型ビジネスとは異なり、AIを活用したデータ分析プラットフォームの提供を通じて、企業の意思決定や業務効率化を支援している。特に、政府機関や大企業向けのソリューションに強みを持ち、機密性の高いデータ管理と高度な分析能力で競争優位を確立している。
注目すべきは、Palantirの事業モデルが高い収益性と拡張性を両立している点である。2024年第4四半期には売上高が前年同期比36%増、顧客数も43%増加と、圧倒的な成長を遂げた。加えて、5億1,700万ドルの調整後フリーキャッシュフローを記録しており、財務基盤の強化も進んでいる。この成長は、単なる短期的なブームではなく、データ駆動型社会への移行がもたらす構造的な変化を反映している。
さらに、Palantirは「企業向けAIオペレーティングシステム」という野心的なビジョンを掲げており、AIを実務に落とし込むための不可欠な存在となることを目指している。このアプローチは、AI技術の実用化フェーズへの移行を示唆しており、今後数十年にわたる成長ポテンシャルを秘めている。Palantirの躍進は、AIの可能性がハードウェアからソフトウェア、そして最終的には意思決定プロセス全体に広がっていることを示す象徴的な事例である。
Source:The Motley Fool