Appleはスタンドアロン型ARグラスの開発を続けており、従来のiPhone接続型モデルは市場での失敗リスクを理由に中止された。現在開発中のグラスは他デバイスを必要とせず、自然な装着感と高機能を両立させることを目指している。
しかし、バッテリー寿命と発熱管理を両立する超高効率チップの製造が難航しており、TSMCによる技術的進展が量産の鍵を握る。Appleは過去の失敗を踏まえ、製品化には数年をかけ慎重に進める姿勢を崩していない。
Apple Vision Proの市場反応がARグラス開発方針に与えた影響

Apple Vision Proは先進的な技術を備えた製品として注目を集めたが、その販売実績は期待を大きく下回った。2024年に推定50万台が出荷されたものの、大衆市場への浸透には至らなかった。この結果、Appleは次世代製品の開発方針を見直し、より慎重なアプローチを取ることとなった。
特に、Vision Products Groupの新責任者であるJohn Ternus氏は、同様の失敗を繰り返さぬよう、スタンドアロン型ARグラスの開発において時間を惜しまない姿勢を明確にしている。市場の反応から、技術力だけでは製品の成功が保証されないことが示された。
これによりAppleは、デザインやユーザー体験の向上、そして製品の実用性を重視する戦略にシフトした。スマートグラスは見た目の自然さと装着時の快適さが求められるため、ヘッドセット型とは異なる挑戦が必要となる。この方針転換は、単なる技術革新に留まらず、市場ニーズに即した製品開発への重要な一歩といえる。
ハードウェア技術の進展が商業化の鍵を握る
Appleのスタンドアロン型ARグラス実現に向けた最大の課題は、ハードウェアの効率化である。特に、過熱を防ぎつつバッテリー寿命を確保するために、高性能かつ超低消費電力のチップが必要とされている。
A18やA18 Proと同等の性能を持ちながら、消費電力を十分の一に抑える技術が求められるが、現時点で製造パートナーであるTSMCはこれに対応できる製造プロセスを確立していない。この技術的制約が解決されるまで、商業化は実現しないとみられる。
Appleはディスプレイ技術やシリコン技術の開発を並行して進めており、基盤技術の進展が製品完成のカギを握る。ハードウェアの進化がソフトウェアの可能性を最大限に引き出すため、両者のバランスが極めて重要である。技術の進展次第では、今後数年以内に革新的な製品が市場に登場する可能性も否定できない。
ARグラス市場への参入はAppleの次なる成長戦略か
AppleがARグラス市場への参入を模索する背景には、次なる成長分野としての拡大戦略がある。スマートフォン市場が成熟期を迎える中、新たな収益源としてAR技術の活用は重要な位置を占める。スタンドアロン型ARグラスは、単なるガジェットに留まらず、ビジネスや日常生活のあらゆる場面での利用を想定している。
これにより、Appleはハードウェアとソフトウェアのシームレスな統合をさらに推進することができる。しかし、ARグラス市場には競合も多く、製品の差別化が不可欠である。Appleは既存のエコシステムとの連携を強化し、独自のユーザー体験を提供することで競争優位を確立しようとしている。
また、消費者の期待に応えるため、技術面だけでなく価格設定やデザインにも細心の注意を払う必要がある。Appleの戦略が成功すれば、ARグラスは同社の新たな主力製品となりうる。
Source:Wccftech