Appleは、iOSに存在したゼロデイ脆弱性(CVE-2025-24200)を修正する緊急パッチ「iOS 18.3.1」を公開した。この脆弱性は物理的アクセスを必要とし、USB制限モードを無効化することでロックされたiPhoneへの不正アクセスを可能にしていた。イスラエル企業Cellebriteのような法執行機関向けハッキングツールが関与した可能性が指摘されている。
Citizen Labの上級研究員Bill Marczakによって発見されたこの問題は、特定の個人を標的とした高度な攻撃で悪用された可能性がある。Appleはユーザーに対し、速やかなアップデートを推奨しているが、同様の技術が抑圧的な政権に悪用されるリスクも指摘されている。
iOSのゼロデイ脆弱性が示す法執行機関のデジタルアクセス手法の進化
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今回のiOSのゼロデイ脆弱性(CVE-2025-24200)は、従来のハッキング技術を超える高度な手法が法執行機関によって利用されていた可能性を浮き彫りにした。この脆弱性は、ロックされたiPhoneのUSB制限モードを無効化し、物理的アクセスによってデバイス内部のデータに直接アクセスできるようにするものである。
特に注目すべきは、イスラエルの企業Cellebriteが提供するフォレンジックツールの存在であり、これらのツールはFBIを含む世界各国の法執行機関で使用されている。Appleは、今回の問題について「特定の個人を対象とした非常に高度な攻撃」であると認識しているが、具体的な攻撃の詳細は公表されていない。
Citizen Labの上級研究員Bill Marczakがこの脆弱性を発見したことから、同ラボが追跡している商業スパイウェアや監視技術と何らかの関連がある可能性も考えられる。法執行機関が技術的な手法を進化させる一方で、プライバシー保護と法的枠組みの見直しが求められる局面に入っていると言えるだろう。
セキュリティの強化と監視技術の拡散がもたらす倫理的課題
今回の脆弱性修正はAppleにとってセキュリティの向上を示す一方で、監視技術がもたらす倫理的な問題も浮き彫りにしている。法執行機関による正当な捜査活動としての利用が前提とされるこれらのツールは、同時に抑圧的な政権や不正な監視行為に悪用されるリスクも孕んでいる。
実際、アムネスティ・インターナショナルは昨年12月、セルビア警察がCellebriteのツールを用いてジャーナリストのAndroid端末を不正にロック解除し、スパイウェアを仕掛けた証拠を発見したと報告している。Appleは迅速なパッチ提供を行うことでユーザー保護に努めているが、このような脆弱性が繰り返し発見される現状は、デジタル監視技術の規制の必要性を強く示唆している。
市民社会の自由とプライバシーを守るためには、企業と政府の双方が透明性を保ち、技術の使用目的と範囲を明確にすることが求められる。企業の責任と国家権力の行使が、今後どのようにバランスを取るのか注視する必要があるだろう。
Source:PCMag