Nvidia(NASDAQ: NVDA)は過去10年間で株価が22,000%以上も上昇し、数多くの投資家に巨額の富をもたらした。しかし現在、同社の時価総額は3兆ドルに達し、世界第3位の規模に成長したことで、かつてのような爆発的な成長は期待しづらい状況となっている。AIブームのピーク到来が囁かれる中、大規模なAIハードウェア投資が今後も持続可能なのか、懸念が高まっている。
OpenAIのChatGPT登場以降、テクノロジー企業はNvidiaのGPUに巨額投資を行い、AI市場の覇権争いを展開してきた。しかしMeta Platformsのような企業は、巨額の投資に見合う収益化の道筋が見えず、株主の反発を招く可能性もある。にもかかわらず、Nvidiaの業績は依然として堅調で、2024年第3四半期には前年同期比94%増の売上を記録し、高い利益率を維持している。
同社のバリュエーションは依然として魅力的で、予想PERは29倍と割安感があるものの、3兆ドルという規模から更なるマルチバガー成長を見込むのは難しい。Nvidiaが「億万長者製造機」と呼ばれた時代は終わりつつあり、次なる投資の機会は、AI関連分野の未開拓領域に潜んでいるのかもしれない。
AI市場の動向とNvidiaの成長限界
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Nvidiaの成功を支えてきたAI市場は、今後の成長が鈍化する可能性が指摘されている。ChatGPTの登場以降、テクノロジー企業は競争力維持のためにNvidiaのGPUを大量に購入してきた。しかし、主要顧客であるハイパースケーラー企業は、自社開発のチップへの移行を進めており、Nvidiaの独占的地位が揺らぐ兆しが見え始めている。
AlphabetやAmazonは、NvidiaのGPUを活用したクラウドコンピューティングサービスを提供する一方、独自のAI向け半導体の開発を加速させている。GoogleのTPU(Tensor Processing Unit)やAmazonのTrainiumなど、自社最適化されたチップの導入が進めば、Nvidiaの依存度は低下する可能性がある。また、Meta PlatformsのようにAI関連投資の収益性が確立されていない企業では、株主の圧力により資本支出が抑制されるリスクもある。
Nvidiaは現在、次世代のBlackwell GPUアーキテクチャの投入を控え、引き続き市場のリーダーシップを維持する構えだ。しかし、AI関連支出の成長が鈍化する中、過去のような急成長を再現することは困難になりつつある。AI市場が成熟するにつれ、企業はハードウェアの効率化やコスト削減を優先し、Nvidiaの収益構造に影響を与える可能性があるだろう。
高収益体質の維持と競争環境の変化
Nvidiaは、AIブームを追い風に高い利益率を維持している。2024年第3四半期の売上高は前年同期比94%増の351億ドルを記録し、粗利益率は約75%に達している。これは、同社がハードウェアメーカーでありながら、ソフトウェア企業並みの収益性を誇ることを示している。
しかし、競争環境は急速に変化している。中国の新興企業DeepSeekは、NvidiaのH800チップを活用して業界トップクラスのLLMを開発したと主張している。これが事実なら、Nvidiaのハードウェアを利用したAI開発のハードルが下がり、市場の競争がさらに激化することになる。一方で、一部の専門家はDeepSeekが米国の競合企業から技術を不正に模倣した可能性を指摘しており、知的財産権の問題が今後の市場環境に影響を与える可能性がある。
また、NvidiaはAI向けのデータセンター事業に加え、自動運転やゲーム分野にも注力している。特に自動運転向けのプラットフォームは、次世代の成長ドライバーと目されている。しかし、これらの事業が現在のデータセンター向けGPU事業の収益を補完するほどの規模に成長するには時間を要すると考えられる。
Nvidiaの今後の評価と投資判断
Nvidiaの現在の予想PERは29倍と、Nasdaq-100の平均を下回っており、一見すると割安に映る。しかし、時価総額3兆ドルという規模を考えれば、今後数年で株価が数倍に膨らむ可能性は低い。特に、AIブームの持続性が問われる中、投資家はより慎重な視点を持つべきだろう。
過去10年間の成長は、AI市場の急拡大とハードウェア需要の爆発的な増加によるものだった。しかし、現在は市場の成熟が進み、企業の投資判断も変化しつつある。特に、大手テクノロジー企業が自社開発のチップを強化する動きは、Nvidiaの成長を抑制する要因となり得る。これまでのような圧倒的な市場支配力を維持し続けるには、技術革新だけでなく、新たな収益モデルの確立が求められる。
Nvidiaが引き続き成長を続けるかどうかは、AI市場の進展と競争環境の変化に左右されるだろう。これまでのような「億万長者製造機」としての役割は終わりを迎えつつあり、今後はより安定した成長を目指すフェーズに入ると考えられる。
Source: The Motley Fool Australia