米AI企業Super Micro Computer(ティッカー:SMCI)の株価は、四半期決算発表を控えた2月11日に15%の急騰を記録し、直近の安値からおよそ45%上昇した。しかし、同社は2024年6月期の年次報告書未提出による上場廃止リスクや、監査法人EYの辞任を招いた過去の会計問題に直面している。

ナスダックは報告書提出期限を2月25日と設定しており、延長措置の取得が遅れれば市場の信頼低下は避けられない。また、Hewlett Packard Enterprise(HPE)など競合へのAI契約シェア流出も懸念材料となっている。市場関係者は、決算発表後の株価調整や「噂で買い、事実で売る」動きに警戒を強めている。

決算発表を前に高騰するSuper Micro株、市場の期待と不安の交錯

Super Micro Computer(SMCI)の株価は、四半期決算発表を前に急騰し、2月11日には15%の上昇を記録した。2月3日の安値から見ると、上昇幅は約45%に達しており、市場では同社の決算内容への期待感が高まっている。しかし、こうした急騰は「噂で買い、事実で売る」という投資行動の典型例としても解釈できる。

投資家の注目点は、2024年6月期の年次報告書提出期限である2月25日までに、Super Microが適切な対応を取れるかどうかにある。会計問題を抱える同社は、監査法人の変更を余儀なくされ、EY(アーンスト・アンド・ヤング)の辞任が経営の透明性に対する疑念を生じさせている。こうした状況下で、決算発表を機に急騰した株価が反動で急落する可能性は否定できない。

加えて、競争環境の激化もリスク要因として挙げられる。AI市場の成長に伴い、Hewlett Packard Enterprise(HPE)や他の競合企業がAI関連の契約を獲得しており、Super Microの市場シェアが奪われつつあるとの指摘もある。このような状況が続く限り、株価の変動は激しく、決算発表後に市場の期待を裏切る展開となれば、大幅な下落に直面する可能性もある。

年次報告書提出遅延が及ぼす影響、上場廃止リスクの現実味

Super Microは、ナスダック取引所から2月25日までに年次報告書(フォーム10-K)を提出するよう求められている。この期限を守れなかった場合、上場廃止のリスクが生じるが、Wedbush証券のアナリストであるマット・ブライソン氏は、提出が間に合わない場合でも180日間の延長措置を得られる可能性があると指摘している。したがって、直ちに上場廃止に至ることはないとの見方がある。

しかし、報告書の提出遅延が市場に与える影響は軽視できない。監査法人EYの辞任は、Super Microの会計処理に関する不透明感を高める要因となっており、投資家の信頼を損なうリスクがある。仮に報告書が提出されたとしても、その内容によっては、これまでの会計上の問題が再浮上し、市場の不安を呼び起こす可能性がある。

加えて、会計問題が解決しない限り、Super MicroはAI市場での競争において不利な立場に立たされる可能性が高い。Hewlett Packard Enterpriseなどの競合企業は、AIインフラにおけるシェアを拡大しており、Super Microが業界での優位性を維持するためには、信頼回復が不可欠となる。ナスダックの規則に基づけば、報告書提出の遅延が長期化した場合、警告措置や最悪の場合の上場廃止も視野に入るため、今後の対応が市場の焦点となる。

AI市場の成長とSuper Microの立ち位置、競争環境の変化がもたらす影響

AI市場の成長が加速する中、Super MicroはNvidiaの最新Blackwellチップを搭載したソリューションの本格生産を開始したと発表している。これは、同社がAIインフラ市場において引き続き競争力を維持しようとする姿勢を示しているが、その一方で、競争相手とのシェア争いは熾烈さを増している。

Hewlett Packard Enterprise(HPE)や他の大手企業は、AI関連契約の獲得において優位なポジションを築いているとの報道がある。Super Microが持つ技術力は高いが、会計問題の影響で経営の安定性に疑問符がついており、顧客が競合企業に流れるリスクが指摘されている。特に、大規模なデータセンター向けのAIインフラは、安定した財務基盤と透明性のある経営が重視される分野であり、これがSuper Microにとっての課題となる。

また、株価の急騰は、投資家の期待が高まっていることを示しているが、仮に決算内容が市場の期待を下回った場合、「噂で買い、事実で売る」という典型的なパターンが発生し、急落する可能性もある。Super MicroがAI市場での競争を優位に進めるためには、技術力だけでなく、経営の透明性や財務の安定性を確保することが重要な要素となる。

Source:Barchart